36 / 47

*スイートな夜 1

 突然ホテル廊下の床にゆっくり降ろされたと思ったら、部屋の鍵を開けた怜央が、扉を押さえてキスをしてきた。  廊下に人が通るのもお構い無しに、濃厚なキスを施される。 「んん、ふぅ、ん……はぁう」  キスをされたまま室内に連れ込まれ、ドスンとベッドに降ろされた。スプリングが思った以上に効いていて唇が自然と離れる。 「怜央?」 「あの男に触れられたよね」  熱を帯びた視線を向けられて、手が体の輪郭をなぞるように這い回る。 「僕とあの男に撫でられるのとどっちが感じる?それとも他の男がいいかな」 「んん……そんなの居ません。貴方だけ」 「本当に僕だけ?Ωなら居るんじゃない。はしたなくて、どこでも腰を振るビッチだから……」  怜央が傷ついたような顔で僕を見ている。酷いことを言ったのは彼なのに。 「居ません。僕には……」 「じゃあ証明してよ。今すぐ服を脱いで裸になって」 「え?」 「できない?僕には見せてもくれないのかな。それとも別の男と寝た痕跡でも残ってるの?」   今の怜央は全く優しくない。口調こそ荒々しく無いが、酷いことをばかりで言ってくる。でも彼をこうさせたのは僕だ。  恥ずかしいけど素直に蝶ネクタイを外して、1つずつボタンを外していく。  ベルトを緩めてズボンをずらして、下着に手をかけて脱いだ。肩にかかったシャツを外す。生まれたままの姿で怜央と対峙する。 「怜央。ごめんなさい……」 「僕をその気にして勃たせて。他の男にしてるみたいに出来るでしょう。そのかわり僕も他の女や男を抱く時みたいに郁美を扱うよ」 「嫌……触らないで!知らない……怖い」  聞いたこともないような冷めた声が怖かった。ガクガクと体が震えて膝から崩れ落ち床にへたり込んだ。  冷めた目で怜央が見下ろし、ズボンのチャックを下ろして、ペニスを取り出した。 「抱いてほしいなら咥えろよ。舐めて勃たせたら入れてやる」 「っひ……や、やだ……」 「嫌?すぐ裸になったんだから慣れてるんでしょう」 「慣れてません。ごめんなさい。もう許して……」  今の怜央は万羽を彷彿とさせる。彼との行為は一切愛がなく苦しくて痛かった。彼も僕をそう扱う気がして怖い。 「酷くしてください。それで貴方が許してくれるなら、僕は絞め殺されたって良いです」  体というものは自然と覚えているもので、ご奉仕するように怜央のペニスを握って舌先で舐めた。そうしているだけで涙が自然と溢れる。  泣いたら万羽は頬を叩き「泣くな!うるせぇ」と言って蹴飛ばした。だから静かに涙を流していたんだ。

ともだちにシェアしよう!