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第3話
涼は大学に通う様になって、俺と距離を取り始めた。
ダサい黒ぶちの眼鏡をかけだしたのもこの頃だ。
「いつまでも弟に守ってもらうなんて兄として情けない」
そういって大学一年の終わりには家を出て学生寮に行ってしまった。
その時の俺がどれだけショックだったか……。
涼は俺の気持ちに気づいていたのかもしれない。だけど、もう遅いんだ。
そこから俺はどうすれば涼を手元に置けるかそれだけを考えるようになった。
勉強だけでなくあらゆることを想定内にし、外堀を埋めるつもりで次の年には涼と同じ大学に入った。周りからの俺の評価は甘いマスクで人柄の良い学生らしかった。それをうまく利用してさりげなく涼の周りを囲むのは容易かった。
涼はそんな俺を見て眉を下げて苦笑した。そのまなざしは変わらず優しいままだ。
しかも「俺の弟をよろしく」と頭を下げて回ってくれたんだ。
「……ごめんよ。追っかけてきちゃった」
「しょうがない奴だな。でもそれだけじゃないんだろ? ちゃんと習いたい学科があるんだろ? 博信は昔からこれと決めたら突き進むところがあるからな」
優しく俺の頭を撫でるその手が暖かくって思わず抱きついた。
「ふふふ。くすぐったいよ。お前はいつまでたっても甘えん坊だね」
「会いたかったんだ。兄さんに会えなくてどれだけ辛かったか……」
「大げさだな。俺はどこにも行かないのに」
その日は俺が眠るまで優しく俺の背中を撫で続けてくれた。
その後の二年間は同じ学生寮で生活し、わからないことがあると言っては涼の部屋に転がり込んだ。寮生たちは皆気心が知れていて仲のいい兄弟だと思われていたらしい。本当は隙あらば自分のモノにしてしまおうと狙っていた。
寝ている涼の耳元に愛を囁き、酒を飲ませ酔った勢いでキスを繰り返した。試験前に溜まるといけないからと抜きあいっこもさせた。照れながらも応じる姿にやたらと興奮した。なんだかんだ理由をつけては俺はそういう行為に及んでいたのだ。
だが、どんどんと俺の中でそれだけではすでに満足が出来なくなっていた。
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