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第69話 リョウスケの欲求
大人の勉強会…
そんな淫靡な言葉の響きに、俺はついつい胸が高鳴ってしまった。
先輩の家に来たのは2回目だが、2人暮らしの雰囲気が羨ましかった。
先輩は、学校で会ったときは大人っぽく見えたし、ラブホの時は怖かったけど、ヒビキさんといると先輩の優しいバージョンのオーラが出ている。
ハルマとボランティアしたときはこんな感じなんだろう。
ヒビキさんはカシワギ先輩を包み込むような感じ。
2人の距離感は、やっぱり恋人だ。
今日は洗濯物も干しっぱなしだった。
パンツにワイシャツ…。
こっちのドアの向こうは寝室だよなぁ、と思うと、2人のことを色々妄想してしまう。
だって、あの先輩が、エロいことをしないイメージがない。
先輩はどっちなんだろう。
ヒビキさん次第なんだろうけど、ヒビキさんはタチっぽい。
あのラブホでの強気な先輩が…と思うと、こちらもモジモジしてくる。
ハルマとは、あれから何回か俺の尻もチャレンジしてる。
やれなくはないが、ハルマがあまり乗り気じゃないように見える。
あくまで俺のため…のようだった。
俺は俺で、ハルマの気持ちは嬉しかった。
ただ…
もっと…
ガシガシやってほしかった!
ハルマにも伝えてみるが、ハルマはやっぱり優しいから限度がある。
無駄に欲求不満を抱えてしまった!
尻の可能性を知らなければ、こんな気持ちにはならなかったのに!
そんなアホな俺に残された選択肢は……
カシワギ先輩だ……
危険なのは十分承知だが…
俺は複雑な気持ちで先輩を見つめてしまった。
「…リョウスケ…今度は何を妄想してるわけ?」
なぜかバレた。
先輩は冷ややかな目をしている。
だから、どうして、より変態な先輩から蔑まれなくちゃいけないのか。
「べ、べつに!何も、考えてませんよ!ただ、同棲が羨ましくて…。」
「大学入ったら、一人暮らししたら?」
「したいですけど……金銭的に難しいので、ハルマとのルームシェアがギリギリかな……って……。それも、まだ家族には言えないですけど……。」
受からないことにはね……。
「僕も、前に見てもらった通り、実家は人の出入りが多くてプライバシーが無いから、一人暮らしは絶対したかったんだ。そこは親も理解があって話は進んだし、たまたまヒビキが拾ってくれたから、良かったんだけど……。確かに、普通に考えたら、一世帯分のお金を出すのって大変だよね。」
「うち、親父が大工なんです。母親も親父の手伝いをやってて。俺の家系で大学行った人、いないんですよ。だから、勉強もそうだし、お金のことも全然わからなくて……。ホント……先輩やヒビキさんに教えてもらえて 助かってます。」
話してくうちに、みんながいたからこそ、それなりにまともにやってこれたことを実感した。
一人暮らしやルームシェアにはものすごく憧れはあるけど、実家暮らしでもしょうがない。
まず第一志望校に受かれば、ハルマと離れ離れにはならないだけいいかな、と思えた。
思えば、タツオミも、先輩もヒビキさんも、ハルマが繋いでくれた縁だ。
自分が頑張ればどうにかなるとこだけ考えよう…。
そう思ったときだった。
「……リョウスケって、可愛いよね。」
そう言って、先輩がキスをしてきた。
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