12 / 27
第12話(保健室で2人きり…)
「ちょ、先生!? 」
声をかけたが、もう2人の姿はない。仕方なく湊翔の所に戻り、薬を手に取る。
「先輩、自分でやるからいいですよ」
湊翔が蒼の腕を抑え、薬を取ろうとした。
「背中の方だぜ? 届かないだろ? やってやるから後ろを向け」
「でも、悪いですから」
「いいから、ほら」
蒼の言葉に湊翔は渋々腕を離し、後ろを向いた。 薬を手に取り、湊翔の赤い所に塗っていく。
薬が触れるとピクっと湊翔が動く。
「痛いか? 」
「いえ、ヒヤリとしたので…大丈夫です」
そう言っているが痛いのか顔をしかめている。
(コイツ、しかめっ面までイケメンときている。どこまで完璧なんだよ…)
心の中でブツブツ文句を言いながら、薬を塗り湿布を肩に貼ってやる。
「はい、終わり! どうだ? 」
「ありがとうございます」
湊翔が振り向き、笑顔を見せた。そのギャップにまたドキッとする。
「い、いいよ。元はと言えば俺を庇ったからだし、今度からはいいからな? 主役を怪我させたら女子達に俺が半殺しにされる」
からかうように言ったが実際満更でも無さそうだと身震いする。
(いやホント、マジに怒られそうだな)
「先輩? 」
「なんでもない、ほら早く服着ろ」
蒼の言葉に湊翔は意地悪な表情を浮かべる。
「なんでですか? 先輩は俺の体に興味ない? 」
「はっ? 何言ってんだよ! 興味なんかないよ」
「でもさっき目を逸らしましたよね? 意識してるんじゃないですか? 」
(なんでそんな所見てるんだよ! )
「してねーよ! ジロジロ見るのも変だろ? 」
「じゃあ、意識して下さい」
「えっ? 」
おもむろに蒼の手を掴み、自分の胸に押し当てる。
湊翔の行動に驚き声が出ない。
自分の手の平からトクトクと湊翔の心臓の音が伝わる。
少し鼓動が早く感じた。
湊翔の顔は平然とし、恥ずかしがる様子はない。
(早く感じるのは気のせいか? )
早く離さなきゃと思っているのに手が動かせない。自分をジッと見る湊翔の目に吸い込まれそうになる。
その時、湊翔の反対の手が蒼の腰に回り一気に引き寄せられた。
「お、おい! 」
慌てて離そうとしたが、ガッチリ抱き締められ動けない。
「すいません、少しこうさせて下さい。これ以上、先輩に見つめられるとキスしてしまいそうです」
「キ、キスって! べ、別に見つめてなんかねーよ! お前が見てたんだろ? 」
文句を言いながらも蒼は突き放さない。
しかも、手から伝わる湊翔の鼓動はさっきよりも早くなっているのがわかる。
自然と蒼の鼓動も早くなってきた。
(俺までドキドキしてきたじゃないか! イケメンは男でも女でも惑わすんだな…)
不意に湊翔が顔を上げた。座ってる湊翔に見上げられ、またドキッとする。いつも見下ろされてる湊翔に下から見上げられ、蒼の鼓動は益々早くなる。
見つめたまま、湊翔の腕が蒼の首に添えられた。
そのまま少し力を入れて蒼の顔を引き寄せる。
(まずい、キスされる! 振りほどかなきゃ! )
頭では分かっているが、体が動かない。湊翔の真剣な目が蒼を釘付けにする。
どんどん顔が近づいてきた。
あと少しで唇が触れそうになり、蒼は目を瞑ってしまった。
ガラッ!!
「悪い、待たせたな! ん? どうした? 」
戻ってきた先生が見た光景は、蒼が立って湊翔はベッドに仰向けになっている。
先生が入ってきた瞬間、蒼が湊翔を突き飛ばした。
「な、なんでもないですよ。怪我した学生は大丈夫だったんですか? 」
何事も無かったように質問する。平然とした顔を装っているが、蒼の心臓はバクバクだった。
(あっぶねー! 雰囲気にもってかれる所だった! 平の奴! )
蒼の文句をそよにベッドの上でクスクス笑っている。
「ああ。骨折してたから、救急車呼んだよ。もう薬は塗ったか? 」
「はい、先輩が塗ってくれたので大丈夫です」
「そうか。じゃあ、この痛め止めを1日2回飲んで。3日たって痛みが落ち着いたらもう飲まなくて大丈夫だから。あとは湿布と塗り薬な」
「はい、ありがとうございます」
湊翔は着替えているので、蒼が受け取った。
着替え終わり、2人で保健室を出る。
「先輩…」
「ほら、薬! ちゃんと飲めよ! 塗り薬は秋山にでも塗ってもらえ! 」
「先輩…」
「俺は部室に戻る! 地震の心配もあるしな! じゃあな! 」
「先輩! 」
湊翔の言葉を全部遮り、言いたいことを言って、一気に立ち去って行った。
角を曲がり湊翔が追いかけて来ないのを確認して、一気に息を吐く。
「やばかったー! マジでなんなん、アイツ? なんで抵抗しないんだよ、俺は! 」
頭をわしゃわしゃ自分で掻きむしり、自問自答してみる。
「俺は女の子が好きなはずだろ? 男にキスされたってなんも嬉しくないよな? なら、なんで抵抗出来ないんだよ! イケメンだからか? イケメンなら俺は男でも大丈夫なのか? 」
一通り考えてみたが結論は出ず、深いため息をついて部室に行く事にした。
部室とドアを開けると、ソファに裕二が座っていた。
「あれ、裕二だけか? みんなは? 」
「みんな帰ったよ。物が落ちたりして、その片付けしたりしたから、今日は稽古はやめようってなってな。友樹はバイトだ。俺はお前に報告しようと思って待ってたんだ」
「そうなのか、遅くなって悪かったな」
「それより平は大丈夫か? 」
「ああ。少し痛そうだが薬塗ったから、すぐ良くなるそうだ」
「そうか…」
蒼はソファに座ると裕二を見た。
(裕二もめちゃくちゃイケメンだよな? じゃあ裕二に抱き締められてもドキドキするのかな? )
「なんだ? ジッと見て? なんかついてるか? 」
「なあ、裕二。ちょっと俺を抱き締めてくれないか? 」
ともだちにシェアしよう!