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第20話 高校二年生

シャワーを浴びながら思った。 なんというか、やり慣れてきた。 今までどこか遠慮がちだったが、一段階、上がった気がする。 俺ばっかりエロいのかと思いきや、ハルマも女の子に興味が薄いだけでエロいんだ。 安心した。 先にシャワーを浴びていたハルマを服を来て、ソファに座っていた。 最後にもう一度キスをする。 男女なら街中で手を繋いでもいいが、俺たちはそうはいかない。 限られた場所と時間でしかくっつけない。 「……時間だし、帰ろうか。」 「……そうだね。」 ハルマが返事をして、それでも首元に頭を寄せて来るのは可愛かった。 ――――――――――――― 平日になり、いつも通り一緒に登校する。 別々のクラスに入り、1日が終わればまたクラスに迎えにいく。 タツオミと顔を合わせるのは……俺の事情で気まずかった。 現実の人間を妄想内に呼ぶのは非常に危険だ。 ―――――――――――― 高2になり、いよいよ進路もまともに考えていかなくてはならない。 最初は難関大学や有名私立大、地元の国公立を書いていたが、自分の中では地元の国公立が第一志望だった。 なんとなく、先生はまだ上の大学を目指し続けるよう言うが、モチベーションが湧かない。 俺はタツオミに相談したくなった。 タツオミにハンバーガーと引き換えに、時間をとってもらう。 ハルマも一緒にいる。 大学の場所が離れたら、ハルマとの関係も左右されるかもしれない。 ハルマにも、聞いてほしかった。 「第一志望は、地元の国公立なんだね。」 タツオミは俺の模試の成績を見ながら言った。 「うん。あまり、行きたい学科とかなくて……経済とか、マーケティングなら、サラリーマンになっても役に立つかな、て。」 「将来のことを考えずに、やりたいことって言ったら、何なの?」 「そうだなぁ。英語は好きだし、海外は興味あるけど、だからってすごくできるわけじゃないんだ。」 「すごく英語できる人が、英語を生かした仕事に就くとも限らないよ。好き、とか、興味がある、って気持ちそのものは大切にした方がいいんじゃないかな。」 実家はあまり経済的に余裕はない。 だから、最初から海外に行きたいとかは言えない雰囲気だ。 でも、タツオミに言われると、最初から無きものにしていた自分のちょっとした希望が尊重されたようで嬉しかった。 「ハルマは…もうやりたい仕事があるんだよね?」 なんとなく聞いてはいたが、せっかくだからタツオミの意見も聞いてみたくて話を振った。 「俺は、医療工学に興味があって、工学部志望なんだ。ただ、専門的だから、大学が限られてて……。」 ハルマの家系には医療関係者が多く、昔から看護師になりたいと言っていた。 そこから、医療機器の開発技術者の夢に繋がったのだ。 タツオミは、ハルマの模試の結果を見て言った。 「……ここに書いてる大学なら、全部大丈夫じゃないかな。」 そう、ハルマは大丈夫なんだ。 「もしかして、同じ大学に入りたいの?」 タツオミは俺たちの顔を見た。 先生に相談しづらい理由はそこにある。 「まあ、なんていうか、絶対一緒でなくてもいいんだけど……近かったらいいな……って……。」 ここまで言ったら、タツオミなら察するだろう。 「じゃあ、話は簡単だよ。ハルマは、地元に行きたい大学があるから、そこを目指す。リョウスケは、がんばんなきゃいけないけど、地元国公立ならもうここ。先生はランクを落とさずに……とは言うけど、リョウスケの受験勉強のモチベーションは……ちょっと違うみたいだから。」 タツオミは困ったように笑った。 「そう……なるよね。」 「先生はさ、進路に責任とるわけじゃないし。参考まででいいんじゃないかな?模試の1枠くらい適当に書いておけば。この国公立なら、国際も経済もあるから、まずは楽勝で受かるくらいを目標にすればいいよ。滑り止めになってくると、たぶん、地域とか、なりふりかまってられなくなると思うんだ。お金もかかるから、親の意見もあるだろうし。」 「そうだね。成績さえとれれば悩むことじゃなくなる……よね。」 「全ての受験生がそうだけどね。ただ、まだ2年もあるのは大きいよ。」 俺は、タツオミの言葉に勇気づけられていた。 もしかしたら、学校の先生も最終的には同じ意見になるかもしれない。 でも、事情を知っているタツオミに言われると、自分の気持ちが定まる感じがした。 「ありがとう。やっぱり、相談して良かったよ。がんばろうと思えたよ。」 ハルマを見ると、なんとなくホッとしているような顔に見える。 「なんか、二人を見てると、考えさせられるよ。俺の周りは立派な志で勉強している奴ばかりだからさ。愛で進路を決めるなんて思いもつかない。でも、もしかしたら、人間の幸せは、素朴にそこにあるのかもしれないね。」 タツオミはやっぱり困ったような顔で笑った。

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