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新たな人生と将来の約束 1

 チョーカーの調整が終わり、怜央は頸の傷が塞がったことを確認して抜糸を行った。明日には帰れるらしい。  でもどこに帰れば良いのだろう。万羽と過ごしたマンションには戻れない。ホテルに泊まろうと思っても現金の持ち合わせがそんなにない。 「郁美。心配しなくていいよ。今後のことは一緒に考えよう。僕はもうオフだからいつ迄だって付き合うよ」 「ありがとうございます。ここから出たら僕は何処に行けば良いでしょうか。万羽と住んでいたマンションには戻れません」 「それなら僕のマンションに来ればいいよ。一緒に住もう」 「そんなことまでお世話になるわけにはいきません」  嬉しい申し出だけど、これ以上怜央に面倒や迷惑はかけられない。新たな人生を歩むきっかけを与えてくれた彼には感謝してもしきれない。 「迷惑とか思わなくていいよ。僕がそうしたいんだから」 「どうしてそこまで良くしてくれるんですか」 「何も思わない相手にここまでしないよ」 「可哀想だから同情のつもりだったのではありませんか」 「可哀想な人に出会う度、僕が自分のマンションに泊めていると思うの?」  怜央は今までにみたこともない悲しそうな表情をしていて、胸が締め付けられた。  確かに親切心や同情心があったとしても、自分のテリトリーに何とも思わない知らない人を泊めたりしないだろう。  だったらどうして泊めたりしたのだろうか。 「僕には怜央の言いたいことがわかりません」  優しく親切に関わってくれるのは同じΩならよくあることだが、αは見下し横柄で親切とは程遠かった。  怜央はちゃんと優しく向き合ってくれる。 「君が好きだから」 「僕のこと何も知らないのに」 「BARに入ってきた郁美を見た瞬間、雷に打たれた様な感覚が走り、見惚れて目が離せなかったんだ。一目惚れはあの時が初めてだったよ」  真っ直ぐに向けられた好意は嬉しかったが、僕には不釣り合いな気がして素直に喜べなかった。こんな思いのまま怜央の部屋に住むのは、彼に悪い気がする。 「僕を好きでいてくれるのは嬉しいです。でも僕には答えられません」 「じゃあこれからどうするつもりなの?」 「ホテルにでも泊まろうかと思っています」 「ずっとそうして生きていくつもりなのかな」  心配してくれている気持ちは嬉しいけど、万羽が怜央に何かしたら僕は生きていけない。 「僕と一緒にいたら万羽が貴方に何かするかもしれません」 「だからまた彼に捕まって囚われた生活を送るつもり?それじゃオペまでした意味がないよ」 「逃げたいけど貴方に何かある方が耐えられません」 「僕が万羽に負けると思うのかな」  頭を優しく撫でる怜央は心配そうに目を細めていた。  本当は甘えたい。助けてと言いたい。もし僕がそんなことしたら、怜央は何がなんでも助けようとしてくれるはずだ。  

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