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第18話
「悠太ー? 飲み物とお菓子出すから先に部屋に上がっておいてくれ。紅茶で良かったよな?」
「お、俺は飲み食いできるものなら何でも……」
慧が来客の準備をしている間、そそくさと二階に上がる。
慧は一人っ子ということくらいはさすがに知っているから……たぶん廊下の奥の部屋。
ドアノブに「勉強中」か否かのプレートがかかっている場所があった。
どう考えても慧の私室だ。
ゴクリと生唾を飲み込んで、彼のプライベートスペースに踏み入る。
家中ウッド調だったが、ベッド、机と本棚、それに姿見や学校用品、と数が少なく片付けられている。
服はクローゼットにしまってあるだろうが、初回で開ける勇気はない。
机にはノートPCや参考書やルーズリーフが綺麗に置かれ、棚にも頭が痛くなりそうなほど医学書が几帳面に並ぶ。
ただ、真っ先にどうしても欲が出たのはベッドだ。
確かスポーツ選手をCMに起用していることで有名なメーカーのマットレスに、爽やかなライトブルーのシーツと掛け布団。見た目や手触りからして、俺でも違いがわかるくらい……これはシルクだな。
それから、睡眠の質を高める為の特注品だろう、低反発枕。どれも触り心地までもが良い高級品。
睡眠のスペースまでもが一級だなんて……正直言って羨ましすぎる。
と共に、ここまで良い生活をさせてやってるんだから、やることはやれ、と家族に圧をかけられて当然のような気も……しなくもない。
くんくん、と鼻を寄せると、慧の匂いがした。至極当然のことだが、毎日ここで寝起きしているんだ……。
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