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第18話(湊翔の部屋で…)

「先輩、なんで俺が先輩に近づいてないかわからないんですか? 」 「俺に飽きてきたんじゃないのか? 」 (どこからその発想がくるんだ? ) 蒼の返信に驚きが隠せない。鈍感にも程がある。この人にはストレートに言わないと伝わらないと湊翔は思った。 咳払いをして、蒼の方を向き目を合わせた。 「先輩、俺が好きなのは先輩ですよ。栗城蒼です。他の女子なんて興味がないです。近づかないのは、近づいたら先輩を押し倒しそうだからです。普通に考えて分かりませんか? 好きな人が自分の部屋にいるんですよ? 近くで我慢しろって方が無理です」 湊翔のストレートな告白に蒼は真っ赤になった。色々考えていたのがバカらしくなるくらいのストレートな言葉に声も出ない。 湊翔は蒼の頬を手で触る。 「今でも先輩にキスしたいです。していいですか? 」 湊翔の質問に蒼は、益々顔が赤くなる。 「な、なんで聞くんだよ? い、嫌だ! 」 「こないだ聞かずにしようとしたので、今回は許可を貰おうと思って…」 「そ、そんなん言われたら許可なんて出せねーよ! 俺帰る! 」 湊翔の手を払い除け立ち上がった。 「待って下さい! 」 立ち上がった蒼の手を握り引き戻す。 「うわっ! 」 バランスを崩し、蒼は湊翔の膝の上に座る形になった。 湊翔はそのまま蒼を抱き締める。 「コラ、離せ! 」 「嫌です」 湊翔は蒼の首筋に顔を埋めキスをした。 「ンッ…や、やめろ…」 「先輩、嫌なら本気で殴って下さい」 そう言うと湊翔は舌を出して首筋を舐めだした。 「ヒャッ! お、お前、何を…ンッ…」 強く押し返そうとするが力が入らない。 蒼は湊翔の服をギュッと握り我慢する。 気持ち悪くはないが、恥ずかしすぎて死にそうだ。 湊翔は1回離れ再度蒼の頬を手で包み込む。 真っ直ぐな湊翔の目に逸らす事が出来ない。 湊翔はそのまま顔を近づけてきた。蒼の頭の中では(ダメだ、避けろ)と言っているが体が動かない。 どんどん顔が近づいてくる。湊翔の目線がフッと下におりた瞬間、唇に湊翔の唇が触れたのがわかった。 キスをされてる。それは理解しているが振り払う事が出来ない。 湊翔は優しくキスを繰り返し、蒼の腰に手を回し自分の方へグイッと引き寄せる。 「アッ…」 蒼は驚いて思わず口を開く。その隙に湊翔の舌がスルリと入ってきた。 「ちょっ…ンッ…」 優しいキスから少し激しくなる。蒼の舌を器用に絡め取り自分の舌と絡ませてきた。湊翔の腕の中で蒼の力がどんどん抜けていく。 頭がボーッとして何も考えられない。こんなキスは初めてだった。 今までの彼女とは軽いキスしかした事無かった。むしろそこで、いつもなんか違うと言われ友達に戻る事が多かった。 蒼が抵抗しないのをいいことに湊翔の手は蒼の服の中に忍びこもうとした。 その瞬間、蒼は我に帰り湊翔のお腹にグーパンをいれる。 「グッ!! 」 みぞおちに綺麗に入り、湊翔はソファに崩れた。 「せ、先輩…それはちょとと酷くないですか? 」 ゲホゲホと咳き込みながら蒼を見上げる。 「どこが酷いんだ! お前の方が酷い事しただろ? 」 「なんでですか? ちゃんと聞きましたよ? 嫌なら殴って下さいって。でも、逃げないから…」 「そ、それは…ちょとビックリしただけだ! それに今殴っただろ? 」 蒼の言葉にお腹を擦りながら意味深な顔をする。 「なんだよ、その顔は? 」 「確かに殴られましたが、それは先輩の服の中に手を入れたからですよね? 」 「ああ、そうだ」 「じゃあ、キスした事には殴られてないですよね? なら、キスは嫌じゃないって事ですね? 」 「…」 ハッと気づき黙ってしまった。自分の発言を振り返ると確かにそう聞こえてもおかしくない。 (俺はバカなのか? ち、違う! ) 蒼は頭をブルブルと振り思い直す。 「ち、違う! どっちもダメだ! もう、俺は帰る! お前の家は危険だから絶対入んないからな! 」 捨て台詞を吐くとバタバタと湊翔の部屋を出ていった。 「先輩ってマジでやばいわ…」 蒼の行動全部が萌えポイントになる湊翔は、思い出しニヤニヤしている。 __________________ それから数日後、湊翔の部屋のソファに座って頭を抱えている蒼がいた。 (クソッ、なんでこうなるんだよ! でも、どうしても見たかったし…) あの日からまた湊翔を避けていた蒼に、友樹が声をかけてきた。 「なあ蒼、お前が探していたアラジンの限定版持ってる奴いたぞ! 」 「本当か? 」 アラジンの限定版DVDは撮影裏や、役者のインタビューが入っている。 初版数万しか入ってないレア物で、世界中で販売されたから日本で持っている人も少なかった。 蒼は撮影裏をどうしても見たく探していたのだ。 友樹の言葉に興奮が抑えられない。 「ああ、本人が言ってたぞ」 「ぜひ借りたい! 誰だ? 」 「平だよ」 「えっ? 」 「えっ? ってなんだよ? 平だよ、平! 」 その名前を聞いて蒼は黙ってしまう。日本に何本あるかわからない1本を湊翔が持っている。 どうしても見たいが、湊翔の所に頼みに行くのが嫌だった。 「友樹、代わりに行ってきて借りてきてくれ」 「はっ? ヤダよ、自分で行きなよ。またアイツの事避けてるんだろ? 今度はなんだ? とうとうキスでもされたのか? 」 友樹の言葉に思わず顔が赤くなる。 なんで友樹にはすぐバレるのか、相変わらず鋭い奴だ。 蒼が黙ってると友樹かマジかと驚いた顔をする。 「いや、ち、違う! 違うぞ、お前が思ってるようなやつじゃあ…アイツが勝手に…」 「なんだよ、違うって? 転けた拍子に口と口がぶつかったってやつか? ドラマでよくある? 」 「そ、それとはちょっと違うかな? 」 「じゃあ、なんなんだよ? 」 「い、いや、それは…お、俺、平にDVD借りに行ってくるわ! じゃあな! 」 「お、おい! 蒼? 待て、俺も行く! 佳奈ちゃんもいるかもしれないだろ? 」 「お前まだ諦めてないのか? 」 「当たり前だろ? さっ、行こうぜ! 」 佳奈に会えるとノリノリな友樹は蒼を急かす。

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