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第36話※イラマ

 いったん、それを所持しているのが俺だけで良かった。最初にこのアプリを知るメールを送ってきたシャルルって奴も、そうそう誰にでもこんなヤバそうなものをばら撒くような人間ではない……はずだし。  会ったことがないから、そりゃ怪しいし確証は持てないけど、あいつとは長い付き合いなんだ。インターネット世界の住民だって、画面の向こうには生身の人間がいるってことくらい、頭の隅ではわかっている。  大丈夫、あいつは真面目で面白い奴だ。誰かがくだらないと匙を投げる俺の話でも、熱心に聞いてくれるし、信用に値する。 「うっ、ぐ……それやばいっ……我慢できねっ……イラマするから歯立てないで」 「んんっ、ふ……イラマぁ……?」 「こういう……ことっ!」  あんまりにも欲が抑えられずに、思わず慧の後頭部を鷲掴みにして、根元までガッ! と本来侵入するはずもない領域まで挿入してやった。  喉奥をも犯されて、目を剥き、さすがに苦しそうに呼吸をしている慧。  セックスもそうだけど、あの慧にイラマさせてるなんて、どんだけ今の状況は幸せなんだ。  朝起きるたび、ふとした瞬間に、毎日これは幻想なんじゃないかと、俺の妄想なんじゃないかと思う。  でも、実際に慧と連絡をし合っている履歴も残っているし、お互いの家に行ったりもするようになってるし、この歳になって情けなくも夢精……することもあるから、やっぱりこの上ない現実だと理解する。  慧は受け手はただ苦しいだけのはずのイラマも慣れてくると、ストロークの合間合間に蜜のような甘ったるい声で話しかけてくる。 「ンググッ♡ えぐぅっ♡ イラマチオもぉっ、悠太が初めてっ♡ 喉マン処女喪失っ♡ 僕の初めて、ぜーんぶ悠太が奪ってぇ♡ ゲホオォッ♡」 「それいいね。卒業してもいっぱいしようね慧」 「するぅ♡ 毎日するのぉ♡ 一緒に住んでっ、いつでもどこでもハメハメしたい♡」 「ははは……気が早いな」  もし仮に、慧がこのまま現役で医学部に入れたら、実家から通うのはなんだか嫌っぽいから寮生活になるはずなんだけど。  俺はそんな大層な大学には行かずに……っていうか成績的に行ける訳ない。  慧とは逆に、実家から通っていろいろと節約するか、セックスなんてとんでもないほど隣人の生活音も筒抜けな安いところで、一人暮らしするつもりなんだけど。  催眠状態の慧は、そこまでしてでも俺と一緒に居て……まあつまりはセックスしたいみたいだ。  そう言われるのは、もちろん悪い気持ちではない。素直に嬉しい。  けど、慧の勉強や夢の妨げになるのは元も子もない。そんなの俺が嫌だし許せない。

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