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第19話(甘い誘惑)
友樹と湊翔を探しに食堂に向かった。
その道中、蒼はキスした時の事を思い出していた。
湊翔のキスは正直気持ちよかった。口の中を掻き回され、頭がボーッとしたのも事実。
(正直、半立ちしちゃったんだよな…キスなんて久しぶりだし)
あれ以上続けられたら本気で立ちそうだったので殴ったのも理由の半分だった。
(バレてないよな? それにしても…誰とも付き合ってないって言ってたけど、キスはした事あるのか? なんだよアイツ! 好き好きって言ってる割には裏で遊んでたのか? )
そう思うと段々腹が立ってきた。そんな奴の好き攻撃に満更でもないと思ってきた自分を律した。
「蒼、何ブツブツ言ってるんだ? 」
「な、なんでもないよ。いたか? 」
「ああ、相変わらず目立ってるな」
友樹が顎でクイッと湊翔達がいる方を指す。
湊翔、陸、佳奈の3人で席についていた。
周りの女子達がチロチロ湊翔、陸を見ている。
男子達は佳奈に話しかけ、軽くあしらわれている。
「相変わらず、アイツらは人気者だな? なんで、平はお前がいいんだろうな? 」
改めて友樹に言われる。
「そんなの俺も知らないよ。高校の時も話した記憶ないのに」
「でも平はあるって言ってるんだろ? 」
「ああ、まだ教えてくれないけどな。じゃあ行くか」
話しかけようとする蒼を友樹か止める。
「ちょっと待ってろ。佳奈ちゃんに飲み物買って来るから! 」
そう言うとカウンターに行き飲み物を2つ買ってきた。
そのまま、飲み物を手に佳奈の所に行く。
「山下さん、よかったら飲んで」
ニコニコしながら佳奈に渡しそのまま隣に座る。
「あ、先輩…ありがとうございます」
佳奈は後ろの蒼をチラッと見て断れないと思い仕方なく飲み物を受け取る。
その間も友樹は色々佳奈に話しかけている。
その行動力に蒼は素直に凄いと思った。
(友樹のどプラス思考はホント凄いな。全然めげてない。どこからくるんだろうか? )
不思議に友樹を眺めていたら陸が話しかけた。
「先輩、どうしたんですか? 」
「ああ、平に用事があってな」
「なんですか? とりあえず座って下さい」
湊翔が自分の隣をポンポンと叩いて言う。
蒼は昨日の事を思い出し、少し椅子を離して座った。
蒼の警戒する行動に湊翔は思わず微笑む。
「なんですか? 」
ニコニコと蒼の方を見ながら聞いた。
「友樹に聞いたけど、アラジンの限定版持ってるんだって? 」
「はい、父が海外で仕事していた時にもらった物です。今は俺が持ってますよ」
「本当か? 」
その言葉に蒼の表情が一瞬で笑顔になり身を乗り出し湊翔に近づく。さっきの警戒心はあっさり解けてしまっている。
「はい、俺の部屋にありますよ」
「それを見たいんだけど、貸してくれないか? 」
「見せるのはいいですが、持ち出しは父に怒られるので俺の部屋で見てくれるならいいですよ」
「お前の部屋? 」
「はい、俺の部屋です」
ニコニコと言う湊翔に蒼は躊躇した顔になる。こないだのキスを思い出し顔が赤くなる。
友樹がそれに気づきニヤニヤしながら「お前、その顔はやっぱり…」とからかう。
「な、なんでもないよ。ちょっと暑いだけだ! 」
友樹の言葉を遮り言い訳をした。我ながら情けない。
「ぜ、絶対、無くさないし、傷つけないから、貸してくれ! 1人でゆっくり見たいんだ」
「なら、俺は離れて話しかけないので、ゆっくり見てください」
(クソッ! この野郎、絶対俺が見たいの知って言ってるな? )
「で、でも…」
「じゃあ持ち出していいか、父に電話して聞いてみますか? 」
携帯を取り出し電話しようとする。
「わ、分かった! 大丈夫だ、お前の部屋で見る! 電話しなくていい! 」
慌てて湊翔の手を抑え止める。その手を握り湊翔は「じゃあ今晩待ってますね」と手の甲にキスをした。
「おー! 平、すげーな」
湊翔の一連の流れに友樹が感心している。躊躇する蒼を部屋に入れる作戦は成功したようだ。
「分かった! 分かったから、離せ! 」
キスされて真っ赤になりながら手を振り払って立ち上がる。
「友樹行くぞ! 」
「はぁ? もう? 」
「用事はもう終わった! 俺は先に行くぞ! 」
「はぁ、全く。平、お前も程々にしろよ? 蒼は免疫ないんだから。じゃあ山下さん、またね」
もう少し佳奈と話したかった友樹はため息をついて蒼の後を追う。
「はい、さよなら」
ようやく解放されて笑顔で送りだす。
「柴田先輩って、ああ見えて友達思いだよな? 佳奈、少しは考えてやってもいいんじゃないか? 」
「えー、そうかな? まあ、最初の頃よりはマシになったけど、あのチャラさはねー」
しょっちゅう話しかけられ、友樹の免疫もだいぶついてきた。チャラチャラしてる所もあるが、友達思いや、思ってた以上に自分にしつこくしてこない所は好感は持てた。
「そうだな。先輩、グイグイ来る割には絶対佳奈に触らないよな? 他の奴は無闇にベタベタしてこようとするからな」
そんな奴をいつも遠のけてきた湊翔と陸には、友樹がマシに見えてきた。
「そうだよ、佳奈に言われた事はちゃんと守ってるし。そろそろ佳奈ちゃんと呼ばせてやりな」
「もー、2人とも他人事だからって適当に言わないの! それより、湊翔は少し距離が縮んだみたいね! 陸はどうなの? 」
「どうだろ。バーで働きだしたけど、まだ一緒のシフトがないから次に期待だな」
「いいわね、2人とも。青春してるわ」
2人の話を聞いて佳奈も嬉しくなる。湊翔はようやくアタック出来て、陸は久しぶりに気になる人がいる。昔からの2人を知っている佳奈は、2人には本当に幸せになってもらいたかった。
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