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第48話 駅裏のラブホ
テーマパークの出口に向かう。
みんな、電車の時間に合わせて帰るので、一気に人が動いた。
写真を撮るために急に立ち止まる人もいて、あろうことか、二人を見失った。
「やばい!見失った!」
「ハルマから連絡は?」
メッセージを確認すると、今、駅のトイレらしい。
「え……まさか駅のトイレでしちゃうってこと……?」
「バカ!駅のトイレからメッセージしてる、ってことで、現在地を知らせてんだろ。」
「あ、そうか!」
「お前の頭の中、ちょっとヤバいよな。」
気を取り直して、続きのメッセージを読む。
駅裏のラブホに行くらしい。
「よし!待ち伏せよう。」
ハルマに教えてもらったラブホに向かった。
――――――――――――
「部屋の希望ある?」
カシワギ先輩に聞かれた。
「えっと……。」
リョウスケにラブホの名前を教えたのに、会えていない。
「……先輩はどういうのが好きですか……?」
少しでも時間を稼ごう。
「うーん、部屋の雰囲気は割と何でもいいんだ。お風呂でイチャイチャするのも好きだから、この広い部屋がいいかな。」
そう話してると、他のお客さんが入ってくる。
二人は避けつつも、カシワギは、他のお客さんとハルマの間に入って、ハルマが見られないようにする。
他のお客さんもジロジロ見てくるわけじゃないが、男同士であることをカシワギ先輩は気を遣ってくれているようだ。
「早く決めないと、部屋無くなっちゃう。さすが、テーマパークの近くだね。」
「そうですね……。」
もう一度、部屋のレパートリーを見る。
「手頃な部屋はもう無いし、カラオケとかは要らないから、あとはこのお風呂が充実してる部屋と、鏡ばりの部屋しかないよ。僕は、鏡の部屋でもいいけど?」
カシワギ先輩が笑って言う。
「は、恥ずかしすぎるので……お風呂の部屋で……。」
部屋が決まってしまった。
―――――――――――――
「リョウスケ……本当にこのホテルなの?人の気配ないけど。」
二人は物陰からホテルの入り口を見張っていた。
「だって、地図アプリも看板も……あのラブホの名前だよ?」
タツオミはちょっと考えて、ずかずかとホテルに向かって歩き出した。
慌てて後を追う。
入り口に張り紙があった。
「……リョウスケ、やばい。こっちのホテル、移転前だ!」
慌てて張り紙にある移転後のホテルの場所を確認する。
「ど、どうしよう!」
待ち伏せに結構な時間を費やしてしまった。
「……俺が道順調べるから、その間に電話してみたら?」
タツオミに促されて、スマホを手に取った。
「そうだね……!時間稼ぎになれば……!」
コール音がする。
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