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第15話

 数日経って様子見していても、慧の態度には特に問題はないようだった。  だから、むしろ慧とまた関係を結ぶタイミングを失っていたとも言える。 「悠太」  放課後に背後から声をかけられて、ギクリとした。  俺のことを下の名前で呼ぶような酔狂な人間、校内にはいない。いなかった、と言うべきか。  おずおずと振り返ると、“俺達は親友だ”と刷り込んでしまった弊害か、慧が爽やかな笑みで片手を振っていた。 「橘、花さん……」  一方の俺は、他人が見ている前ではいきなり慧を名前で呼ぶことはなかった。  むしろテンパり具合は変わらない。一度は催眠で彼を蹂躙したくせして。 「一緒に帰ろう。あと……うちの家族、今日は留守なんだ。寄って行かないか?」  あの平等な慧が、明らかに俺へ贔屓を……。  以前の自分ならとんでもない発言をされすぎて、奇声でも発しながら逃げそうな台詞。こんなの、本気で友達……しかも毎日つるんでいる親友そのものじゃないか。  俺と慧なんて不釣り合いにもほどがあるからか、他の同級生もヒソヒソ話をしているが、胸が高鳴って耳に入らない。 「もしかして、今日は先約が?」 「う、う、ううん! 橘花さんさえ良ければ、ぜ、是非とも」  やっぱり慧に特別扱いされることは慣れないけれども、時間の流れが和らげてくれると信じて……恋する乙女のようにいちいち慧の動向を見ながら、隣を歩いた。

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