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43.航の受難③
バスローブを開き、満が直接肌に触れてくる。
その手は冷たく、まるで蛇が這っているようだと航は思った。
ふと顔を横に向けると、サイドテーブルにスマートフォンが立ててあることに気がつく。
その右上に赤いランプが光っている。
満は好き勝手に航の口内を蹂躙した後、次の狙いを胸に定める。乳首を親指の腹でグリグリとこね回した後、ぺろりと舐めた。
航の下腹がぎゅっと凹む。
「やめ…」
女のようにそこを舐められるのは嫌だ。
そう思っているのに、じわじわと快感がそこから広がっていく。
すると突然満はそこにカリッと歯を立てた。
更にもう一方をつまみ上げる。
少し大きくなった乳首をぴんと張って伸ばされている様を見てしまった航は、羞恥心で顔を真っ赤にして顔を背けた。
その刺激を何度も続けられているうちに、変な声まで漏れそうになったので慌てて口を手で覆う。
満はにんまりと笑いながら、サイドテーブルのスマートフォンを取り、その様子を正面から撮影し始めた。
「撮るなよ」
航はやっとそう言い、満を睨む。
「可愛いから駄目です」
「撮るの、やめろ」
「ダーメ」
どうにかしたいと思っても、両手が拘束されてふので何も出来ない。
「こんなの撮って、どうするんだよ。
もしかして俺を脅迫するつもりか?」
「……脅迫?」
その言葉に、ふと満の手が止まる。
「うーん、そういう意図は無いのですが。
まあ、そういう事にしておきましょうか。その方が貴方も精神的に楽でしょうから」
「え?」
「はい、私は貴方を脅迫します。
私に逆らうのならば、これまでの動画を全て無修正で然るべきサイトにアップロードします。
貴方の人生、終わりますね」
満はそう言うと、航の顔にカメラを向けながら爽やかに微笑んだ。
航は精一杯睨みを効かせて返す。
「そんなことをしたら、お前だってタダでは済まないぞ」
「別に構いませんよ。
私は貴方とは違い、失うものは何もありませんから」
そして満は笑顔のまま航の鼻先まで迫り、ご機嫌な様子で続けた。
「これで若さまは、私の言いなり。
つまり、奴隷さんということですね」
航は青ざめた顔をして満を見つめる。
駄目だ。
この男には何を言っても伝わらないし、敵わない。
そんな絶望感に苛まれて何も言えない。
満のその笑顔が何よりも恐ろしい。
「そんな顔しないで下さい。
言った通り、貴方の体だけ下されば充分ですよ、今はね」
「……今は」
「はい、今は。
うーん、早速ですが、何をしてもらいましょうか…」
満は楽しげにそう答えた後、ベッドから手枷に繋がっていた鎖を解いた。
そして、己の唇に人差し指でツンツン触れながら言う。
「キスして下さい」
「は?」
「貴方から、キスをして欲しいです」
「なっ」
航が黙り込んだ合間に、満はスマートフォンをヘッドボードに備え付けてあった固定具に立てて置く。そしてわざわざそれにうまく映るように航の横に回った。
「立場わかってます?
貴方には拒否権、ないんですよ」
「……ッ」
航はカッと目を見開き、そしてもう一度満を見た。そして何も言わずに拳を握り、意を決したようにその方に手を伸ばし体を向ける。
丁度肩のところにその手が触れるタイミングで、満の唇に自分のそれを押し当てた。
触れるだけの幼稚なキスだ。
「それだけ?」
離れ際に満が不満げに言うと、航は再び満に唇を重ねた。そのまま舌で、おずおずと満の唇の破れ目を舐めた。
「それ、マジでやってますか?
下手くそ過ぎません?」
満はため息をつきながら見下すように言う。
「よくそんなキスで舞子さんを満足させられますね」
「……」
航は顔を赤くしたまま、バツが悪そうに横を向く。そしてその様子で満は察してしまった。
「まさか、彼女とまだキスすらしてないんですか?」
「う、うるせえ。だから舞子は」
「嘘でしょ。
デートは手を繋いでお喋りをしておしまい?
中学生じゃあるまいし、本気ですか?」
「うるせえ、悪いか。お前には関係ないだろ」
「ふうん」
満は目を細めて航を見つめている。
まるで馬鹿にされているようで腹がたったが、実際そうなので何も言えない。
「ということは、ファーストキスも私ということですね。流石に処女だろうなとは思ってましたけど、そうですか、童貞でもありましたか。ふうん」
「……バ、バカにしてんのか」
「いやいや、まさか。
貴方、思っていたよりずっとおぼこで可愛いらしい人なのですね。ご母堂が"ああ"なので、正直意外でした」
「母は関係ないだろ」
「彼女はどこの骨とも知らぬ身持ちが軽い女だと聞いていましたが、だからかな? 息子への教育は慎重だったんですね。それとも、反面教師?」
「お前、いい加減にしろよ」
食いかかってきた航に、満は冷たく返す。
「だから、貴方自分の立場分かってますか?」
「!」
「まあ、いいや。
そうか、私が初めてかあ……嬉しいですね」
満はそう言うと、航にもう一度キスをするように顎をしゃくり促す。
航は眉を寄せたが、それに従うしか無い。
もう一度満にキスをすると、その唇を割る。
さっきされたことを思い出しながら、満の舌に自分はそれを重ねた。
笑いたくなるほど下手くそだが、本人は真面目に何とか上手くやろうとしているのが伝わってくる。満はそれが楽しくてたまらない。
拙いキスを受け止めながら、満は航の腹をさわさわと撫でる。
一瞬唇を離した航に続けるよう囁いて、更に下の方へと指を這わせた。
太腿に触れると、そのぴくんと舌先が震えて止まる。それでも言いつけを守ろうと、航はすぐにキスを継続する。
しかし、とうとう指がアナルの縁に触れると、満の目を不安げに見つめながら首を横に振った。
満はそんな航の訴えを当たり前に無視をして縁をくるりと人差し指で撫でた後、指の先を孔に押し当てる。
昨日沢山弄んだそこはきゅっと締まり、満の指を歓迎して誘うように収斂した。
その反応は体の持ち主も意外だったようで、航はキスを中断して思わずそこを見やる。
満は何も言わず、そこにローションを垂らすと、わざとくちゅくちゅと音を立てて浅い所で指を挿出させた。
その度に航の内壁は蠢き、満の指を取り込もうとするのだ。
「まるで女の子ですね。若さまじゃなくて、お嬢さまとお呼びしましょうか」
「……っ、やめろ」
「何ですか?聞こえません。
まさか私に命令してますか?」
「……!」
航は悔しそうに下唇を噛んで満を睨む。
その目の両端に涙が溜まってきた。
思ったより泣き虫なのだなと満は思う。
「もっと足を開いて。
解さないと痛い思いをするのは貴方ですよ」
「ま、またするの、か?」
「何をですか?」
「……あ、だ、だから……」
「ちゃんと言わないとわからないですよ」
「……セ、セックス」
「ええ、しますよ」
満はあっさりそう言うと、顔を真っ赤にしている航の眼前で、アナルに挿入する指を一本増やす。
「うまく綺麗に出来てますね。
そこそこ解れてるし、いいかなあ…」
航のそこは更にはしたない水音を立てながら満の指を美味しそうにどんどん飲み込んでいく。
第二関節のあたりまで挿入すると、満はその指をくぱっと開いた。ピンク色の外壁がぴくぴく震えているのが見える。
そこに直接ローションを注ぐと、航はひゅんと肩を竦めた。少し冷たかったようだ。
満はそのまま指を引き抜く。
すると孔からとろとろとローションが溢れ出た。
その様子がとても淫猥だったので、満はスマートフォンでしっかり録画をする。
「ちょっと持ってて下さい」
「は?」
そしてそれを航に渡し、
「ちゃんとここが映るようにね。
撮れてなかったら、お仕置きですよ」
まさか自ら撮影させられるとは思っていなかった航は動揺したが、断ることは勿論出来ない。
言われるがままにスマートフォンを掲げながら、満のペニスが自分の孔に押し当てられる様子を見守るしか無い。
一方で、満は慣れた様子で航の足を更に開かせると、そのままゆっくり腰を進める。
航本人も驚くほどスムーズにペニスが挿入されていく。腹に少しの圧迫感を感じるが、痛みはない。それ以上に、胎内からくる満の熱を心地よく感じ始めた事に戸惑いを隠せない。
半分ほど満が収まったところで、航は急に震え始めた。どうかしたのかと見下ろすと、彼はすがるような目で満を見上げ、
「頼むから、奥はやめて欲しい。
痛いから、怖いんだ、お願いだよ」
と、弱々しく訴えた。
航のプライドを捨てたその懇願が、満の気持ちを満たす。彼が一つ自分に対し屈した証拠だ。
「わかりました」
満はにっこり笑みながら穏やかに返した。
「素直な貴方に免じて、今日は気持ちいいことだけにしましょうね」
航は一瞬安堵の表情を見せるが、結局は女のように抱かれることに変わりはないことに気がつく。
だからすぐに表情を強張らせ、まるで女の性器ように男を咥え込んでいる自身の後孔から目を逸らした。
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