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番解消したくて 1

 ハニワさんの面談に立ち会って、望まぬ番解消の処置が可能になったことを知った。  詳しい内容は面談で知らされなかったが、詳細を聞いてみたくて、昼休みを利用して怜央に電話した。    同日。20:00。  直接会うことになり、Rubyの店内で待たせてもらった。 「お待たせしました」  隣に爽やか笑顔の怜央が現れた。 「すみません。わざわざ来て頂いて」 「お気になさらず。それで聞きたいことがあるとか」 「はい。……番解消手術について聞きたくて」 「なるほど。そのことについてですが、2階の個室で話しませんか」  Rubyは2階に個室がいくつかあり、空室は鍵さえ借りれば無料で利用可能となっている。  僕が頷くと怜央はマスターに声をかけて鍵を受け取った。  荷物を持ち席を立った怜央に続いて2階に向かい個室に入った。ソファに横並びで座る。   「なぜ番解消手術について聞きたいのか、教えてくれますか」 「はい」  ブラウスのボタンを4つ程外して、首輪を少しだけずらした。首筋に刻まれた噛み跡が露わになる。 「僕の相手もハニワさんと同じです」 「辱めを受けて、無理矢理番にされたんですか」 「はい。……こんなの望んでない。だから今日話を聞いて、出来ることなら番を解消したくて」  話していると思わず泣きそうになる。そんな僕を怜央が優しく抱きしめてくれた。 「辛かったね。大変だったよね。でも出来ることはある。郁美が望むなら、僕が直接手術するよ」 「怜央。僕、誰にも言えなくて。言ったら殺されそうで怖くて……」 「うん。大丈夫。手出しさせないよ。それに手術を受けたことは相手に知らされない。それより気がかりなのは妊娠してないかってことだよ。番になったのはいつ?それからどのくらい性交があったのかな」  縋り付く様に怜央のジャケットを握った。医師として聞いていることはわかったので素直に答える。 「番になって半年。性交は……週3ぐらいです」 「同意なしの性交?それとも同意したのかい」 「してません……でも逆らったら」 「叩かれる?」  見透かされてる様に言い当てられ、僕は静かに頷いた。そして番の名前が万羽和真(ばんばかずま)だということ。少しでも逆らったり意見を言おうとすると暴力を振るわれることを伝えた。  万羽との性交は全て同意なしに行われ、保護なしで妊娠することなんてお構いなしだった。  言葉にすることが怖くて誰にも話せなかったけど、怜央にはちゃんと話すことができた。 「今夜、帰る所はあるのかい」 「……万羽と住んでいるので」 「縁を切るつもりがあるなら、僕の自宅に来たらどうかな。部屋余ってるからさ」 「でも、そんな……迷惑かけられません」  良い人なのは前回と今日会ってわかった。だからこんな目にあった自分のことを放っておけないのだろう。 「迷惑なんかじゃないよ。本気で番解消するつもりなら、彼の元に帰らない方がいい。酷いことが待っているかもしれないよ」 「逃げて連れ戻されて、殺されるまで殴られる方が怖い」 「僕がそうさせないって言ったら?」  怜央の言葉から守ってくれようとしているのが、ヒシヒシと感じられた。  それでも甘えてしまって良いんだろうか。  

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