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*スイートな夜 9
篠森さんにはΩのパートナーがいる事を知らされて少しモヤモヤがマシになったけれど、完璧には治まっていない。
「郁美。そんな可愛い顔したどうしたの?」
「え?どんな顔ですか」
「頬を膨らませてリスみたいだよ」
頬をツンツンと触られて初めて自分が頬を膨らませていたことに気がついた。
篠森さんは怜央の同期で部下でもあり、プライベートでは親友ってだけなのに、僕は彼に嫉妬していたんだ。
「僕、篠森さん…嫌いです」
「どうして?」
「怜央が嬉しそうに話すから!僕にも見せたことない顔してた……」
視線を逸らしてベッドの掛け布団の中に潜り込んだ。こんなことするつもりなかったのに、勝手に体が動いていた。
嫉妬を露わにするなんてみっともないのに、どうしても抑えられない。
掛け布団の上からきゅっと抱きしめられた。そして次の瞬間、遠慮なく掛け布団を捲られて、怜央が中に入ってきた。
「郁美。もしかしてヤキモチ妬いてる?」
「だ、だって……僕の知らない怜央をたくさん知ってるんでしょう。大学時代なんて僕と何の関わりもなかったし」
「確かに僕たちはまだ知らないことがたくさんあるかもね。でも郁美を抱くエッチで余裕のない僕を知ってるのはたった1人だけだよ」
片手で抱きしめられて耳元で「郁美だけだよ」と囁かれれば、嫉妬心なんて簡単になくなってしまった。
篠森さんの方がたくさん知っているだろうけど、どうやって抱きしめるのか、キスやセックスをするのかは知らない。
誰も知らない怜央を見せてくれるのは僕だけという事実が、少しだけ自信を与えてくれた。
「僕も怜央にだけエッチになります。あんな風に淫らにおねだりするのもあなただけ……」
先程まで繰り広げていた甘いセックスを思い出した。自らお尻を広げて大事な秘部を見せつけ、欲しいと強請った。こんなこと人生で一度たりともない。
「あの可愛いおねだりは脳裏にばっちりと焼き付いているよ。プリプリのお尻の奥に控える美しい蕾がヒクヒクって動いて、僕を誘っていた」
「言葉にしないでください。思い出しただけでも恥ずかしくて死にそうです」
「あんな可愛いことを他の人にもしてるって言われたら、ショックのあまり僕が死んでしまいそうだよ」
お互いクスクスと笑いあった。こんな風に情事の後でベッドで語らうのも初めてだった。楽しくて永遠にこの時間が続いてほしい。
愛のない同意なしのレイプは経験があっても、愛されて満たされるセックスは怜央が初めてだけど、彼はどうだろうか。ふとそんな疑問が湧いてきた。
「あの……怜央は僕が初めてじゃないんですよね。他の人とセックスしたことありますよね」
怜央を困らせるような質問をした自覚はあったし、それを聞いたからって何かが変わるわけじゃない。
それでも聞かずにはいられなかった。彼のことは過去もこれからも全て知っておきたいから。
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