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*身も心も合わせて 8
全身を温かいものに包まれる感覚が気持ち良くて身を任せて、髪を梳く手の心地よさに目を薄ら開いた。
最後に意識を手放した場所はベッドの上だった。けれど独特の浮遊感と背中に感じる人肌から別の何処かだろうか。
「ん……」
「郁美。起きたね。良かった」
「ここは?」
「湯船の中だよ。精液が体中についていたからね。それよりも意識消失するまで抱いて、無理させたかな」
まだぼんやりしていた意識が怜央の言葉でクリアになった。
ヒートした僕は初めて彼とセックスをした。それも一度や二度じゃない。何度も絶頂を迎えて、最後は射精なしに達し続けた。そして限界がきて意識を手放したのだ。
カーッと顔が熱くなり鼓動が早鳴る。恥ずかしすぎて怜央の顔が見れない。
「ごめんなさい。あんな痴態を晒すなんて……気持ち悪かったでしょう」
「気持ち悪くない、可愛かったよ。愛おしい」
脇の下から腕が回されて、優しく抱きしめられる。首筋にキスが落とされた。こんな充実した時間を過ごせるのが、幸せで怖くもあった。
「あんなにヒート中、満たされたの初めてです」
「気持ちよかった?」
「……はい。でもあんまり怜央を良くできなかったです」
僕は沢山イカされたけど、怜央は挿入以外で達することはなかった。もっと彼を感じさせたくて手で奉仕しようとしたが、結局は僕が感じさせられてしまって中途半端だった。
「そんなこと気にしなくていいのに」
「だって僕だけ満たされるのは嫌だから」
「そういうところも愛おしいよ。気になるなら今度は僕を沢山イカせてね」
耳元で囁かれてチュッと触れるだけのキスを頬に受けた。怜央を満足させられるだけのテクニックは無いけど、一緒に気持ち良くなりたい。その為にはどうすればいいだろうか。
「でも僕はテクニックがありません」
しょんぼり伝えると髪をサラサラと撫でられた。
「僕と一緒に少しずつ出来るようになればいいよ。それにキスだけでも気持ちいいでしょう」
「怜央のキスは気持ち良くておかしくなります」
「よかった。これからも沢山しようね」
頬にキスを落とされて顎を手で掬い取られると、斜め上に仰ぎ見るような角度で怜央の唇に塞がれた。
唇に伝わる怜央の唇はとても温かくて、啄むように動くだけで気持ちがいい。
腰から上に駆け巡るような疼きが湧き上がる。
「ん……怜央」
「ねぇ、キスだけで気持ちいいでしょう。こうやってくっついてるだけで郁美の体温や肌を感じられて、心地いいし気持ちいいんだよ」
繰り返させるキスに薄く口を開くと舌が入ってきた。深く痺れるようなキスはイキそうになるくらい気持ちがいいのだ。
「んん、っふ、ん……う、ん」
巧みに動く舌が上顎や歯列をなぞり、舌を絡ませて少し強く吸われる。懸命に舌を絡ませて答えようとするけど、息継ぎする暇もなく繰り広げられるキスに翻弄された。口の端から唾液が垂れ流れる。
つい抱かれた時の熱を思い出しそうになった。
そしてやがて長く続いたキスが離れていった。名残惜しさを感じながら、口と口を繋ぐ銀色の糸をぼんやりと眺めた。
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