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第55話 リョウスケの好み

「こんなディープな話、ここでするのははばかられるよね。僕の家に行こうよ。」 「そ、そんな昨日の今日でホイホイ行くわけないじゃないですか!」 もう、俺の性的嗜好をハルマにバラされたところで構わない。 きっとそれくらいでは、ハルマもひるまないだろう。 それよりも、今先輩の家に行ったら、絶対に尻をやられる。 「……タツオミ君との関係を、ハルマにバラしちゃうよ?」 「は?」 「定期的にキスしてるんでしょ?」 「なんで……それを……。」 「メッセージの暗証番号、ハルマの誕生日じゃん。ラブラブだね。」 そうだけど! どんだけ見てんだ! ホント、俺の全てを握られてしまった…。 絶望しかない。 「いじめないから、大丈夫。」 先輩はにっこり笑う。 タツオミが悪魔に見えたときがあったが、こっちの方が全然上だ。 俺は、仕方なく先輩について行った。 ―――――――――――― 先輩の家は大きかった。 裏に道場があって、今も剣道をする声が聞こえる。 先輩の部屋は意外にジジ臭かった。 「亡くなったおじいちゃんの書斎をそのまま使ってるんだ。校長先生の部屋みたいでしょ?」 言う通りだ。 時代を感じる棚。 賞状やトロフィー。 いかつい机に勉強道具が乗っている。 部屋の雰囲気には似合わない、新しめのベッドとタンスがある。 応接セット的なローテブルとソファがあった。 さすがにソファは革張りではなかった。 座り心地の良さそうな、ふかふかなソファだ。 ソファに座るように促される。 言われた通りに座ると、横に先輩も座る。 緊張が高まった。 「部屋に色気が無いから、ここではエッチはしないんだ。」 良かった、ここではエッチはしないんだ……。 と、思ったそばから、腹を触られる。 「うわぁ!ちょっと!」 「お腹触っただけだよ。どうしたの?」 「先輩のスキンシップは、危険なんで……。」 「せっかく筋肉のつけ方教えようと思ったのに。」 「え……。」 「検索してたじゃん。男の筋肉。」 それは…… ハルマと先輩の妄想をするための資料として……。 「リョウスケも背が大きくて、がたいもいいんだからさ、鍛えるといいよ。」 筋肉美に憧れはあるんだけど、自分がなりたいかというとそうでもないし、ハルマがムキムキも嫌だ。 そのあたりは、やっぱり体つきががっしりしてる先輩やタツオミに求めちゃうな。 先輩は、俺の手をとり、シャツをめくって自分の腹筋を触らせた。 ただ、男の腹を触っているだけなのに、ドキドキしてきた。 正直…… あんな出会い方だったし、ハルマが好きだと聞いていたから意識してなかったけど…… こうして見ると、先輩の顔と体が好みだった。 傾向が、ハルマと似ている。 顔が優しくて、体がエロい。 ハルマはそれが可愛い寄りで、先輩はそれがカッコいい寄りなのだ。 先輩は、それを見透かしているのか、自分のシャツのボタンを外して、はだけさせた。 俺の手で自分の体をなぞらせて、乳首まで持っていく。 先輩は俺の手を掴んだまま、俺の上に乗っかってきて、押し倒される体勢になった。 「僕のためにデートを許したなんて、さっきは信じられなかったけど、ハルマやタツオミが君を好きなのは、そういう優しいところなのかもね。」 先輩が、ふと儚く笑った。 わかってきた。 俺は、ハルマもタツオミも同じ。 そういう悲しげな、切なげな表情をされると弱いんだ。

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