18 / 50

第18話

「悠太ー? 飲み物とお菓子出すから先に部屋に上がっておいてくれ。紅茶で良かったよな?」 「お、俺は飲み食いできるものなら何でも……」  慧が来客の準備をしている間、そそくさと二階に上がる。  慧は一人っ子ということくらいはさすがに知っているから……たぶん廊下の奥の部屋。  ドアノブに「勉強中」か否かのプレートがかかっている場所があった。  どう考えても慧の私室だ。  ゴクリと生唾を飲み込んで、彼のプライベートスペースに踏み入る。  家中ウッド調だったが、ベッド、机と本棚、それに姿見や学校用品、と数が少なく片付けられている。  服はクローゼットにしまってあるだろうが、初回で開ける勇気はない。  机にはノートPCや参考書やルーズリーフが綺麗に置かれ、棚にも頭が痛くなりそうなほど医学書が几帳面に並ぶ。  ただ、真っ先にどうしても欲が出たのはベッドだ。  確かスポーツ選手をCMに起用していることで有名なメーカーのマットレスに、爽やかなライトブルーのシーツと掛け布団。見た目や手触りからして、俺でも違いがわかるくらい……これはシルクだな。  それから、睡眠の質を高める為の特注品だろう、低反発枕。どれも触り心地までもが良い高級品。  睡眠のスペースまでもが一級だなんて……正直言って羨ましすぎる。  と共に、ここまで良い生活をさせてやってるんだから、やることはやれ、と家族に圧をかけられて当然のような気も……しなくもない。  くんくん、と鼻を寄せると、慧の匂いがした。至極当然のことだが、毎日ここで寝起きしているんだ……。

ともだちにシェアしよう!