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第5話 リカちゃん

あれから、1週間経った。 ほぼ毎日ハルマの家に行き、 ランニングをして、勉強して、キスをする。 さすがに毎日キスをしてれば、毎回あの興奮ではない。 慣れてきた。 男として一皮むけたのだ。 相手はハルマだけど。 いちいち下半身も興奮しなくなってきたので、それ以上することもない。 俺の、日々暴走していた性欲も落ち着いてきた。 友人から言われた、「俺の好きな子をハルマがとっている疑惑」は気になっていた。 まさかとは思うが…この下半身に余裕のある時に試してみようと思った。 俺にチョコをくれた子の一人で、リカちゃんがいる。 俺が見た限り、ハルマにはチョコをあげてない。 バレンタインデーの前日、雨が降っていて傘を貸してあげたのだ。 そのお礼にチョコをくれた。 そこまでハッキリ義理とわかっているのも悲しいが、ちょっとリカちゃんを利用しようと思った。 ―――――――――――― いつものようにハルマの家に行く。 ランニングをして、シャワーを浴びる。 ちなみに毎回申し訳ないので、ソープセットとタオルは用意した。 部屋でくつろぐあたりに話してみた。 「俺さ、リカちゃんからチョコもらったんだ。多分、傘を貸したお礼だけど、やっぱりチョコをもらうと意識しちゃうよな。」 いざ口に出すと、本当にリカちゃんが意識される。 「そうなんだ。告られたの?」 「そうじゃないけど。まあ、話しやすいし、かわいいとは思ってるよ。」 確かにリカちゃんは素朴にかわいい。 ボブが似合っていて、バレー部だ。 スタイルもいい。 「……告白したら?」 「あ、いやまだ、意識し始めたばっかりだからさ。もう少し、仲良くなったら考えるよ。」 大抵、こうやってもじもじしているうちに、女の子はハルマを好きになり、女の子がハルマに告白して、振られ、俺は何もしないまま恋が終わる。 告白する気はないが、リカちゃんとは話してみたくなった。 帰る時、教材を片付ながらハルマを見た。 近づいてキスをしようとしたら、ハルマが俺の口を手でふさいだ。 「好きな子ができたんなら、やめようよ。」 ハルマにちょっと睨まれた。 確かにそうだ。 「ご、ごめん。そうだね。」 恥ずかしかった。 設定がブレブレだ。 でも内心、ハルマとキスできないのは残念だった。 仮にリカちゃんと付き合えても、いきなりあんなキスはできないだろう。 ハルマとのキスが気持ちよかったことを思い出す……。 もう少し、タイミングを考えれば良かった。 ―――――――――――― 翌日、登校してから、意識的にリカちゃんに話しかけてみた。 たまたま、"小さくてカワイイ系"の、好きなキャラが一緒だった。 涙目のコカワが可愛いとか、友達のナナワレの舌を出している顔がいいとか。 リカちゃんがウザギの奇声の真似をしたら、思いのほか似ていて盛り上がる。 「ショップも行ってみたいんだけど、男が行くにはちょっと……と思って。」 「じゃあ、今週末行かない?ちょうど新作出るんだよ。」 マ、マジで? デートじゃん! 「本当?!それ助かる!」 「ハルマ君はいいの?」 今、奇跡的にハルマはいない。 「あいつは……そこまで小カワ系にはハマってないから、行かなくていいと思う。あ、じゃあ連絡先教えて。」 連絡先をスムーズに交換する。 いい感じだ。 もうリカちゃんと付き合いたい。 「あとで、詳しいこと送るね。」 「ああ、よろしく。じゃあ、またね。」 俺はそそくさと教室を出た。 直接話してるといつハルマが来るかわからない。 メッセージが使えればこっちのもんだ。 なんだ、俺もやればできるじゃないか。 もしかしたら、キスにがっつかなくなったことによる男の余裕かもしれない。 その日は体調不良と偽って、ハルマの家には行かなかった。 絶対に今の俺はにやけている。 ハルマに仕掛けるはずの罠(?)のつもりが、そんなことはどうでもよくなった。 その後も、何かにつけてハルマの家に行くのは断り、週末に向けて準備をした。 まずは服だ。 今更ながらコーディネートの勉強だ。 美容室にも行く。 なんとなく爪も切っておく。 口臭は大丈夫だろうか……ハルマとキスするときに言われたことはないけど。 リカちゃんからメッセージが入る。 『10:00に駅前集合でどう?あと、ショップ見た後、近くのスイーツのお店に行かない?すごく大きなパフェのお店なんだけどさ、女子だけだと食べきれなくて。』 『もちろんいいよ!俺も普段食べれないから、楽しみだよ。』 ショップだけじゃなくて、スイーツまで…。 甘い…なんて甘いんだ…。 『ちょっと急でごめん、なんだけど、ココミちゃんも来ていいかな?いつか一緒に食べようって約束してて。』 『いいよ。せっかくだから、みんなで行こう!』 もう一人、女の子が増えた…。 いや、なんていうかね。 いつもハルマがいると、4人でいても1:3なんよ。 どんなに女の子がいても、一塊りでハルマ寄りなんよ。 だから、今回の1:2は嬉しい…。 そして週末がやってきた。

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