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知らない世界の揺さぶり 2

 三木さんの迎えで車に乗り会場となるホテルにやってきた。  案内されて訪れた会場にはたくさんの人達がいて、怖気付きそうになる。  受付を済ませた怜央に腰を抱かれたまま、颯爽と会場入りする。    煌びやかなシャンデリアと広すぎる会場は、場違いな雰囲気で呆気に取られた。 「郁美。大丈夫。僕の隣に居て」 「はい。緊張で膝が笑ってますけど……頑張ります」  会場には同じΩだけでなくαも沢山いて、凄まじい匂いと雰囲気に膝がガクガクと震えた。  怜央の匂いは優しく雰囲気も威圧感がないのに対して、他のαは威圧的な雄の匂いを漂わせていた。 「今から主催者に挨拶しにいくよ。ほら着いてきて」  曲げた肘を差し出されて、そこへ手を添えた。そのまま怜央に連れられて、会場の中心へと向かう。 「加賀崎先生。いらして下さったんですね」 「こんばんは。お招きいただき有難うございます。あれから体調は如何ですか?」 「お陰様で外来に定期受診へ通うまでになりました。その節は大変お世話になりました。所でそちらの彼は?」 「彼は私の婚約者です。美しく清らかな彼にゾッコンでして…」  怜央は慣れた様子で立ち振る舞い、リップサービスで婚約者だと紹介してくれた。心底惚れていると堂々と言われたら、恥ずかしくて顔が熱くなる。 「加賀崎先生が大切なお相手を連れてきて下さって嬉しいです。末永くお幸せに」 「ありがとうございます。|四宮《しのみや》さんもパートナーとお幸せに」 「はい。ではまたパーティーの後でご紹介させてください。そろそろ始まりますのでお楽しみください」  そう言って軽く会釈した彼に続いて、怜央も僕も頭を下げその場から離れた。 「何か飲もうか。シャンパン貰いに行こう」 「はい」 「ごめんね。急に婚約者だなんて嫌だったよね」  申し訳なさそうな表情で謝られてしまった。嫌なんかじゃない。堂々と言ってくれて嬉しい。  怜央が好きだし一生共に居たいと思っている。いずれはと考えていたけれど、生まれも育ちも違う僕達が結婚していいものかと、どうしても不安は残る。 「嫌じゃないと言ったらどうしますか」 「より愛おしくなるよ。君が好きだから改めてプロポーズさせて欲しい。だから今はとりあえずパーティーを乗り切ろう」  小さく頷いて差し出されたシャンパングラスを受け取った。  暫くして司会の進行でパーティーが始まり、立ったまま乾杯してシャンパンを口にした。飲みやすくて次々と口に含んでいく。 「おかわりはいる?」 「いいえ。おかわ……」 「やぁ。こんばんは。加賀崎先生」  僕達の会話を遮るように聞こえてきた低音ボイスに視線を向けると、イケメンの男性と隣に可愛らしい女性が立っていた。  2人の視線がこちらに向けられるが、すぐに逸された。 「少し話せるかな」 「ここで話を聞くよ」 「いや。彼は少し席を離せないかな」  こちらに投げられた視線はとても冷たいものだった。怜央の腕から手を退け、後退りをしてしまう。万羽に似た怖い目から逃れたかった。 「郁美?」 「ぼ、僕は少し彼方に……」

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