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第78話 おまけ 台湾旅行1日目
学校に慣れて来た5月、ヒビキさんとカシワギ先輩からのお礼ということで台湾旅行が決まった。
カシワギ先輩とヒビキさんは台湾に何回か行っているらしく、ガイドはカシワギ先輩がやってくれるそうだ。
渡航費、宿泊費はヒビキさんが持ってくれるとのことで、だいぶ破格でいける。
ヒビキさんは会社の仕事で行くので、行き帰りの飛行機と宿くらいでしか一緒になれない。
残念だけど、仕方なかった。
♢♢♢
ヒビキさんの車に乗せてもらい、空港に着く。
ハルマとヒビキさんも楽しそうに話している。
なんか、こう、新しい組み合わせだ。
ヒビキさんの穏やかな雰囲気には甘えたくなる。
ヒビキさんなら、俺一筋のハルマをもメロメロにして奉仕させちゃいそうだ。
飛行機に乗り、ハルマを窓際にしてあげる。
俺たちは飛行機が初めてだった。
「なんか、わくわくするね。」
ハルマが子どものように笑う。
それが可愛くて、思わずここでキスしそうになった。
飛行機が飛び立つ。
みるみる地上が小さくなっていった。
♢♢♢
あっという間に台湾に着いた。
意外と近い。
風景は沖縄と東京を合わせたみたいだ。
そして暑い。
もう上半身裸で歩きたいくらいだが、現地の人で長袖のスーツの上着を来ている人もいて驚いた。
1日目は、まず台北市内でお昼を食べ、中正紀念堂へ行く。
市内はバイクがひしめき合っていて、歩道にズラリとバイクが並んでいた。
なぜか、カシワギ先輩はハルマが人にぶつからないようにエスコートして歩く。
ハルマはさ、大学生だよ?
知ってると思うけど。
お昼は定食屋さんで台湾のソウルフード、ルーロー飯を食べる。
肉の旨みがジュワッと来て、男子向きの味だ。
ジャンクな感じがたまらない。
「ハルマ、タレがついてるよ。」
と言って、先輩がハルマの口を指で拭ってあげる。
「いや、言うほどついてないですから!ハルマは大学生ですよ!幼稚園児じゃないんで!あと、じっとハルマの口元を見るのやめてください!」
台湾まで来て何を言わせるんだ。
食堂から移動して、中正紀念堂に着いた。
台湾の蒋介石・初代総統を記念して建てられた広大な施設だ。
晴れたこともあり、青空に白い建物が映える。
中に入ると、先輩が解説してくれた。
「蒋介石は、孫文の死後、中国国民党を指導して中国に近代的な統一国家をつくったんだ。第二次世界大戦後に中国共産党との内戦に敗れて、台湾に逃げてきたんだよ。堂内の雰囲気はリンカーン記念堂を参考にしたんだって。壁面の大理石はリンカーン記念堂と同じものをアメリカから運んだらしいよ。」
「先輩……めっちゃ先生ですね……。」
つい言ってしまった。
「まあ、ハルマはわかってると思うけど、リョウスケの偏差値じゃ怪しいなと思って。」
「ええ。それは、そうです。」
先輩のにやにやした顔は憎らしいが、そればっかりはしょうがない。
♢♢♢
夕方になり、九份に向かう。
九份が、有名なアニメ映画のモデルの村ということくらいは知っていた。
たくさんの赤いちょうちんのライトがエキゾチックだ。
山肌を階段で上がっていく。
小さな屋台風のお店がひしめき合っていて楽しい。
それにしても階段がキツい。
男の俺でもちょっと苦しかった。
「やっぱり九份は夕方以降がいいよ。灯が映えて、幻想的だから。」
本当にそうだった。
ついつい写真を撮りすぎてしまう。
「九份の怖い話聞く?」
先輩が得意気に言ってきた。
「そんなのがあるんですか?」
「昔ね、ツアーで来ていた日本人のおじさんが一人、神隠しにあったんだ。数日間いなくなって、見つかりはしたんだけど、その時の記憶が全くなかったんだって。」
「……そんなに怖くないじゃないですか。」
「話で聞けば怖くないけど、たとえばここでハルマが行方不明になって、記憶が無くなって帰ってきたら、怖いでしょ。」
たしかに、現実にそんなことがあれば怖いか……。
「じゃ、ハルマは誘拐されないように僕と手をつなごうね。」
「だから!ハルマは幼稚園児じゃないんで!」
油断も隙もない。
「ハルマも!先輩のセクハラが嫌だったら、ちゃんと言わないとダメだよ!」
「あ、うん……。でも、今の話は怖かったな……って……。」
そうだった。
ハルマは怖い話が苦手なんだ。
「ま、俺と手を繋げばいいだけだから……。」
俺はそっとハルマと手を繋いだ。
怖がってるハルマも可愛い……。
俺が誘拐犯なら、最初はその予定じゃなくても、ハルマを見ていたらムラムラしてエッチなことをしてしまうだろう……。
手足を縛って……
嫌がるハルマに奉仕させて……
泣き叫ぶハルマに無理矢理……
「リョウスケ……顔!」
先輩に頬をつねられる。
うん、妄想してる時の俺の顔がやばいのは自覚がある……。
♢♢♢
九份には、ヒビキさんと宿を提供してくれる陳さんが車で迎えに来てくれた。
陳さんはいかにも好青年、って感じだ。
ヒビキさんが大学時代にオンラインで日本語教師のバイトをやった時に知り合ったそうだ。
今は事業家で、日本に遊びに来たときはヒビキさんが世話をしているらしい。
陳さんは日本語ペラペラだ。
「すごく日本語、お上手ですね。」
「それはネ、私のおじいちゃん、おばあちゃんの時代に日本が台湾を統治していたからなんだヨ。だから、私は家庭で日本語を習える環境だったんだ。」
統治……と聞いて、ちょっと緊張した。
センシティブなことに触れてしまった。
「おじいちゃん、おばあちゃんはネ、日本が統治してくれたから教育が行き届いて、インフラが整って、治安が良くなって、感謝してるって言ってたんだ。だから、台湾の人はネ、日本に感謝してる人が多いんだヨ。」
そう言われて、ホッとした。
♢♢♢
陳さんのお家はまさにお屋敷という感じで、大きかった。
夕食は陳さんの奥さんが作ってくれたおもてなし料理だ。
台湾ビールと一緒にいただく。
台湾での飲酒は18歳からだから堂々と飲める。
ハルマはビールは元々ダメみたいだから付き合う程度。
先輩は結構酒好きみたいで、大分ペースが早い。
その分、ちゃんと酔ってるけど……。
ヒビキさんは、陳さんに勧められて、飲むは飲むがザルのようだ。
かなり強い酒も出て来たが、サラッと飲み干しても何も変わらない。
陳さんの息子二人とも、台湾について色々話を聞く。
二人とも中学生だが、勉強は大変らしい。
台湾は小さな島国だから、海外で働くのも当たり前の選択肢で、それを見越して勉強するらしい。
小学生の勉強時間が10時間と聞いて驚いた。
「台湾は少子化もあって、日本と同じような問題が多いんだ。いずれ、日本人が海外で出稼ぎの時代も来そうだね……。」
先輩が酔っ払いながらも言った。
♢♢♢
お風呂を勧められて、ハルマ、俺、先輩、ヒビキさんの順番で使わせてもらうことにした。
ヒビキさんは陳さんと話し込んでいて、しばらくかかりそうだった。
ハルマがお風呂に行き、ふと見たら下着を持って行き忘れてる。
大したことじゃないけど一応持っていくか、と思い風呂場に向かうと、浴室から声がする。
「ちょっと!先輩っ!順番守ってくださいっ!」
「いいじゃん!男同士でお風呂に入るのは普通だよ!」
先輩が脱衣所に押し入ろうとしている。
ハルマは上半身は裸だが、まだズボンは履いていた。
ギリギリセーフ!
「先輩!先輩が一緒に入っていいわけないじゃないですか!」
俺は先輩を羽交締めにして、部屋に連れて行った。
また入浴中に乱入されると困るから、先輩の部屋に一緒に行って、ハルマが戻るまで監視することにした。
「二人なんて余裕で入れる広いお風呂だったのに……。」
「いやいやいや、先輩が一緒に入ったら、ラブホみたいになっちゃうでしょ!」
先輩はふてくされてベッドに横になりながら、動画を見始めた。
チラリと見ると、エッチな動画っぽい。
「……何見てるんですか?」
先輩の背後に近づいてスマホを覗き込む。
「ゲイビ。」
「げいび?」
「ゲイビデオ。」
そっか……。
先輩は女は無しだから、そうなるよね。
改めて思った。
「リョウスケはゲイビ見ないの。」
「見ない……ですね。」
言われてみればそうだ。
男はハルマ限定だから、動画も漫画も普通の男性向けを見る。
「ほら、5Pだよ。」
「5P?!」
思わず見ると、受け二人がすでにそれぞれ挿入されていて、攻めの二人はピストンしながら互いにキスをしている。
さらに受けの一人は挿入されながら、もう一人の男にフェラをしているのだ。
「……ここまで来ると……面白いですね……。」
なんか、興奮するような、怖いような、複雑な気持ちだ。
俺はまだ、完全にゲイではない……のかもしれない……。
「先輩は……そういうのが好きなんですか……?」
「そうだね。あんまりガチムチじゃないのがいいかな。」
まあ……ガチムチにやられまくる先輩……はありだと思いますけど……。
ふと、先輩の股間に目をやる。
あんな動画見てたなら……。
動画の続きを見ていた先輩の股間にそっと触れる。
「……何?気持ち良くしてくれるの?」
「あ……うん。先輩ならあれを見て、勃つんだろうなって……。」
先輩は起き上がると、ベッドの縁に座った。
ズボンのチャックをおろし、俺の手を掴んでパンツの上から触らせる。
「期待に沿えてる?」
「あ、はい……。」
先輩のを触っていたら、こちらも興奮してきた。
「鍵は閉めてるからさ、誰か来たらやめればいいじゃん。で?しごいてくれるの?咥えてくれるの?」
「……しごくのだったらいいですよ。」
先輩はパンツからポロリと出して、俺に掴ませる。
先輩が服をたくしあげたので、腹筋が見えている。
腹筋をじっとみながらしごいていく。
「あ……はぁ……。」
先輩が気持ち良くなっているのを見て、上半身を押し倒した。
服をさらにたくしあげ、乳首を舐める。
「んぁっ!」
……
…………
………………
先輩は喘ぎながらイッた。
息を切らせてティッシュで拭いている。
一体、何なんだこの時間は……。
やっておきながらそう思った。
「どうせハルマともやるんだろ?陳さんに迷惑かけないように静かにやれよ。」
「それは!こっちのセリフです!」
だから、なんで変態の先輩から説教をされなきゃいけないのか。
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