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第29話 映画の約束

あれから、俺はハルマから離れなくなった。 タツオミは何もなかったようにいつも通りだった。 ハルマからも何も言われないので、怪しまれていないようだ。 ユイちゃんからは、勉強会をねだられたが、タツオミの家は無理だと伝えた。 意外なことに、それからもユイちゃんは俺に数学を聞きに来た。 「タツオミ君もハルマ君も、頭良すぎて、何言ってるかわかんないんだよね。」 ユイちゃんはそう言って笑った。 「ああ、わかる。ホント、何考えてるかわかんない。」 意味は違うけど、共感した。 「あたしは、リョウスケ君の教え方が一番わかるよ。何か、あたしみたいな出来ない子の気持ちがわかるんだな、って。」 「俺も、得意じゃないからさ。しかも俺の場合、受験科目なのに、やばいよね。」 「私なんて、もう諦めちゃったよ。最近、リョウスケ君変わったよね。彼女でも出来たの?」 「いや、彼女はいないよ。」 彼女は、ね。 「そうなんだ。まあ、いつもハルマ君と一緒にいるもんね。」 はい、そうです。 「今度、みんなで遊びに行かない?」 「いいね。もうすぐ夏休みだし。……あのさ、タツオミとか、ハルマにも、声かけた方がいいの?」 「え?なんで?」 「まあ、なんていうか、俺はそういう役回りなんだよ。ハルマはモテるから、女の子からしたら、俺と仲良くしつつハルマ狙い……みたいな。ユイちゃんも、タツオミと本当は仲良くしたいんじゃないの?」 嫌な言い方をしてしまった。 「仲良くしたいのは、タツオミ君だけじゃないよ。リョウスケ君とも最近一緒に勉強できて嬉しいよ。」 ユイちゃんがさらりと言った。 「そう思ってくれてるならいいけど。」 気にし過ぎなんだろうか。 「ねえ!週末、一緒に映画行かない?コレ、観たかったんだよね。」 ユイちゃんはスマホで映画情報を見せてくれた。 「へえ!面白そう!行くよ。」 と、言いつつも、映画は恋愛映画であまり興味がなかった。 俺はアクション映画くらいしか観ない。 興味があるのは、やっぱりユイちゃんのおっぱいだ。 スマホを見せようと寄ってくれた時に、制服のブラウスから胸の質量が感じられた。 ユイちゃんの私服が楽しみすぎる。 週末の休みに行くことになった。 「ユイちゃんって、彼氏いるの?いたら、二人で行くのはまずいかな、って。」 リカちゃんの時の教訓だ。 だが、もはや彼氏がいても、おっぱいがあるならそれでいい。 「彼氏はいないよ。じゃなきゃ、誘わないから。」 ユイちゃんはそう言って笑う。 意外と彼氏がいたらガードがかたいんだろうか。

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