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第5話(早速…)

「あ、裕二」 入ってきた種谷裕二は、ソファに座り蒼を覗き込む。 「聞いたよ、大丈夫か? 」 「もう、そんなに広まってるのか? 」 蒼がため息まじにり嘆く。 「まあ、SNSとかでも呟かれてるしな」 「蒼、そう深く考えるなよ。文化祭の劇終わるまでだ」 「そうだな、何かあれば言えよ。口説くのはともかく、手を出すのはナシなはずだからな」 裕二は蒼の肩に手を回し、ポンポンと肩を叩いた。 「ああ、裕二ありがとう」 「そうだよ、裕二がアラジンやればこんな事にはならなかったぞ? 」 「俺には向いてないよ。裏の方が好きだし。ミスコンで疲れたわ」 蒼がミスの時のミスターが裕二だった。2人とも1年間表に出て活動しただけで、お腹いっぱいになっていた。 「でも、裕二のお陰で俺は乗り切れたよ。1人だと辛すぎた…」 女装してのPRは嫌だったが、裕二が励ましてくれたから何とか出来た。 「俺なんかで良ければ、いつでも話聞くよ」 「さすが裕二! 女の子と仲良くなりたくて、友人を差し出す友樹とは大違いだ! 」 蒼は友樹を睨みながら毒づく。 「おっと、俺教授に呼ばれてたんだ! じゃあまたな! 」 これ以上の文句を避けるべく、友樹は部室を出て行った。 「ホントにアイツはお調子者だな」 裕二もため息をついて首を振る。 「さっ、嘆いても仕方ない。今日はもう帰ろうぜ! 裕二はバイトか? 」 「ああ、バーに行くよ」 「頑張れよ、今度飲みに行くわ」 手を振り、裕二と別れ寮に戻る。 「ハァー疲れた! 」 部屋に入るならり、ベッドに倒れ込む。 今日1日で、色々ありすぎてドッと疲れた。 蒼は天井を見上げながら、高校の卒業式の事を思い出していた。 「アイツ、本当に有言実行したな…俺を好きって、本当なんだな…。でも、なんで俺なんだ? 俺、アイツに好かれる様な事したのかな? 高校の時、話した記憶とかないけどな…」 うーんと悩みながらウトウトしてきた。 うつらうつらしていると、携帯が鳴りビックリする。 「うわっ! 寝てたのか? 誰だ? 」 画面を見ると、平湊翔の文字が出ている。 「早速かよ…」 ため息をつきながら、携帯に出る。 「もしもし? 」 「先輩、寝てたんですか? 」 「寝てないよ、ウトウトしてただけだ。何か用か? 」 「用事がないなら電話したらダメなんですか? 」 そう言われると返事が出来ない。 「ダメって訳じゃないけど…」 「すいません、先輩を困らせるつもりはないんですが、声が聞きたくて」 「声って、さっき話したばかりだぞ? 」 「好きな人の声はいつも聞きたいですよ。それに、もしかしたら携帯着信拒否されてるかもしれないから確認したくて」 (そっか、考えて無かった! やればよかった! でも、許可出しといてそれはやっちゃダメか? ) 一瞬頭をよぎったが、ダメだと思い咳払いをする。 「いや、流石にそんな事しないわ。許可出しといてやったら最低な奴だろ? 」 「さすが先輩、やっぱり大好きです」 ストレートに言われ、ドギマギする。 (なんでコイツは、恥ずかしげもなくポンポン言えるんだ? ) 「なあ、聞きたかったんだけど、なんで俺の事好きなの? 高校の時、お前と接点ないよな? 」 蒼の質問に、湊翔は少し黙った。 (あれ? もしかしてあったのか? 俺が覚えてないとか? ) 「それは、内緒です」 「えっ、なんで? 」 「だって、先輩覚えてないんですもん」 「えっ、やっぱり話した事とかあるのか? どこでだよ! 思い出すから教えてくれ」 「嫌です。自然に思い出してくれるの待ってます」 「そ、そんな…俺、覚えてないとか最低な奴じゃん…」 「大丈夫です、そんな先輩も大好きなんで」 (いやいや、どこに好き要素があるんだよ! 普通は嫌だろ? ) 「ところで、明日のお昼一緒に食べてくれませんか? 」 「えっ、なんで? 」 「先輩を口説きたいからです」 「グッ…お前、それ言ってて恥ずかしくないのか? 」 「恥ずかしいですよ。でも、先輩に振り向いて欲しいので言います」 「分かった分かった! お昼ね、いいよ。でも、友樹や友達の裕二もいるぞ? 」 「大丈夫です。俺も陸と佳奈を連れて行きます」 「なあ、山下さんは秋山の彼女なのか? 」 友樹が言っていた事を思い出し、質問してみる。 「なんでですか? 先輩、もしかして佳奈の事…」 「ばか、違うよ。 友樹が気にしてたから聞いただけだ」 「ああ、そうなんですね。付き合ってないですよ」 「じゃあ、お前の事が好きとか? 」 「違いますよ。佳奈は俺や陸みたいなのはタイプじゃないと思いますよ。今までの彼氏を見てると」 「そうなのか、じゃあ友樹にもチャンスはあるかな? 」 「それは…佳奈次第かと…」 言葉を濁す湊翔に、蒼は察した。 (そうか、きっと今までの彼氏とも違うんだろうな。友樹、ドンマイ! ) 「そうか、分かった。彼氏は今いないの? 」 「今ですか? あー、多分いますね…他の大学の人ですが…」 「じゃあ、友樹ダメじゃん」 「でも、余り上手くいってないみたいなんで…続いてるか分かりませんが…」 「そうなのか? 」 「佳奈、余り自分の恋愛話しないんで分かりませんけど…俺の事は色々聞いてくるんですがね」 「ふーん、分かった。アイツらに昼飯の事言っとくわ。その代わり、講義終わったら部室に来いよ。台本見せたいから」 「はい、分かりました」 「じゃあ」 そう言うと蒼は携帯を切った。

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