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第21話 進路相談

まもなくして、俺はタツオミの家に来るように言われた。 今までの模試などを踏まえて、しっかり勉強の計画を立てた方がいいということだった。 それは、自分にとってありがたい話だった。 今は学校の授業をしのぐような勉強ばかりで、結局忘れてしまう。 そんな場当たりなやり方では、せっかくの2年間もあっという間だ。 だからといって、学校の先生はそこまで相談に乗ってくれない。 「ごめんね、時間とらせて。予備校に行けばいいんだろうけど……。」 「そうとも限らないよ。予備校に通っても、新しくやることを増やされるだけで、成績が上がらない人なんてたくさんいるから。やっぱり自分なりにやったことのアドバイスをもらうくらいに、積極的に関わらないと。俺は、兄貴がいたから、相談しやすいんだよね。」 またしても次元が違った。 計画を立てるのは、話しながらやるし時間もかかるので、図書館やお店では難しい。 だから休日に、タツオミの部屋で、ということだった。 タツオミの家族にも食べてもらえるようにお菓子を買っていく。 ―――――――――――― タツオミの部屋はよく片づいていた。 ハルマの部屋もキレイだから、部屋のスッキリさと偏差値は関係あるかもしれない。 早速、教科書と模試の結果を見ながら話をしていく。 「究極は、教科書だよ。どう使うかだね。模試も、自分が何を狙って勉強してきたか、それがどう成果に出たかで見ないと、ただの宝くじになっちゃう。」 狙って勉強するとか、初めて聞く言葉だ。 タツオミはいつも新しい視点をくれて、わかりやすく説明してくれる。 何を勉強したらいいか、どこを学校でやってどこを自学でやるかが見えてきたときは、感動した。 自分のなかに、むくむくとヤル気が湧いてくるのがわかる。 結局、1日かかった。 「この計画もさ、これで終わりじゃなくて、やってみて、修正して、なんだ。一人でできる人もいるけど、俺はやっぱり人に相談しないと無理だね。次の模試が終わったら、また振り返りをしようよ。」 「本当にありがとう……。俺の2年間がまともな2年間になりそうだよ……。」 涙が出そうだ。 「……ハルマとは、付き合ってるんだよね?」 急に言われドキッとしたが、ここまで世話になって嘘はつきたくない。 「あ……うん。前に聞かれたときは、付き合ってなかったんだけど……その後に……。」 「そうなんだ。リョウスケは、どうして心境が変わったの?」 まさか、体の相性がいいから、とは言えない。 「うん……まあ、なんか、意識したら、逆に好きかも……って思い始めて……。」 「へえ。そういうこともあるんだね。」 「うん。俺は、女の子好きだと自負してたからね。」 今でも、女の子にムラムラはするし、他の男を対象に見たことはない。 ハルマだけ、特別なのだ。 「やっぱり俺にとって、進路を恋人に合わせるなんて、信じられないよ。別れたら、後悔しない?」 別れる? そんなの、考えたこともなかった。 下手して、どちらかに女ができてもズルズル付き合ってそうとすら思ってた。 でも、確かにリカちゃんの時は、キスを拒まれた。 他に大切な人ができたら……別れるのかもしれない。 「……ハルマが進路を変えるならそうかもしれないけど……。俺はこだわりがないから。幸い、都合のいい大学もあるし。勉強は俺の頭だと大変だけど、タツオミのおかげで頑張れそうだし。後悔しないよ。」 高校も、ハルマに引っ張られて頑張れた。 ふわふわしてる自分が、よくやったと思う。 今回も、それでいいんだ。 「なんか……リョウスケらしいね。」 「え、どういう意味?」 アホすぎたかな。 「進路の話なんて、悩んでるふりしながら大抵みんな後回しだよ。それをハルマのために俺に聞いてくるところとか、素直だな、って。前向きで、感謝できるところが、リョウスケの魅力だよね。」 「まあ、ハルマからは……バカだって言われてるとこだね。難しく考えることができないんだよ。」 「ああ、わかるよ。自分の魅力をわからないままなところは、バカだ。」 「あ、改めて言われると傷つくな。そんなに……かなぁ……。」 タツオミはなぜか笑っている。

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