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第30話 タツオミの罠
勉強会中に、ユイちゃんからメッセージが来た。
タツオミの言う通り、ユイちゃんはメッセージ数が多い。
可愛いスタンプもたくさん使われていて、それくらい気遣い上手とも言える。
あまりスマホを触っていると感じ悪いかな……と思い、トイレに立つ。
「ねえ、ハルマ。リョウスケの様子おかしくない?」
「うん……。スマホばっかいじってるよね。」
「女?」
「かなぁ……。最近、またユイちゃんと仲良いし。」
「俺、ユイちゃんに週末に映画に誘われたんだ。断ったけど。」
「俺はリョウスケに、週末は家族で用事があるって断られたよ。」
「今まで家族の話なんて、出た事ないじゃん。ユイちゃんかな?」
「……かもね。」
「いいの?女の子とデートされても。」
「……良くは……ないけど……。」
「言わないの?嫌だ、って。」
「…………………………。」
タツオミは席を立った。
「ちょっと、リョウスケにカマかけてみるよ。」
トイレから出ると、タツオミがいた。
「リョウスケ、今月分がまだなんだけど。」
「う……。わかったよ……。」
ハルマと離れないようにしてるということは、ハルマがいるときにキス払いするしかない。
タツオミの部屋に移動する。
部屋に入ると、またスマホが鳴った。
見ると、やっぱりユイちゃんだ。
タツオミが、サッとスマホを取り上げて、ベッドに腰掛ける。
「へぇ、ユイちゃんと映画行くんだ。」
タツオミがメッセージに目を通す。
「見るなよ!」
「しかも恋愛映画なんて、浮気じゃないの?」
「違うよ!性欲はあるけど愛はないから浮気じゃない!」
もう性欲を認めた方がマシだ。
スマホを取り返そうとするが、うまくかわされる。
タツオミを押し倒し、動けなくしてスマホを取り返す。
「じゃあ、デートの約束の口止め料も上乗せね。」
「…………………………。」
タツオミが怖い。
「約束は…断るから……そこは、大丈夫。」
もう、女の子は諦めよう……。
「じゃあ、まず今月分だね。」
タツオミはベッドに仰向けになったまま言った。
早く終わらせよう……。
俺はグッタリしたままタツオミの上に覆い被さり、タツオミにキスをしようとした。
ガチャ、と音がする。
振り向くと、ハルマがいた。
「……何してるの?」
「あ……いや、これは……。」
ゆっくりベッドから降りる。
銃を突きつけられた気分だ。
「ハルマ、リョウスケは俺でもいいくらい欲求不満みたいだから、ちゃんと構ってあげた方がいいみたいだよ。」
そう言って、タツオミは部屋を軽やかに出て行った。
ハルマの冷たい目線に、心臓が凍りつく。
「タツオミが、スマホを取ったから、取り返そうと思ったら、あんな体勢に……なったんだよ……。」
「……そう……。」
怒られるかと思ったら、ハルマはそれだけ言って部屋を出てしまった。
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