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第40話 オープンキャンパス
仲直りエッチが功を奏して、俺とハルマはまた恋人同士になれた。
タツオミにも、
『ハルマと仲直りしたので、また勉強会にいきます。』
と、図々しく連絡した。
タツオミがあんな奴だとわかった以上、俺も気を使わないことにした。
タツオミからは、
『良かったね。ちょっと残念だけど。次回の日にちはまた連絡する。』
と、来た。
なぜ、そんなに俺に執着するのかは、やっぱり全然わからないけど、タツオミには気をつけるに越したことはない。
――――――――――――
夏休み中に、オープンキャンパスに行った。
俺の志望校ではないが、ハルマの第一志望校にも行った。
産官学の実績があるから予算も多く採れて、最新の機器が備えられているらしい。
俺にはちんぷんかんぷんだったが、ハルマは興奮した様子で説明を聞いている。
模擬授業もあり、大学生の雰囲気を味わう。
高校の、問題を解く勉強じゃなくて、知って考えるのが大学の勉強だと感じた。
キャンパスを自由に歩ける時間があって、現役大学生に混じってみる。
勉強に集中している人や、運動部の人、自分たちで研究会を立ち上げて集まっている人たちがいて、楽しそうだった。
ふと、仲良さげに歩くカップルが目についた。
大学生になったら、やれることも、出かけられる範囲も広くなる。
バイトしたり、旅行に行ったり、あとは、まあ、もう子どもじゃないということで……。
「リョウスケ……何か変なこと考えてるでしょ。」
ハルマの冷めた目がこちらを見ていた。
「え、ああ。いや、大学生活、楽しそうだな、って。」
「リョウスケは、すぐ顔に出るから、気をつけた方がいいよ。」
そうですね……。
ハルマはオープンキャンパスで刺激を受け、さらにやる気が出たようだった。
一方、俺も第一志望校のオープンキャンパスに行ったが、模擬授業の内容についていけなかった。
周りの感想を聞くと、やっぱり俺のレベルが足りていないようだ。
オープンキャンパスに行った生徒の顔触れを見ても、俺より2段階くらい高い偏差値層だ。
急に自信が無くなってきた。
勉強会でタツオミにその旨を報告する。
ちなみに、その日はキスの支払い日として、タツオミと二人きりだった。
タツオミの部屋に入る。
あれだけハルマをカシワギ先輩で煽っておきながら、自分の貞操の方が心配だ。
「まあ、リョウスケは最近色恋に走ってたから、遅れをとってるかもね。」
「……これから、心を入れ替えるよ。」
「じゃあさ、この動画おすすめする。」
タツオミは、無料動画サイトにある入試対策動画のURLを送ってきた。
動画では、入試のねらいや傾向を説明してくれて、おすすめの対策方法についても話している。
「へえ……こんなありがたい動画があるんだ……。」
「勉強の仕方って、千差万別なんだよ。だから、小さい頃から自分に合った方法を知っておくべきなんだよね。そこがまだ不安なら、まずは実績のあるやり方をしっかりやってみる。自分の時間が多い、夏休みはチャンスだよ。」
俺の状況に合わせたアドバイスをしてくれるところは、やっぱりタツオミは神だった。
「この先生がおすすめしてるやり方は、俺もやってるから、勉強会の日に一緒にやってもいいよ。」
「ありがとう……。がんばるよ。」
頼もしい。
改めて気合いが入った。
「じゃあ、今日は、感謝の気持ちに応じたキスをしてもらおうかな。」
「……え?」
「軽くされたらその程度だと思うし、濃厚にされたらそんだけ感謝してくれてるんだ、って、感激しちゃうかもな。」
タツオミはニコニコして言う。
「それ、ズルイよ!」
こちらに主導権を預けながら精神的に縛りをかけるとか、やっぱり悪魔だコイツ。
「ほらほら。また間延びしたら、ハルマがいる日にすることになるよ。」
タツオミは目を瞑った。
俺は、渋々タツオミの両肩に手を置いた。
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