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決断の時、番解消 1

 朝一緒に目覚めて幸せな時間を過ごした。カーテンから降り注ぐ朝日に包まれて、朝食を食べた。  そしてお互い別々の職場に出勤する。  数件の面談と他職種への引き継ぎや会議を行い、忙しく時間は刻々と過ぎていった。  あっという間に業務終了時間を向えて、窓口の掃除や館内施錠を行い、ロッカールームで帰り支度をしているとスマホの着信音が鳴った。  とりあえず渡してもらった替えのスマホは着信音が今までと違っていて少し落ち着かない。  画面を確認すると、怜央と表示されていて、迷うことなく通話ボタンを押す。 「もしもし、秦です」 「加賀崎だよ。もうすぐ裏に迎えの車が来るから乗ってくれるかな。三木が研究所まで案内してくれるからね」 「ありがとうございます。すぐ裏に行きます」  ロッカーの鍵を閉めて部屋を出ると裏口に続く廊下を歩き、電子ロック解除を行って外へ出た。  地上駐車場の空きスペースで待機する。 「本当は僕が直接迎えに行きたかったけど、準備があるから。ごめんね」 「その気持ちだけで嬉しいです。ありがとうございます。あ、裏口から出て駐車場で待っています。では研究所で」  通話終了のタイミングを見計らったかのように現れた、黒のリムジンが車止めに駐車した。  後部座席が開かれると銀縁メガネでオーダースーツの男が降りてきた。男と目が合う。切長な目に意志が強そうな瞳が眼鏡越しに覗いている。 「秦様。お待たせ致しました。研究所へお送りいたします」 「あの、三木さんですよね」 「えぇ、改めまして三木隆利(みきたかとし)です。怜央様の秘書兼執事をしております。すみません。時間が迫っていますので、参りましょうか」  促されるまま慌ただしく車に乗り込む。走り出した車は颯爽と目的地へと進んでいった。  車内で殆ど話すことはなく、俯いて過ごしていると車がゲートを通過してそのまま降下した。  辿り着いた先は地下駐車場で、出入り口前に車が停車すると後部座席の扉が開かれた。  研究所に着いたのだと認識した途端に鼓動が高鳴る。 「秦様。到着しました。参りましょう」  優しい笑顔を携えた三木さんに導かれて、車を降り出入り口から研究所内に入った。  無機質な白い壁と滑りのいい床に出迎えられて、更に鼓動が早くなった。 「これから怜央様に会っていただきます。詳しくはそこで聞いてください」 「はい。ありがとうございます」  エレベーターに乗り込み、地下から研究所の最上階を目指した。  通路を歩いていると白衣を着た研究員達とすれ違い軽い会釈をされる。  三木さんと通路を進んだ先にある部屋の前に辿り着いた。 「この先が研究所長の部屋です」  三木さんが扉をノックすると優しい声で応答があった。  

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