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第44話 カシワギ先輩

俺は朝晩にランニングを始めた。 健全になるんだ。 そう思いながら走って、河原に着く。 そして、バッタリ出会ってしまった。 カシワギ先輩に……。 「リョウスケ君だよね。」 「あ、はい。」 先日はハルマがお世話になりました……。 つい心の中でつぶやいた。 「リョウスケ君もランニング?」 「そうです。体力づくりに……。」 「やっぱり走ると気持ちいいよね。僕は、剣道部引退したから、せめてランニングの習慣は残したいなと思って。」 汗を拭いながら、爽やかに言う。 カシワギ先輩は実家が剣道場をやっていて、優しそうに見えてインターハイで入賞するほど強い。 前にチラッとトレーニングをしている様子を見かけたことがあるが、ガチの筋トレだった。 脱いだらすごいんだろうな……。 「リョウスケ君?どうかした?」 「あ、いや、やっぱり、勉強と運動って、バランスが大事ですよね……。」 「そう思うよ。今は、ハルマとは一緒じゃないの?」 「はい、ランニングは、自分一人で……。」 「そうなんだ。ハルマとは、仲直りした?」 「え!あ、はい。仲直りはしました……はい。」 「良かったよ。もし、またハルマが寂しそうだったら、僕がとっちゃうからね。」 カシワギ先輩はそう言って笑った。 「え!いや!はい、気をつけます……。」 カシワギ先輩はまた笑って、ランニングに戻った。 ―――――――――――― 「んあっ!はっ……あ……っ!」 図書室の奥には、破損した本や、古くなった雑誌を置いておく小さな部屋があった。 ハルマの喘ぐ声とピチャピチャと唾液が絡む音がしていた。 「ん……あ……。先輩……ごめんなさい……俺、やっぱり……。」 「……リョウスケ君と仲直りしたから、もう僕とは距離をおきたいんだよね?」 カシワギの唇と舌が容赦なくハルマの口を襲う。 「……今日、リョウスケ君と会ったんだ。河原で。相変わらず素直な感じで、いい子だね、リョウスケ君は。」 「ん、あっ……。」 「最初は、僕も都合のいい関係でもいいと思ってたけど、いざリョウスケ君を見たらさ、嫉妬してる自分がいるんだ。僕だって、ハルマを愛してるのに、リョウスケ君ばかかりズルいな、って……。」 「はぁ……はぁ……。」 壁に押し付けられている上に、カシワギに強く抱きしめられて、ハルマは動けなかった。 「ハルマ……一回でいいからさ、したいな…。こんなこと言いたくないけど……。もし僕たちが、こんなキスしてるって、リョウスケ君が知ったら、嫌だよね?」 カシワギはさらにハルマの唇を貪った。 「うっ……あっ……。」 仲直りした時、リョウスケは怒っているみたいだった。 今も先輩とこんなにキスしてることを知られたら、振られてしまうかもしれない。 「……どうしたら、いいですか……?」 「……今度の休み、一緒に遊びに行こう。ハルマとデートがしたい。」 カシワギはまたハルマを抱きしめて、頭をなでた。 「……はい。」 「ハルマは、僕のこと嫌いになるだろうけど、僕は……やっぱりハルマが好きだよ……。」

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