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決断の時、番解消 2

「よく来たね。さぁ、座って話そう」  室内へ迎え入れてくれた怜央の口調はいつも通りだが、白衣を羽織っていて眼鏡をかけている姿は新鮮だった。眼鏡越しに綺麗な瞳と目が合う。  促されるままに応接ソファへ座った。怜央の部屋も病院みたいに無機質で壁や床も白を基調としていた。  家具は黒を基調としていて、モノクロ色の空間に身を置いている。 「早速だけど、手術による番解消の意思を確認させてほしい。今なら辞めることはできるけど、この後の精密検査が始まってからではストップ出来ないんだけどどうかな?」 「手術で番解消が出来なければ、僕は一生万羽に囚われたまま生きていくことになります。彼が自主的に解消してくれるとは思えません。だから僕の意思は変わらないです」 「わかった。辞めるとは思っていなかったけど、一応形式的なものだからね」  その後も怜央から受け取った書類を読みながら話を聞いた。 「次はリスクについて話すね」    書類には様々な手術に関することが記されていた。その中で気になったのは、手術後に再び番関係を築くことが出来るということ。しかし手術による二度目の番解消は出来ない。  その為、手術後に最新のチョーカーの付与が義務付けられているようだ。 「つまり二度目に番解消を行う場合は、αの同意を得た上で解消するか、αの死亡のみでしか出来なくなる。オペによる解消を二度は出来ないんだ」 「次に番となる時はちゃん相手を選ばないといけないですね」 「郁美や希望者の様に無理矢理番にされない為にも、最新のチョーカーが付与される」  チョーカーの構造が細かく記された書類からもわかるように、無理矢理外すことは困難で幾重にもロックがかけられている。  Ωの意思無くして解除はできない代物らしい。 「このチョーカーはまだ市場には出回っていないですよね」 「莫大なコストが掛かるせいで販売価格が高くなるから、まだ実験でしか用いられていないんだ」 「これが広まればもっと多くのΩが救われることになります」 「補助金が出る等の支援があれば実用化可能だと思う。そのためまずオペを受けた人を対象として、チョーカーを付与しているんだよ」  刻々とバースに関する研究が行われ新たな発見がなされている。  僕が手術を受けチョーカーを付けて生活することで、役に立てるなら貢献したい。一人でも多くの人がバースのことで不幸にならないためにもできることはしたい。 「僕を役立ててください」 「ありがとう。では改めてオペを受ける意思があるならここにサインしてくれるかな」 「はい」  誰かの役に立てて、万羽との縁が切れるなら僕は迷うことなくサインする。  これからどうなるかは分からないけど、少なくとも良いものになるだろう。  そう願ってサインした書類を怜央に渡した。          

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