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第20話(湊翔の反撃)

「...い、...輩、先輩、先輩!! 」 湊翔の声に我にかえる。そうだ、今は湊翔の部屋にいるんだった。回想しすぎて話しかけられてる事に気づかなかった。 「あ、ああ、なんだ? 」 「なんだ? じゃあないですよ? 何回も呼んだのに、何考えてるんですか? 」 「な、なんでもねーよ! 」 慌てて言い訳する。動揺しているのをバレたくなかった。 「ふーん。はい、コーヒーです」 「あ、ありがとう」 蒼にコーヒーを渡し、湊翔は自分の椅子に座る。言われたように離れて距離を取っている。 「じゃあ先輩つけていいでか? 」 「ああ。平、くれぐれも...」 「邪魔はしません。ここで大人しくしています」 両手を上げておどけたポーズをとる。 その姿も様になってなんか悔しかった。 (クソッ、なんでも絵になるんじゃねーよ! 少しでも邪魔したら、すぐ言ってやるからな! ) 平が再生を押してくれる。蒼がみたい特典映像だ。 「はい、リモコン置いときますね。舞台裏を見て本編に戻る時は自分でお願いします。俺は課題やってますので」 「分かった! 」 湊翔の家の大きいテレビ画面に映像が映し出されると、湊翔への不信感は吹き飛び内容に引き込まれていく。 その様子を満足そうに見て湊翔は自分の課題に取り掛かった。 蒼は特典映像を一通り見ると、気になる所を繰り返し見た。 「そっか、映像だとこうなってるから、舞台でやるには...」 何回も見ながら頭の中でどんな風にするかを考えていた。 何回も見た後、ようやくテレビを消した。 「うーん、やっぱり映像は凄いな」 伸びをしながら満足そうに頷く。携帯を見ると2時間もたっていた。 「えっ? こんなにたっていたのか! 平、悪い! 長居したな! 」 映像に集中していて湊翔の事を忘れていた。 慌てて、湊翔の机の方を見ると、湊翔が机に伏せて寝ていた。 「平? 寝てるのか? 」 そうっと近づく。蒼が声をかけても起きない。 湊翔の机の周りには課題のノートや紙がいっぱい置いてあった。 (そうだ、コイツ医学部だった。他の部よりかなり課題も多いし、今年のミスターにもなったからやる事いっぱいあるよな? それなのに、俺のお願いも聞いてくれて…) 蒼はソファにあったひざ掛けを湊翔にかけてやる。 少し動いたが、起きる気配はない。 (このまま帰るか? でも、見るだけ見て声もかけずに帰るのは...それにしても…寝顔まで綺麗ときている) 湊翔の寝顔をマジマジと見た。本当にこの男は自分の何がいいんだろう?と不思議に思う。 ほっといても人が寄って来るのに、わざわざ背の低いギャーギャー言う男を選ばなくても。 蒼は相変わらず不思議に思っていた。 ふと湊翔の唇に目がいった。ヨダレも出ず綺麗に閉じられた唇。 (この口とキスしたんだよな、俺...) またキスの記憶が蘇る。蒼は無意識のうちに手を伸ばし指で湊翔の唇に触れる。 フニャと柔らかくへこむ唇に指で触れてるだけなのにドキドキしてきた。 湊翔が起きると思っているのに触るのを止められない。 指をスライドしながら何回もなぞる。そのまま湊翔の頬に手を触れる。 すべすべした頬は蒼の手を吸い付けて離さない。 その感触が気持ちよくて何回もなでなでしてしまう。 ブブッブブッ その時、蒼の携帯がなった。 「うわっ! 」 慌てて湊翔から手を離し携帯を見る。友樹からだ。 (やばかったー、触り続けてたら平に気づかれる所だった。起きないようだし、帰るか... ) 蒼は湊翔の耳元に小さい声で「ありがとな、ゆっくり休めよ」と言い、帰ろうと後ろを向いた瞬間、グイッと引っ張られる。 「わっ! えっ? 」 引っ張られた勢いで、湊翔の膝の上に跨る形になった。 「た、平? 起きたのか? 」 「はい、起こさず帰ろうとしたので引き止めました」 湊翔は蒼が降りないよう、腰に手を回し更に引き寄せる。 「お、おい! 離せよ! 何もしないんだろ? 」 「そのつもりでしたが、先輩からあんなに触られると我慢するのも無理ですよ。わざとですか? 」 「お、お前、起きてたのか? いつから? 」 「先輩が俺の唇触る辺りですかね? 」 湊翔の言葉に顔が真っ赤になる。自分がやってた事全て気づかれてたなんて、恥ずかし過ぎて死にそうだ。 「気づいたなら起きろよ! 」 恥ずかしさから変な八つ当たりをする。 「だって先輩から触ってくれるなんて滅多にないから起きるなんて勿体ないですよ」 蒼の手をとり手の甲にキスをしながら言った。下から見上げてくる湊翔の顔はいつもより色っぽく見えて、蒼はドキドキしてきた。 「で、でも...」 「先輩。俺、言う事聞いて大人しくしてたでしょ? ご褒美下さい」 「ご褒美? 俺何も持ってねーぞ? 」 「何もいらないですよ、じっとしといてくれたら」 そう言うと蒼を引き寄せキスをした。 「ンッ...」 湊翔は何回も蒼にキスをする。その間も蒼はギュッと唇を固く閉じていた。 「先輩、口開けてください...」 蒼は無言でブルブルと首を振る。その仕草に湊翔はクスッと笑って腰に回していた手を蒼の服の中に滑り込ませた。 「アッ...」 思わず声を漏らした隙に、素早く湊翔の舌が入ってきた。 「ヤッ...ンッ...」 強引に入ってきた舌は容赦なく蒼の口の中を掻き回してくる。 器用に舌を絡め取り、自分の舌と絡ませる。 「ちょっ...ンッ...ま、待って...」 必死で推し戻そうとするが力が入らない。 (もう、ヤバイって! このままだと...) 蒼は自分の体が反応してきてるのに気づき、何とか逃れようとした。

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