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第7話(助教授横山)
「じゃあ先輩、俺達午後の講義があるんで行きますね。放課後部室に寄ります」
ギャラリーが見守る中ご飯を食べた湊翔達が立ち上がる。
「ああ、ちゃんと来いよ」
「もちろんですよ、では」
湊翔に続き、陸と佳奈も頭を下げ後に続く。
「山下さん、またね! 平居なくても来たい時来てね! 」
友樹の言葉に佳奈は営業スマイルで対応する。
「なあ蒼、見たか? 佳奈ちゃんの笑顔! 」
「お前、本人が居ないと佳奈ちゃんなのか? バレたら怒られるぞ? 」
「大丈夫、仲良くなって本人の前でも直ぐに呼べるようになるよ」
友樹のポジティブ発言に呆れる。
今の会話で仲良くなれる要素なんて全くないと思ったが、その自身はどこからくるのか、蒼には分からなかった。
「蒼、放課後付き合おうか? 」
裕二が心配そうな顔をしている。
「大丈夫だよ。台本渡して、説明するだけだし。お前バイトだろ? 」
「そうだが、平が思ったよりグイグイだから心配だ」
裕二の言葉に友樹が肩に手を回す。
「おい裕二、蒼にはえらい優しいじゃないか! 俺の事も心配してくれよ」
「重い、どけ。お前の何を心配するんだよ。楽しそうだろ? 」
「まあ、そうだけど。友達として俺と佳奈ちゃんの恋を応援してくれ」
友樹の発言に、蒼と裕二はヤレヤレとため息をついた。
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「なあ湊翔。種谷先輩って、栗城先輩の事好きなのかな? 」
助教授がまだこないので、陸はさっきの疑問を湊翔に話した。
「なんでそう思うんだ? 」
「だっておかしくないか? ちょっとアーンしただけで、やめろとか」
「そう、それは私も思った。ただの心配と少し違う気がする」
佳奈が後ろを振り向き会話に参加する。
「そんなの確認出来ないから、分からないだろ? 別に種谷先輩が先輩の事好きでもいいよ」
『いいの? 』
2人の声がハモる。絶対嫌だと言うと思っていた。
「人が人を好きになるのは止められないだろ。俺がそれを超えて先輩を振り向かせたらいいだけだ」
「はぁ~イケメンは言う事もカッコイイね! 惚れたぜ、湊翔」
茶化す陸をチラッと横目で見る。
「お前もイケメンだろ? それに種谷先輩に興味があるんだろ? 」
「あれ、分かった? 」
「分かるわよ、滅多に自分から誰かの隣に座るとかしないのに。好きなの? 」
「そうゆうんじゃないよ。ただ、寡黙な割に目力が強いのに興味を持ってね」
「ふーん、目力ね。余り周りをうろついて嫌われないようにしなさいよ。湊翔もやりづらくなるんだから」
「分かってるよ。佳奈もしばらく柴田先輩に我慢しないとな」
陸の言葉に佳奈が頬っぺを膨らませる。
「やめてよね、あんなうるさい人久しぶりよ。笑顔で否定してるのに全然響かないだもん」
「佳奈、悪いな。嫌ならついて来なくていいぞ」
湊翔が申し訳ない顔をする。
「大丈夫よ、生でイケメン同士を拝めるんだから見なきゃ損」
「顔は可愛いのに、その性癖何とかならんかね」
高校の時、散々湊翔との絡みの写真を撮らされた陸はうんざりした表情をする。
「いいの、これは趣味だから。現実世界ではちゃんと彼氏とイチャイチャするわよ」
「最近は上手く言ってるのか? 」
蒼に聞かれた事を思い出し聞く。
佳奈は余り自分の恋愛話はしない。元々深く誰かと付き合っているのも聞かない。今回は珍しく長く続いてるので真剣なのかと思っていた。
「どうだろね、前はよく喧嘩もしたけど、最近は穏やかだよ」
「ふーん、何か嫌な事されたら直ぐ言えよ」
「うん、ありがとう」
「助教授が来たぞ! 」
陸の言葉に教室が静かになる。助教授が入ってきた。
この講義の助教授は30代の女性だ。見た目も綺麗で教え方も上手いので、生徒にも人気がある。
でも、湊翔はこの教授が余り好きではない。
度々湊翔の席に来てはみんなに話す振りをし、さりげなく湊翔の手を触ったりする。
この日も歩きながら講義をし、湊翔の所で止まった。
「さて、この場合はどうゆう風に対処するのがいいと思う? 」
女助教授横山は教室を見渡しながら、湊翔の肩に手を置く。
(またか、流石に偶然じゃないよな? )
指された学生が答えている間、横山は肩に手を置いたままだ。
「そうね、正解よ。さ、今日はここでおしまい」
そう言うと横山は湊翔の方を向いた。
「平君、この後研究室に来てくれる? レポートの事で話があるの」
湊翔は眉を顰める。こないだ提出したレポートに不備はないはず。
なのに呼び出し。湊翔は心の中でため息をついた。
「分かりました」
湊翔の言葉にニッコリと笑い肩を叩くと教壇に戻っていく。
「おい、お前何かミスったのか? 」
「なわけないだろ? この俺が」
「だよな? なら、なんで? 」
「知らないよ。とりあえず行って来るわ。その後演劇部寄って帰るから、先に帰ってろ」
2人に手を振り横山の研究室にむかう。
トントンと二回ノックすると中から「どうぞ」と声がした。
「失礼します、平です」
湊翔は入口近くで止まる。
「平君、そこだと遠いわ。もっとこっちに来て」
「大丈夫です。レポートに不備がありましたか? 」
「ああ、あれは嘘よ。本当は君に私のゼミに入って欲しくて、直接勧誘しようと思ったの」
「ゼミですか? それならもう決まってるので、すいません」
頭を下げ部屋から出ようとする。
「待って」
横山が立ち上がり近づいて来て湊翔の腕をとる。
その腕を自分の腰に回し、自分の腕は湊翔の首に回してきた。
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