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第57話 三月

スマホを無事に返してもらった。 「僕の連絡先、入れといたから。」 俺のプライバシーって……。 昨日、今日と、世界が変わりすぎだ。 久々にスマホを触る。 ハルマにも大丈夫(?)だったことを伝え、タツオミにも改めて感謝のメッセージを送った。 俺……このままじゃ、勉強できない。 本気でそう思う。 ちゃんと、二人にも俺の決意を伝えて、協力してもらおう! ―――――――――――― 翌日から、またちゃんとランニングを始めた。 そして、またばったり川原でカシワギ先輩に会ってしまう。 だからといって、自分の習慣やコースは変えたくなかった。 「リョウスケの目指してる大学、僕の第一志望校なんだ。」 「そうなんですか?!」 「小学校の先生になりたいんだ。」 「…先輩みたいにエロい人が、先生になっていいんですか?」 「ショタでもロリでもないから、いいでしょ。」 「高校生に手を出してるじゃないですか。」 「今は同世代だから、いいんだよ。」 ちょっとからかって話はしたけど、先輩が先生なのは似合っていた。 「なんで先生になりたいんですか?」 「道場で子どもたちに教えるのが楽しかったってのが一つ。二つ目は、俺がゲイで、子どもをもうけられないから。その分、子育てしてるお父さん、お母さんの力になりたいんだ。」 先輩は深呼吸した。 「リョウスケの将来の夢は?」 「まだ…具体的には…。海外に興味はありますけど…。」 「エロ小説書いたら?」 「いやいや!まだ、俺女の子と付き合ったことないんで。」 「あんだけ読んでたら、経験無くても書けるんじゃない?」 「言う程読んでませんから!」 早朝から変な話になった。 バカバカしくて、二人とも笑った。 「ひと足先に受かって、待ってるから。」 そう言って笑った先輩は、朝日に照らされてカッコ良く見えた。 勉強会も、教え合いより、自習時間が増えていった。 タツオミ曰く、力がついてきている証拠らしい。 ある日、タツオミからメッセージが来た。 予備校で彼女ができたらしい。 同級生だ。 タツオミなら、彼女を大事にするはずだ。 おめでとう、と送った。 自然とキスもしなくなった。 ハルマとは相変わらず、勉強して、遊びに行って、時々エッチをして、普通の恋人同士になった。 カシワギ先輩も、ハルマには手を出していないらしい。 約束は守ってくれているようだ。 ―――――――――――― 3月になり、タツオミが今までの俺の頑張りを総括してくれた。 「勉強の仕方は大丈夫だよ。模試も手堅く取れてるし。得意科目がいつもよく取れてるから強いね。あとは、国語と数学だ。特に、国語は二次試験の科目だから、頑張んなきゃね。」 タツオミに認められるとやっぱり嬉しいし、頑張ろうという気になる。 カシワギ先輩も合格した。 なんだかんだ、朝のランニングで定期的に会って会話をしていた。 お祝いにボールペンを贈った。 地元の大学で実家から通えるが、あえて一人暮らしするそうだ。 就職後に自活できるよう練習する……という名目だが、やはり彼氏を連れ込みたいらしい。 遊びに来て、と言われた。 その目的を聞いた後では行きづらい。 ハルマとは、2泊3日で旅行を企画した。 逆算すれば、一番今が精神的に余裕がある。 ハルマと思い切り楽しみたかった。

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