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第17話(寮の前にいた人は…)

「遅くなったな…」 湊翔は携帯を見て時間を確認する。陸と佳奈にラーメンをご馳走したあとカラオケに付き合わされた。湊翔はそんなにカラオケが好きではないので途中で切り上げてきたのだ。 「ホント、あいつら元気だな。先輩に連絡すると迷惑かな? 」 今日は連絡しようと思っていたが、遅くなり湊翔は躊躇していた。 こないだの事があって、蒼に警戒されてるのは理解していた。 少し時間を空けて連絡しようと思っていたが、テストなどもあって数日たってしまった。 「今日も無理かな…」 諦めて携帯をしまい、足を早め寮に帰ろうとした。 寮の入口に誰かが立っている。 その姿が遠くからでも蒼に見えた。 「えっ? 先輩か? まさかな…」 急いで近づくとやっぱり蒼が立っている。 蒼が湊翔に気づいた。気恥しそうに手をあげる。 「先輩? どうしてここにいるんですか? 医学部の寮に知り合いいたんですか? 」 「ああ、ちょっとな…」 どもりながら、もごもごと何か言っている。 「先輩、もしかして…俺に会いに来たんですか? 」 湊翔の言葉に蒼の顔が赤くなった。冗談のつもりで言ったのに図星の様な顔をする蒼に驚く。 「えっ? 本当に? 」 「悪いかよ! 昼間余り話せなかったから、肩の具合聞きたかったんだよ! 」 「それなら、電話でも…」 「うるさいな、来ちゃ悪いのかよ? 」 「全然! 嬉しいですよ、驚いただけです」 「で? 肩はどうなんだ? 」 不貞腐れ気味に聞いてくる。 (なんだろ、この可愛い生き物は? ) 蒼のツンデレ具合に湊翔は心の中で悶える。 「はい。少し痛みはありますが、もう全然大丈夫ですよ」 肩に手を置いてグルグル回して見せた。 「そうか、なら良かった。じゃあな」 「ちょっ! 先輩、帰るんですか? 」 「そうだよ、それが聞きたかっただけどし」 「待って下さい。せっかく来たんだから、部屋でコーヒーでものみませんか? ほら、5月でも夜は少し寒いですよ? いつからいたんですか? 」 蒼の手を掴むとひんやりとする。 「俺は暑がりだからいいんだ! 離せ! 」 「嫌ですよ! 先輩が良くても俺が嫌です! ほら、早く! 」 「お、おい! 平? 」 少し強引に蒼の手を引っ張り寮の中に入って行く。 最初は抵抗気味だった蒼も、エレベーターまで来ると大人しくなった。 それでも湊翔は手を離してくれない。 (ずっと握られてるじゃないか…来るんじゃ無かった…) 蒼は少し後悔した。本当は携帯に電話して怪我の具合を聞きたかったが、無視をされたらと無駄に悩み、結局寮まで来てしまったのだ。 (なんで、俺の方が悩まなきゃいけないんだよ! クソッ! ) 心の中で文句を言っていると湊翔が足を止める。 「先輩、ここが俺の部屋です」 303号室の前で足を止める。ポッケから鍵を出し開けてる時も手を握られたままだ。 「はい、どうぞ」 湊翔がドアを開け蒼を入れる。ようやく手を離してくれた。 中に入るまで逃げると思っていたようだ。 (全く、俺をなんだと思ってるんだ? それにしても…) 蒼は怒りより部屋の広さに驚いた。 自分の寮の部屋よりかなり広い。1Kだかキッチンも部屋も蒼の寮より広く綺麗だった。 「なんだよ、医学部だけ特別か? そういえば、エレベーターもあったな? 俺の所にはないぞ! 」 「そうなんですか? 改装する時にOBの人達が援助したとは聞きましたが…」 OBがほとんど医者だから、寄付金も凄い額なんだろう。 「ちぇ、いいよな。俺の寮なんて6畳位しかないぞ? ここ何畳だ? 10畳はあるよな? 」 ソファに座りながら、ポンポンと座り心地を確認してみる。 「何畳かは分かりませんが、気にいったらいつでも来てください。コーヒー入れますね」 「そ、そんな来ることはねーよ! 」 文句を言いながらも、座り心地がいいソファから立てない。 ずるいなと思いながら、部屋をキョロキョロする。 湊翔らしくスッキリと落ち着いた雰囲気の部屋だ。 机の上も綺麗に整頓されていた。自分の部屋と大違いだ。 「俺の部屋なんか入れられないな…っていれるつもりもねーけど」 1人でツッコミをしていると、湊翔がコーヒーを入れて戻ってきた。 「先輩、どうぞ。温まりますよ」 「あ、ああ、ありがとう」 湊翔はテーブルの上に置くと、自分の机の椅子に座る。 その行動に違和感を覚えた。いつもなら横に座ってベタベタしてくる湊翔が離れて座っている。 「先輩はあの後出かけたんですか? 」 「い、いや、部室で松前さんの稽古の相手してたよ」 「えっ? じゃあ先輩がアリ王子やったんですか? 」 もしかしてキスシーンも? と湊翔が蒼を見る。 「何考えてんだ? 俺は立ち位置とかの指導で、相手役は友樹にやってもらったぞ」 「それなら良かったです。松前先輩が先輩の事も狙ってたら困るので」 「あの子の好みじゃねーよ、俺は。お前は? 松前さんと仲良さそうだったろ? 」 「先輩、それはヤキモチですか? 」 「そ、そんなんじゃねーよ! お前が誰と仲良くたって俺には関係ないし」 慌てて否定した。 「先輩、それは本当ですか? さっきも会いに来てくれたし、少しは俺の事考えてくれてるんじゃあ…」 「ちげーよ! 俺は先輩として、女の子とデートしてみるのもいいんじゃないかと…。ほら、最近俺に連絡こないし、今も近くにも来ないだろ? 少しは女の子にも興味を持ったのかなーと思って」 蒼の言葉に湊翔は大袈裟にため息をついた。 この人は本当に何も分かっていない。 「先輩ってバカなんですか? 」 「な、なんでそこでバカと言われなきゃいけないんだ? 」 ムッとして聞きかえす。湊翔はハァーと息を吐いて、椅子から立ち上がり蒼の横に座った。

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