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第24話 秘密の約束

「え……。」 何を言われたかよく分からずにいると、タツオミが俺の肩を抱き寄せてキスをしてきた。 心臓の鼓動が大きくなる。 一瞬、唇が離れたが、また唇を重ねられる。 タツオミの唇が俺の唇を挟み、徐々に湿ってくる。 俺は、ようやくタツオミにキスをされていることに気づいて、タツオミを押し返そうとするが、タツオミに手を掴まれて押し倒された。 タツオミが上に乗ってくる。 キスは激しくなり、タツオミの舌が入ってくる。 「んあっ!んんっ!」 手足をバタつかせたり顔を背けるが、タツオミは辞めない。 徐々に俺は抵抗をやめて、タツオミのキスを受け入れた。 タツオミの舌が、俺をゆっくり味わうように、口の中を撫で、唇を吸った。 ハルマの小さな口とは違って、唇も舌も力が強くて食べられているみたいだった。 ようやくタツオミの唇が離れた。 タツオミに見下ろされる。 「……この勉強会に、下心が無いわけじゃなかった。あの時も、言ったじゃないか。一緒にいたいって……。」 タツオミは、悲しそうな目をしている。 「……ごめん……その……。タツオミの……気持ちに甘えてた……。」 タツオミが自分のことを好きだということを、曖昧にしていた。 きっと、いっ時の気の迷いだと、勝手に思っていた。 「俺は……タツオミの好意を利用したつもりはないんだ。俺は、本当にお前のことを尊敬してるんだよ……。」 タツオミの気持ちを弄んだわけじゃない。 それだけはわかってほしかった。 「……俺だって……リョウスケの助けになりたい気持ちは本当だよ……。」 タツオミは俺の上からどいて、横に座り直した。 俺はゆっくり起き上がった。 「なあ、リョウスケ……。俺は別にハルマとの仲を壊したいわけじゃないんだ。二人とも大切な友達だから……。この勉強会も辞めたくない、リョウスケのことも最後まで応援したいよ。受かって、ハルマと幸せになってほしい。」 タツオミは頭をかきながら言った。 「だけど、俺も俺で……リョウスケのことが好きなんだ。たまにでいいから、俺にも付き合ってくれないかな……?」 タツオミは切なそうな顔でリョウスケを見た。 俺は、色々なことが突然起こって、うまく頭が働かない。 「ああ、うん……そうだね……、えっと…………。俺も、勉強会は好きだから……タツオミが続けたいと思ってくれるのは、嬉しいよ。ハルマとのことも、考えてくれて……ありがとう。ただ、その、たまに付き合うってのは……何をするの……?」 「……二人で出かけるのは?」 「……まあ、それは、友達ならそもそも大丈夫……だよね?わざわざ、ハルマに気を遣わなくても。」 「じゃあ、キスは?」 そう言われて、思わず自分の口元を隠してしまった。 「キスは……。」 ハルマは、嫌だろう。 でも、タツオミは、俺とハルマを応援してくれていて、ここまで献身的にやった上で、キスだけでいい……と言っているのだ。 さっきキスをされたときの自分を思い出した。 もしこれが、同級生のアイツとかアイツなら嫌だっただろう。 相手は、タツオミだ。 自信がなくて、楽に流れやすい俺を、変えてくれたタツオミだ。 勉強会が始まってから生活が変わって、自尊心が出てきたのか、やたらめったらに性欲が湧くというのは無くなった。 ハルマに釣り合う男になってきた気がしていたのだ。 「……本当に、ハルマには……内緒だよ……。」 そう答えた。 「……ありがとう、リョウスケ。俺のわがままを、叶えてくれて。」 タツオミは、やっぱり悲しそうな顔のまま微笑んだ。

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