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第15話(ライバル登場?)

蒼は携帯を見ていた。ここ数日湊翔からの連絡がない、自分の前にも姿を表さない。あのキスされそうになった日から、湊翔は蒼の前に現れていない。 「やっぱり、曖昧にして逃げたのがよく無かったのかな…。でも、なんて話せばいいか分からないし…」 蒼自身も、自分から湊翔に連絡はしていない。 どう連絡していいかも分からないし、次の全体稽古は少し先だ。 今は各々台本を覚えてもらっている。 「調子はどうだ? とか聞くか? それともキスの事聞くか? いや、聞いたら期待してたみたいになるよな? クソッ! 」 頭を抱えて1人で悶々と悩む。 「どうして、俺がこんな考えなきゃいけないんだよ! 元はと言えばアイツがキスをしてきたから…って、本当にキスしようとしたのかな? もし勘違いなら聞いたら恥かくだけだよな? 」 あれこれ考えていると、部室のドアが開き友樹が顔を出した。 「蒼、ここに居たのか? 何やってるんだ? 」 「あ、ああ、ちょっと劇の事を考えてただけだ…。友樹はどうした? 」 咄嗟に言い訳をする。 「ちょっと、部室に置いてた服を取りに来てな」 そう言うと自分のロッカーを開け、ガサガサしている。 「そういえば、平に会ってるか? 」 今まで考えていた人物をだされ、思わずむせる。 「ゴホッゴホッ! なんだよ急に? 平? 会ってねーよ」 「やっぱり、そうか」 「やっぱりってなんだよ? 」 友樹の言葉が気になり聞いた。 「ここに来る前に体育館の所を通ったら、平と松前さんを見かけてな。2人で稽古してるみたいだったぞ」 「2人が主役なんだから、稽古してるのは普通だろ? 」 「そうだけど、やけに仲良さそうだったぜ。っていうか松前さん、絶対平の事好きになってるよ。目がハートだったもん」 「そ、そんなの、役に入ってるならそうだろ? 」 「あれ? 蒼、動揺してるのか? お前も結構満更じゃなかったのか? 」 ニヤニヤしながら蒼の首に手を回しからかう。 「ち、ちげーよ! 最近姿見せないから、心配してただけだ」 「ほら、それが意識してる証拠だよ。そういえば、こないだ平に抱き締められたんだって? 」 「な、なんで、知ってるんだよ? 」 「裕二が言ってたんだよ。詳しく聞いてないから、教えろ」 「なんでもないよ。ちょ、やめろよ」 言わない蒼をコショコショとくすぐり攻撃をする。 「ほら、言わないと続けるぞ? 親友の俺にも言わないつもりか? 」 友樹は益々激しく、くすぐり出した。 「やめ、やめろ! 分かった、分かった、話すから離してくれ! 」 ようやく友樹が離す。ゼェーゼェーと息を吐き、ソファに座り込んだ。 「ホント容赦ないな? 」 「お前が隠すからだ、全部話せよ? どうせ裕二には全部言ってないんだろ? 心配かけさせたくないとかで」 さすが高校の時からの親友、蒼の考えてる事はよく分かっている。 蒼はこないだの出来事を友樹に話した。 友樹はチャラチャラしているが、話していい事と悪い事は分かっている奴だ。 むやみに言いふらさない。 全部話し終えた蒼の話に友樹はあんぐりとしていた。 「まさか、そこまでいってたとは…驚きだ。しかも裕二にもお願いしたのか? お前、結構アホだな? 」 「はぁ? なんで、俺がアホなんだよ? 」 友樹になんでアホと言われたのか分からず顔を顰めた。 「まあ、それはいいとして。平も頑張ったな? お前に気にしてもらいたくて必死じゃないか。可愛い所もあるな」 「全然可愛くないわ! こっちはいっぱいいっぱいだ。アイツ、涼しい顔しやがって…。あの後全然連絡もよこさないし。少し拒否しただけで…」 蒼は思い出して、また腹が立ってきた。 その様子をニヤニヤしながら友樹が眺めている。 「お前、気づいてるか? 今の言い方だと、連絡こなくて寂しいって言ってるぞ? 」 「そ、そんなんじゃねーよ! 」 少しムキになって言い返す。 「はいはい。それはいいけど、流暢に構えていると松前さんに持ってかれるぞ。さっきの稽古、バルコニーのキスシーンやってたから、本当にキスしちゃってるかもな~」 「べ、別に、俺には関係ないよ。アイツが誰とキスしたって」 蒼はプイッと横を見て携帯をいじりだした。 友樹はヤレヤレといった感じで自分も携帯を触りだした。 インスタを見ていると、ある画像が上がっていた。 「おい、蒼! これ見てみろよ! 」 友樹に言われ覗いた蒼の目に、松前と湊翔の写真が見えた。 2人仲良さそうに写っている。どうやら松前のインスタみたいだ。 《これから稽古♡》とだけ書いている。 それを見た蒼の心はモヤモヤしだした。 (なんだよ。こないだ俺にあんな事して、何事も無かった様な顔しやがって) 「松前さんやるな~。結構本気で狙ってるんじゃないか? いいのか? 」 「いいもなにも、平は俺の物じゃないし。好きにしたらいんじゃないのか? 」 強がりを言ってみるが、正直モヤモヤが晴れない。 蒼の頑固を理解している友樹は、ため息をつき蒼を突く。 「ほら、ちょっと見てこいよ。俺が呼んでるって言っていいから」 「べ、別に、俺は気になってない! 」 「じゃあ、俺が気になってる事でいいから、見てきてくれ。松前さんにちょっかいかけるなって」 友樹の言葉にようやく腰を上げる。 「そ、それなら、別に行ってやってもいいけど…」 「はいはい、それでいいから行ってこい」 足が重い葵を後ろから押し、部室の外に放り出す。 「じゃあな、ちゃんと見てこいよ」 蒼を送り出し、友樹はドッと疲れてソファに座り込んだ。 「全く、頑固な奴だ。自分の気持ちの変化に気付こうとしない。それにしても…裕二、大丈夫かな? まさか、蒼が裕二にお願いするとは、本当に自分の事になると鈍感な奴だ…」

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