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第11話(蒼を庇う湊翔)
そうこうしているうちに、体育館に着いた。
2人は中に入り、蒼達を探す。
「あれ、アイツらいないのかな? 照明見てるから上か? おーい、蒼、裕二! 」
友樹がデカい声を出し、2人を呼ぶ。
「友樹か? 」
2階のドアが開き蒼が顔を覗かせた。
「どうした? なんか部室であったのか? 」
「違うよ。平が舞台見たいからって言うから連れてきた」
「お前、連れてくるフリしてサボる気だな? ったく、ちょっと待ってろ」
そう言うと、蒼と裕二は2階から降りてくる。
湊翔は裕二の表情を見ていた。
相変わらずポーカーフェイスの裕二だが、湊翔には不満そうなのがわかる。
「平、ちょっと舞台に上がれ。説明するから」
蒼に手招きをされ、嬉しくて笑顔で舞台に上がる。
「ほら、下を見ろ。ここに小さなテープがあるだろ? ここから前は危険だから出るなっていう印だ。落ちたら困るからな。それで、こっちのテープは…」
舞台をウロウロしながら、湊翔に細かく説明する。
その様子を舞台の下で裕二と友樹が眺めている。
「友樹、平は本当に舞台見たかったのか? 」
「違うだろ? 蒼に会いたかったんじゃないのか? すげーな、蒼にマジなんだ。高校の時から好きなんだろ? いーいよな、俺にもそんな子いないかな~」
頭の後ろで腕を組み羨ましそうに眺めている。
「でも蒼が嫌なら、しつこいのはダメだろ? 」
「蒼、嫌がってないんじゃないか? 元々面倒見はいいから」
それは裕二も知っている。だから、余計に心配になるのだ。そのまま、恋に発展しないかと。
でも自分に止める権利はない。友達として間には入るが、ライバルを差し引いても湊翔はソツがない。
少しづつだが、蒼と距離を詰めているのがわかる。
自分も公に蒼を口説けたらどんなに楽か…。
裕二が舞台の方を眺めていると、突然足元がグラついた。
「地震だ! 」
「おい蒼! 地震だぞ! 」
2人の言葉と同時に大きな揺れがくる。
「うわっ! 」
「先輩、大丈夫ですか? 」
湊翔は蒼の腕を掴む。
「ああ、結構揺れるな? 」
蒼も湊翔の腕を掴み、揺れに耐える。
湊翔はもう片方の腕を蒼の腰に回し、支える。
その時、蒼の後ろの衝立がグラつき、蒼の方へ倒れるのが見えた。
「先輩! 」
『蒼! 』
「えっ? 」
振り返ると衝立が倒れてきている。咄嗟に目を瞑ると同士に、ドンッと鈍い音がした。
(あれ? 痛くない? )
痛みを覚悟した蒼だったが、なんの痛みもないので恐る恐る目を開けた。
蒼の視界に入ったのは、自分に覆いかぶさっている湊翔だった。
「先輩、大丈夫ですか? 」
「お、俺は大丈夫だけど、お前大丈夫か? 凄い音がしたぞ? 」
「俺は大丈夫ですよ。地震も止まりましたね」
そう言いながら衝立を元に戻した。
「蒼、平、大丈夫か? 」
友樹と裕二が舞台に上がってきた。
「俺は大丈夫だ。でも平が…」
「俺も大丈夫で…痛! ! 何するんですか? 」
肩を蒼に掴まれた。
「ほら、やっぱり痛いじゃないか。無理するな。保健室行って見てもらおう」
「大丈夫ですよ、大した事な…イタタ! なんで掴むんですか? 」
肩を擦りながら文句を言う。自分のせいで怪我したと心配する蒼を気遣って大丈夫と言っているのに、蒼はむしろ嫌そうだ。
「だから無理するな! 友樹、裕二、俺は平を保健室に連れて行くから部室を見てきてくれ。俺もあとから行く」
「ああ、分かった。平、お大事にな」
友樹が裕二を促し、体育館を出ていく。蒼と湊翔も大学の保健室に向かった。
コンコンとノックをして2人は保健室に入る。中には保険医が片付けをしていた。
「先生、いいですか? 棚の物少し落ちたんですか? 」
「ああ、栗城か。さっきの地震で少しな。でも軽い物ばかりでガラスの薬品とかは大丈夫だぞ。どうした、怪我でもしたか? 」
「はい。さっきの地震で衝立が倒れ、コイツが肩を打って…」
「君はミスコンの優勝した平君だね? イケメンが怪我とは女子が叫びそうだな」
笑いながら、湊翔に服を脱ぐよう促す。
湊翔はチラッと蒼を見たが、何も言わず服を脱ぎ出した。
蒼は特に何も考えず見ていたが、湊翔の上半身が露になった瞬間ドキッとした。
今まで気にした事がない男の裸なのに、湊翔に対してはなんだか不思議な感じになっていた。
(なんだ? なんで今ドキッとした? 男の裸なんて見慣れてるだろ? どうした俺? )
蒼は咄嗟に目を逸らし、違う方を眺めたが先生の言葉で振り向いた。
「結構強めに当たったのか? かなり赤くなってるぞ。少し触るからな」
先生に押され、痛そうな顔をする。
やっぱり痛いのかと蒼は心配になった。
「平、大丈夫か? 」
「大丈夫ですよ、少し痛いだけです」
「そうだな、これくらいなら骨は大丈夫だろ。薬塗って湿布を貼ってあげるよ」
そう言って、薬の準備をしているとバタバタと音がし、1人の学生が入ってきた。
「先生! ちょっと怪我した奴がいるんだけど、動けないから来てください! 」
「えっ? 動けないほど酷いのか? 分かった、すぐ行く! おい栗城、この薬を塗って湿布を貼ってくれ。湿布は適当に持って帰っていいぞ! 」
それだけ言うと、その学生と一緒に出て行った。
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