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第19話
「悠太、入るぞ」
「あっ!? う、うん!」
両手が塞がっているだろうから、ドアを開けてやる。
慧が持つトレーには、セレブ芸能人がお勧めしていたブランド店のチョコレートとミルクティーが。
出てくるものが優雅すぎる。
うちなんて食うおやつと言ったら、年がら年中ジュースとポテチだぞ。小学生じゃあるまい。
「ちょっと持っててもらえるか? テーブル出すから」
そういや、慧に友達っていたのかな。
いや、もちろん今も皆と仲良しではあるが、幼少期からこれまで、こんな風に家に上がれるような親友が。
もしあまり遊んだりもしたことがなかったのなら、良いのかな、こんな……嘘吐きの俺で……。
と、折りたたみテーブルを設置して綺麗に拭いてから、トレーを置くように言われた。
「うっまそ」
「これ、紅茶と合っておいしいんだ。母がよくうちの病院のパーティーやそれこそママ友会で貰ってくるものだから……余り物で申し訳ないが、良かったらどうぞ」
そう謙遜しつつ慧が差し出したのは、さすがの俺でもグルメ番組で紹介されて知っている、万単位の宝石のようなセレブ菓子と人工的ではない自然な甘い香りの紅茶。
これが余り物なら俺が日頃食っているものはいったい……。本当に平民と貴族みたいに地位が違いすぎる。
皿もティーカップもブランドものなのは一目瞭然だし、もしも割ってしまったら俺の小遣いで弁償できるだろうか……指が震えてしまいそうになる。
試しにこの一粒で幾らするんだろうな……っていうトリュフチョコレートと、香りからして贅沢なフルーツティーを交互に嗜んでみるけれど、語彙力がなくなるくらいはうまかった。
「すまない、口に合わなかったか?」
「いやいやいや、逆! こんなにうまいチョコと紅茶でもてなしてもらったの、初めてで……びっくりしすぎて。お、俺なんかの為に、ありがとう橘花さん」
「悠太」
慧が憂い顔を見せた。
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