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第35話 カシワギの部屋

自分勝手な返事をした負目もあって、カシワギの部屋に寄った。 カシワギのお母さんがいた。 よく似ていて、美人だった。 親がいるなら、セックスにはいかないだろう。 カシワギは部屋に入り荷物を下ろすと、座る間もなく早速キスをしてきた。 印刷室の時とは違って、唇をはんで、舐めて、舌を入れられる。 でも、どれも優しかった。 リョウスケのキスは勢い任せで強引だ。 それに比べると、カシワギのキスはこちらの反応を伺っている。 「……振られた後もね、好きだったんだ。話せなくなっちゃったのが、残念だったけど、形だけでも、委員会で一緒にいられたのは、良かった。」 そう言いながら、キスを続ける。 「委員長になったのも、ハルマと話せるチャンスが欲しかったからなんだよ……。」 キスが激しくなる。 「……好きだよ、ハルマ……。」 下半身を押し付けられ、カシワギの高まりがわかる。 いつか、キスだけじゃ済まなくなる。 あんな、返事をして良かったんだろうか。 カシワギの手が股間をまさぐる。 体だけなら、こちらも興奮している。 でも、やけに冷静な自分がいた。 スマホが鳴った。 カシワギは、そっと俺から離れた。 「……電話出た方がいいよね……。」 カシワギは、やっぱり優しい。 見ると、リョウスケだ。 複雑な気持ちだった。 「……リョウスケと、付き合ってるの?」 嘘をつくのが面倒になっていた。 「……はい……。」 「……そっか。じゃあ、僕は慰め係の、浮気相手なんだね。」 カシワギは笑った。 「……すみません……。」 「でも、いいよ。そうでもなければ、ハルマとキスできないから。」 カシワギは俺を抱きしめた。 「……俺は、いつでもいいから、寂しくなったら、すぐに来て。」 カシワギは静かに言った。 そうしているうちに、着信は切れてしまっていた。 ―――――――――――― 家に帰って、リョウスケに連絡するか迷った。 もし、リョウスケと別れても、カシワギとは付き合わないだろう。 カシワギとはキスはできた。 でも、リョウスケの時のような感情の高まりはなかった。 俺が、真剣過ぎるのだ。 リョウスケみたいに性に気軽なら良かったんだろう。 リョウスケの浮気心を、俺が気にしなければいい。 俺だって、カシワギとキスしてしまった。 そういう、心の隙ができるのが当たり前なんだ。 リョウスケにメッセージを送った。 明日、部屋で話そう、ともちかけた。

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