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第50話 慰め
タツオミの道案内に沿って、スマホを片手に走ってホテルに向かっていた。
電話の向こうで悲鳴が上がった。
「ハルマ?ハルマ!?」
何も聞こえなくなった。
「……リョウスケ、大丈夫か?」
「だ、大丈夫じゃない……。」
ホテルに着いた。
部屋番号はメッセージで届いていた。
「俺一人で行ってくる……。」
「ああ……。」
「今日、付き合ってくれて、ありがとう……。」
「……がんばれよ……。」
ホテルに入った。
部屋の前に行き、呼び鈴を押す。
もう、ハルマは……やられてしまったんだと思う。
俺が、今日のことを知っておきながら、止めなかったから。
ハルマ……ごめん……。
ドアが開いて、カシワギ先輩が出てきた。
上半身裸で、ズボンを穿いている。
「……今更、何の用……?」
怖い。
いつもの優しいカシワギ先輩とは別人だ。
「……ハルマ……いますよね。連れて帰りたいです……。」
「……ダメだよ。今日、ハルマは1日僕と一緒にいる約束なんだ。」
「………………。」
「チェックアウトまで時間がある。まだ一回しかしてないんだから、すぐには帰らないよ。」
やっぱり……一回は……しちゃったんだ……。
罪悪感が込み上げてくる。
「リョウスケは、これから何回でもハルマとやれるじゃん。今日くらい、ハルマをちょうだいよ。まあ、もう食べちゃった後だけど。」
「でも、もう、ハルマは、一回終わったなら、その気じゃないんじゃないかと……。」
カシワギ先輩はムッとした顔をした。
「ハルマが、もう僕を欲しがってない……って言いたいの?」
「え!あ!そんな深い意味はなくて……その……。」
火に油を注いでしまった。
「いいよ、中入りな。」
先輩は、部屋の中に入れてくれた。
ハルマは、布団を被って、横になっていた。
「ハルマ……。」
駆け寄って、ハルマの顔を見る。
「リョウスケ……ごめん。」
ハルマは泣いている。
「俺こそ……ごめんね……。」
「リョウスケなら、その泣いてるハルマもその気にさせられるの?」
カシワギ先輩がソファに座って、こちらを睨んでいる。
「え?いや、え?」
「僕だって、ハルマをレイプしたかったわけじゃない。1日だけ、恋人になって欲しかったのに……。」
カシワギ先輩は視線を落とした。
「……は、はい……。」
「責任持って、ハルマを慰めてあげなよ。」
「え?」
「この場を貸してあげるから。」
「え?ここで?」
「どうせ、帰ってからするなら、いいよ、ここですれば。」
「せ、先輩は何してるんですか?」
「僕のことはいいからさ……ハルマを……慰めてよ……。」
カシワギ先輩の提案は奇妙だったが、ハルマのことを考えているようだった。
「……ハルマ……いいかな?」
ハルマは小さくうなずいた。
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