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第45話 作戦

ここ数日、ハルマの様子がおかしい。 何にも手がつかないようだった。 「ハルマ、何かあったの?」 「あ、いや。ちょっと考査も近いから、寝不足なんだ。」 今までハルマはテストでこんをつめたことはない。 タツオミにも聞いてみた。 「たしかに、元気ないよね。」 「やっぱり、そうだよね。」 「また、リョウスケの浮気がバレたんじゃないの?」 「やってないよ!ってか、今までも、浮気じゃないし!」 タツオミは笑った。 「たださ、ハルマは精神的に安定してるタイプだから、悩むとすれば、やっぱりリョウスケだと思うよ。」 「……心当たりが全然ない……。」 「最初、ちゃんとしてるの?」 「え?いや、まあ、してないわけじゃない……。」 「羨ましいね。」 「ええ……おかげさまで……。」 「誰か、ハルマに影響しそうな人はいないの?」 「……カシワギ先輩かな。」 俺は、カシワギ先輩とハルマがキスをしているところを目撃したことを話した。 「それ……すごいショックな話だな……。」 タツオミは固まってしまった。 「いやいやいや、お前だって、似たようなことしてくれたじゃん!」 「あれは、冗談だから。」 「それのせいで、ハルマがカシワギ先輩と繋がっちゃったんだからな……!」 「ごめん、ごめん。」 タツオミはやっぱり笑っている。 絶対、反省してない。 「でも、まず、カシワギ先輩怪しいと思うよ。」 カシワギ先輩にバッタリ会った日からハルマの様子がおかしかった。 そうかもしれない。 ハルマに聞いてみることにした。 ―――――――――――― 勉強会がない日、ハルマの家に行った。 「ハルマ、あのさ。」 「……何?」 「カシワギ先輩、元気?」 こんな聞き方しか出来なかった。 「なんでそんなこと聞くの?」 「この間、バッタリ会って……。」 「じゃあ、元気だって、わかってるじゃん。」 「そ、そうだね……。」 ハルマは押し黙った。 「ハルマ、俺は……ハルマのこと大事に思ってるから、困ってることがあったら、ちゃんと言ってほしいな……。」 ハルマがハッとした顔でこちらを見た。 「……リョウスケ……実は……。」 ハルマは、その日のことを話し始めた。 「先輩の手伝いをするために倉庫に入ったら……キスされたんだ……。それで……リョウスケに、知られたくなかったら……デートしてくれって……。」 俺は拍子抜けした。 「……キスはさ……前もしてたから……今更俺が知っても、何にもなくない?」 「え……だって、2回目だよ。ダメでしょ?」 「1回も2回も、同じじゃない?」 ハルマは固まっている。 「……じゃあ、デートは……?」 「それは……体の関係はあり……だよね?」 「……うん……。」 俺は妄想した。 カシワギ先輩の剣道で鍛えた筋肉美。 ハルマを脅してまでヤりたいんだ、かなりたぎっているんだろう。 デートでは王子様のように。 ホテルでは野獣のように。 ハルマのこの様子なら、俺のことを想って嫌々応じるんだろう。 それを知りながらもハルマを抱くカシワギ先輩! ガンバレ先輩! 「リョ、リョウスケ??」 俺はハッと意識を取り戻した。 「ご、ごめん!いや、ちょっと、色々考えちゃって。」 ハルマが訝しげな目でコチラを見ている。 「あ、うん。わかった。事情はわかったよ。」 俺は深呼吸した。 「カシワギ先輩は、ハルマの体だけが目当てじゃないんだよね?」 「え?あ、ああ……。どうなんだろう……。たぶん、好きではいてくれる……。」 「それなら、しょうがないよ。好きな人とは、エッチしたいよ。」 「そうだけど……。」 「デートだけして、ホテルに向い始めたら俺とバッタリ会ったことにすればよくない?そこで俺たちが仲良くすれば、先輩も諦めるんじゃないかな。」 「……あ……うん……。」 ハルマが微妙な顔をする。 「まだ、先輩とは残り半年付き合いがあるし、先輩は受験だから、あんまりことを荒立てたくないしさ。」 タツオミから言われたことを、俺も少しは気にしていた。 「本当に……ちゃんと来てよ……。」 「当たり前だよ。俺はハルマの恋人なんだから。」 そう言って、俺はハルマにキスをした。

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