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第17話

「それで、僕の家族だったか? 今の時間なら……父と祖父は普段通り病院勤め、祖母は早くに亡くなってな。母は専業主婦で支えてくれているが、今日はたまの習い事とママ友達とのディナーで遅くなると。だから久しぶりに悠太を誘ったんだ」 「へ、へぇ〜……。なんか華麗なる一族って感じだよね、橘花さん」 「まあ……僕は生まれつきここが実家であり家族で……例え妬まれようがそればっかりは変えられない。だから……こういった家系は嫌味だ、金持ちは悪だと思われないようにしているのかもしれないな」  そっか。八方美人と自ら自虐で言っていたが、慧はそこからも来ているのかもしれない。  今は周囲も精神的に大人になり、理解しつつあるけれど、子供の頃のやっかみほど面倒なものはない。 「悠太のご家族は? 元気か?」 「え? ああうん、フッツーの会社員とパートしてるよ。爺ちゃん婆ちゃんは田舎で年金暮らしだし。俺も映画鑑賞か読書くらいしか面白いことない、ほんとフツー」 「僕はそんな普通が羨ましくなる時もある……いや、忘れてくれ」  ちょっと寂しそうな面影を見せた慧。  俺は慧の家は素晴らしいと思うけど、将来の仕事をほぼ決められ、レールに乗って生活しているというのも、特に思春期の今はキツいだろうな。所詮は無い物ねだりってやつか。  広いリビングは、家族全員が座れるソファーに、いかにも高価そうな絨毯。  天井にはよくあるLEDの照明ではなく、どこかのアンティークショップでわざわざ選んだかのようなシャンデリア。  カーテンもシンプルだけど、材質がそもそも安物とは違うし、色も柄も品がある。  そういった家具類は誰が凝ってるかまでは知らないが、センス良いんだろうな。  家電屋でよく見るけど誰が買うんだよってくらいデカいテレビとかもあって……庶民にはその価値なんてこれっぽっちもわからない絵画や小物が飾ってあって……やっぱ本来ならば俺なんかが上がって良いような家じゃない。  なんていうか、全てが格式高いというか……。  あ。熱帯魚飼ってる。  美しい景色とか海に関するものが好きなのは、こういうところから自然と来てるのかな。  と、キッチンの方から慧の声がする。

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