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第43話
「催眠だか何だかそんなの知らない! でもっ……親友として接しているうちに、僕はどんどん九重のことばかり考えるようになって……勉強も手に付かなくて……君のせいだ! 全部君のせい……う、うぅっ」
「け、慧こそ正気かよ……俺っ、慧に最悪なことばっかして来たんだぞ。俺を好きになる要素なんてどこにも……そ、そうだ……まだ催眠が効いて……」
しかしスイッチは確実にオフになっている。
例のスマホもアプリも壊れてるどころかバグってすらいない、正常そのもののようだ。
「……僕は長い間……九重のことが気になっていた。一人でも孤独じゃない。誰に何を言われようが、自由に好きなことをして生きる君に憧れて……きっとそれが次第に恋愛感情に繋がったんだ……」
「は……? そんなことで……? 冗談言わないでくれ」
「冗談なんかじゃない! “そんなこと”をできる人間がどれだけ居ると思っているんだ……! 皆他人の顔色を伺って……僕もそう……。嫌われること以外に人に興味を示したのは君が初めてだった。九重悠太……君は僕の初恋……なんだ……」
慧の想いが本心ならば、それじゃあ、俺達ははなっから両想いだったってこと?
でも俺は気付かなくて、いや天下の慧が俺なんかを好いてくれるどころか眼中にもない、ただ皆と同列に優しいだけの人間なんだと思い込んで、結果的に慧を余計に追い込んだ。
「……催眠なんて使わなければ良かった。あれさえなかったら、慧をこんなにも傷付けなかった! 俺はただっ、慧を見て何もせず恋焦がれてるだけで良かったかもしれないのにっ……」
「そんなこと……ない。催眠があったから……僕は悠太をはっきり好きだと意識したんだ」
「違うって! 慧はたぶん……洗脳されてるようなもんなんだよ! 俺のことが好きとかありえない! 催眠状態が長すぎておかしくなってるだけ! 慧は俺なんて好きじゃない! 俺は慧に好かれる資格がない!」
そう滅茶苦茶に涙声で心の叫びを発しながら、催眠アプリのスマホを床に叩き付け、思い切り踏み付けて壊そうとした。
やっぱりこんなもの、あっちゃいけない! 俺みたいなクズ人間に悪用される未来しか見えない!
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