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第24話(裕二の心中…)

「裕二、悪いな」 部屋に来てくれた裕二に飲み物を渡す。 「大丈夫だよ、どこが気になるんだ? 」 「ああ、ここなんだけど」 裕二の隣に座り自分の課題を出す。距離が近く裕二は少し体をずらした。 蒼は気にする様子もなく、自分の分からない所を質問している。 「ああ、ここはこうで…」 説明をしながら蒼の方へ顔を上げた時、視界にあるものが入った。 蒼の首筋に赤い物が見える。 少し前屈みになったので見えたのだ。 まさか…と裕二の動きが止まった。 「裕二? 」 急に話さなくなった裕二に不思議そうな顔をした。 裕二の目線が自分の首に向いている。何かついてるのだろうか。 「どした? 何かついてるのか? 」 首を触ってみるが何かついてる感じはなかった。 「蒼、それはキスマークだろ? 平に付けられたのか? 」 「えっ? キスマーク? 」 慌てて携帯のカメラで確認すると、確かに赤い物が見えた。 (平のヤロー、さっきつけたんだな! ) 「蒼…お前、平と何したんだ? もしかして…」 「ち、違う! アイツがふざけただけで…」 裕二の声に怒りを察し、慌てて否定する。このままじゃ、湊翔の所に行って殴りそうな勢いだ。 突然、裕二が蒼を押し倒した。 「お、おい! 裕二? 」 驚いて声を上げたが、裕二はどかない。 そのまま蒼の服を捲りあげた。 「な、何するんだ? 」 突然の行動に意味が分からない。なんで裕二が自分の服を捲りあげる必要があるんだ。 裕二は捲りあげた蒼の上半身を見て再度蒼に言った。 「体中、キスマークつけてふざけただけだと? 」 「えっ? 体中?! 」 裕二の言葉に自分の体を見る。そこには赤い斑点がいくつもあった。 蒼の顔が見る見る赤くなる。さっきの事を思い出したのか、裕二に見られた恥ずかしさかは分からなかったが、気まずい空気に黙るしか無かった。 「そ、それは…なんでもねーよ! 裕二には関係ないだろ? もう、どいてくれ! 」 恥ずかしさから少し強めの口調で言い裕二をどかそうとした。 それでも裕二はどかなかった。 怒りが混じった様な顔で蒼をじっと見ている。 「裕二、聞いてるのか…って、おい! 」 突然、裕二が首筋にキスをしてきた。チューと音を出して蒼の首を強く吸っている。 「お、おい、何してるんだよ! 」 慌てて押し戻す。裕二の表情はさっきと違って悲しそうな顔をしていた。 「な、なんなんだよ? 」 蒼は全く分から無かった。なぜ裕二が自分にこんな事をするのか。 「別に…ふざけてしたんなら同じだろ? 」 「はぁ? 」 「特に意味はねーよ。俺、帰るわ。課題の明日にでも返してくれ」 「お、おい、裕二? 」 蒼の返事も待たず裕二は部屋を出て行った。 「怒らせたかな? 裕二は心配してくれただけなのに、逆ギレしたしな…。明日謝らなきゃ 」 次の日、いくら探しても裕二に会えない蒼がいた。 「なあ友樹。裕二、今日休みか? 」 「えっ? さっき講義にはいたぞ? 」 「そうなのか? 」 「元気なさそうだったけど、何かあったのか? 」 「いや、なんでも…イタッ! なんだよ? 」 突然首を締められグエッとなってしまった。 「なんでもない訳ないだろ? どうせ、裕二が怒るような事したんだろ? 何があった? 言え! 」 「ちょ、苦しい! 分かったから離せ! 全く、お前はいつも力技だな? 」 首を擦りながら渋々昨日の出来事を話した。蒼の話を聞くうちにどんどん友樹の顔が変わる。興味本位で聞いていたのを後悔した。 (ヤバい、コイツは本当に何も分かってない 。裕二の気持ちに気づかないなんてどんだけ鈍感なんだ? ) 「って事があってな。今日謝ろうと思ったんだけど、見つからなくて」 友樹はどうするか悩んでいた。蒼の気持ちも裕二の気持ちもわかる。決して蒼が悪い訳ではない、かなり鈍感だが。言わない裕二も悪い。 それで煽ら立ちを蒼にぶつけてもわかる訳がない。 「まあ、俺から言えるのは2人でちゃんと話し合えって事かな。裕二の言い分もあるだろうから聞いてやれよ」 「分かってるけど、本人が見つからない分には…」 「今日、みんなで集まって練習するんだろ? その時なら会えるんじゃないのか? 」 「そうだな、その時に話しかけてみるよ」 放課後、演劇部には多くの部員が集まっている。 久しぶりに湊翔を見た女子部員はキャーキャーと周りを囲んでいる。 その中でも湊翔の隣を譲らないのは松前だった。 ここ最近、何かと湊翔の側にいる。 その光景を見る度に蒼の心はザワザワしていた。 その思いが何かまでは分からずイライラしている自分がいた。 (なんだよアイツ、ヘラヘラ笑いやがって! 内心嬉しく思ってんじゃないのか? ) 蒼の視線に気づき湊翔が近づいて来た。 「先輩」 「な、なんだよ? 」 「なんでも、先輩と目があったんで来ただけです」 「合ってねーよ! たまたま見た方向にお前がいただけだ! 」 蒼の言い訳にクスッと笑ってニコニコしている。 (クソッ! この余裕ぶっこいてるのがムカつくわ! ) イライラしていると、陸と佳奈が話しかけてきた。 今日は2人とも見学したいと見に来ていた。 「栗城先輩、種谷先輩はこないんですか? 」 「ああ、まだ来てないな…。多分もうすぐ来ると…な、なんだよ? 」 蒼が首を振りながら部室内を見ていたら、突然湊翔が蒼の服の襟を引っ張ったのだ。 「先輩、この首筋の赤いのはなんですか? 」 鋭い口調だ。 「はぁ? 」 (何って、お前がつけた物だろ! ) と言いたい所だったが、陸と佳奈がいるので何とか留まる。 蒼が首筋を抑えて湊翔を睨むが、湊翔の顔は強ばったままだった。 (なんで、お前が怒った顔してるんだ? ) 訳が分からず湊翔を見ていると静かな声で湊翔が言った。 「先輩、俺は左側には付けましたが、右側にはつけてないですよ? 誰につけられたんですか? 」

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