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第4話(湊翔のお願い)

「えっ? お、俺? 俺は別に…」 「おい、蒼! ちゃんと頼めよ! 本気じゃないと思われるだろ? 」 (クソッ! 友樹め、人の気持ちも知らないで! 確かに、雰囲気がアラジンにハマりそうだけど、コイツに頼むのも…でも、あの時の事なんて、もう忘れてるかな? それなら話は早いが…) 「まあ、出てくれるなら助かるが、忙しいなら無理にとは言わない」 「別にいいですよ」 「えっ、本当か? 」 「はい、栗城先輩困ってるんでしょ? 」 「まあ…」 「本当か? 平、やってくれるのか? 蒼、よかったな! 」 「ただ、条件はあります」 「なんだ、なんでも言ってくれ! 叶えられるのはなんでもしてやるぞ」 友樹が無条件にOKを出す。 その言葉に湊翔はニヤっと笑い、蒼に1歩近づく。 「ちょっ、近いぞ…」 蒼は後ろに1歩引きながら、湊翔を避ける。 「栗城先輩。俺、約束守りましたよね? それに先輩を助けてあげる。なら、交換に先輩を堂々と口説いてもいいですよね? 」 湊翔の言葉に周りにいた女子達が悲鳴の様な声を上げた。 腐女子は喜び、湊翔狙いの子は絶望の声を上げている。 友樹は状況が飲み込めず、湊翔に質問した。 「平、口説くって蒼をか? 」 「はい、そうです」 「なんで口説くんだ? 」 「先輩が好きだからです」 「えっ? そうなのか? いつから? お前ら接点あったのか? 」 友樹は訳が分からず、蒼と湊翔を交互に何回も見る。 「高校1年の時からです」 更に女子達が悲鳴を上げた。こんなイケメンが一途に先輩を想っていたなんて腐女子にとっては最高の話だ。 「そんな前から? 蒼、お前知ってたのか? 」 友樹の質問に蒼は不貞腐れた顔で頷いた。 「ああ、一応な。こいつの冗談じゃなきゃ」 「冗談じゃあないですよ? だから、先輩の言う通り、同じ大学受けて、ミスコンも優勝したでしょ? 」 「そ、そうだけど、まさかこの大学に受かるとは思わなかったんだよ。しかも医学部…」 蒼はショックを受けていた。南東大学は色々な学部があるが、医学部が1番受かるのが難しい。蒼のいる教育学部もかなり難しいが、医学部はその上をいっていた。 「お前、なんで医学部なんだよ? 」 八つ当たりの様に言う。 「ああ、親が医者なので。この大学に行くなら医学部に行けと」 「ハァ? そんなんで簡単に受かるのか? 相当大変なんだぞ? 」 蒼の言葉に、友樹がちょんちょんと蒼の服を引っ張る。 「なんだよ、友樹」 「お前知らないのか? 」 「何を? 」 「平は高校入学の時、満点合格。中間、期末、実力テストもオール1番。1年の全国模試でもトップ3に入った凄い奴なんだぞ? 」 友樹の言葉に蒼の口はパクパクと開いた。 次第に怒りが湧いてくる。 (コイツ、最初から俺の条件クリア出来ると分かってたな! クソッ、俺はバカか! ) 「先輩、話を戻していいですか? 」 「ああ、蒼を口説きたいんだっけ? どうぞどうぞ」 あっさりと友樹が許可を出す。 「おい、友樹! なんでお前が返事するんだよ! 」 「だって口説くだけだろ? お前が断り続けりゃいいじゃん。何も付き合ってくれって言ってる訳じゃないし」 「そ、そうだけど…」 蒼が困ってると、湊翔の後ろから声がした。 「栗城先輩、コイツに口説かせてやって下さい」 「そうですよ。湊翔、先輩と同じ大学行くために全ての推薦断って実力で入ったんですよ? 」 湊翔の横に2人の男女が立つ。 ミスター準グランプリの秋山陸、ミスグランプリの山下佳奈だ。 2人とも湊翔と中学からの友達で一緒の大学にやってきた。 「えっ? ミスグランプリの山下さんも平の友達なの? 」 友樹が嬉しそうに聞いてきた。 「はい、中学からの付き合いです」 佳奈のニッコリと笑う笑顔に、友樹は一発でやられてしまう。 「おい、蒼! 早くOK出せよ。平がお前口説きに来てるなら、山下さんも来たりするんだろ? 最高じゃないか! 」 「お前は、自分の事ばかりだな? 俺の事はどうでもいいのか? 」 蒼はため息をついた。こうまでみんなに言われ、断ったら大学中の女子たちに殺されそうだ。 蒼は観念した。口説かれたって、断り続ければいい話だ。 文化祭の劇が終わるまでの辛抱だ。 「ああ、分かったよ! 口説きたいだけ口説け! OKするかは別だからな! 」 蒼の言葉に会場が湧き立つ。 早速賭けをしようとする男子もいる。 湊翔は満足そうな笑顔を見せ、蒼にLINEを聞いてきた。 渋々LINEを交換して、ようやく蒼は解放された。 部室に戻ってぐったりとソファに座り込む。 「あ~疲れた! 友樹、お前のせいだぞ! 」 「そんなの知らないよ。俺だって、高校の時の話聞いてたら、言わなかったぜ。お前が黙ってるからだ! 何があったのか話せ! 」 「人に話す話じゃないだろ? アイツだって言いふらされたくないだろうと思ったし。冗談かとも思ったし…」 「冗談じゃ無かったな」 友樹の言葉にハァと息を吐く。とりあえず、友樹に卒業式の話をした。 「えっ? じゃあ俺の電話がなければ、お前キスされてたのか? 」 「いや、流石にそれはないだろ? 圧をかけただけだと思うぜ」 「ふ~ん。まあ、今回の事は文化祭までの我慢だ。それが終わればしっかり答え出してやりな。それまでに俺は山下さんと何とかして仲良くなるぞ! 」 友樹は、佳奈の笑顔を思い浮かべニヤニヤしている。 「お前には高嶺の花だよ。多分準グランプリの秋山と付き合ってるんじゃないのか? 」 蒼の言葉に友樹はフフンと鼻を鳴らす。 「お前はお子ちゃまだな。あの距離感はただの友達だよ。俺には分かる! 」 「その自信はどこからくるんだよ? 」 呆れ顔で友樹を眺める。 「おい、蒼」 ガチャとドアが開いて、1人の男子が入ってきた。

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