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第59話 春休み旅行
旅行先には昼頃に着いた。
知り合いがいないこの旅行で、俺はカシワギ先輩のデートスキルを練習しようと思っていた。
ハルマにやってあげたい気もするし、万一彼女ができたときに備えよう、という魂胆だ。
そう、俺は、タツオミのノロケ話を聞いているうちに、女子への渇望が復活していたのだ。
あくまで妄想上だけど。
妄想であっても、ハルマのNTRを妄想しているよりは健全だろう。
その土地の有名な飲食店に入る。
歴史的にフランスとの交流が多かったらしく、フランス料理のお店が多い。
さらにりんごの名産地で、このお店は料理もスイーツもりんごづくしということで有名だった。
ハルマはりんごパスタを頼み、俺はりんごカレーを頼む。
「もっと甘いかと思ってたけど、そんなことはないね。りんごは感じるけど、思ってたより料理に合う。」
俺はそれなりに満足した。
ハルマは微妙な顔をしている。
「交換する?」
「じゃあ、ちょっと、いいかな……。」
お店の人に悪いので、そそくさと交換する。
パスタも悪くない。
俺が大雑把な味覚のせいなんだろう。
ハルマも、カレーは食べれていた。
一口を食べさせる「あ〜ん」もやってみたかったが、今回はチャンスがなかった。
―――――――――――
さて、午後は謎解きイベントだ。
城跡の敷地に散りばめられた謎を解く。
ちなみに、暗証番号は変えた。
あの日速攻変えた。
ハルマが、問題を読みながら、あれこれ考えてサクサク進む。
もう、俺はただの付き人だ。
この地域の桜は5月だ。
桜並木が素晴らしい観光名所なのだが、その時期は観光客でごったがえすので来るにはハードルが高い。
ただ、整えられた庭は清々しく、その時期の色とりどりの花々が綺麗に咲いていて心が安らいだ。
ハルマは謎解きブックを持っているので手を繋げない。
ここでもデートスキルは発動出来なかった。
―――――――――――
夜は有名店のラーメンを食べる。
二人で同じのを食べるから、あ〜んは必要ない。
この半日、ただの友達でもいいようなデートになった。
よく先輩はあれだけのことがやれたなと感心する。
「カシワギ先輩とテーマパーク行ったのは楽しかった?」
ラーメンをすすりながら聞いた。
「え?なんで今更そんなこと聞くの?」
「まあ、先輩は楽しそうだったから、ハルマはどうだったのかな、って。」
「俺が先輩を好きか、女の子だったらいいんじゃないかな。」
「そっか……まあ、そうだよね。」
ハルマとしては胸キュンはしなかったんだろう。
「俺も……ああいうことができたらいいかな?」
「ああいうこと?」
「いつでも、さりげなくイチャイチャできるスキル。」
「ええ……。リョウスケは、やらなくていいんじゃない?似合わないよ……。っていうか、先輩が特殊なんじゃないかな……。」
「それもそうだよね。あの人を見習ってたら大変なことになる。」
ラーメンの汁を飲み干しながら納得した。
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