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第6話

ソリテの寝顔を眺めながら哀斗は昔面白半分で調べたスピリチュアルの内容をふと思い返していた。 出会う人間は前世でなにかしら関係のあった人だというもの。今世で兄弟の人は前世はその人と恋人関係だったりとかそんな嘘か誠か分からない話。 「……人間はどうして運命とかって信じたがるんやろな」 ぽつりと放った自身の独り言に俺は笑う。 バケモノである自分も彼と運命やと信じてる。バケモノよりも脆く終わり()があるか弱い生き物。 だから尚更運命という不確かなものを信じるのだろう。それこそバケモノよりも。 バケモノでもそんな曖昧なものを信じてみたい。それこそ存在があやふやな神に縋るかのように。終わりがないからこそ心の均衡を保つために信じさせてほしい。 目の前の愛おしい人の頬に触れる。ソリテは眠っているからこんな問い掛けをしたって答えはないんやけど、でも、独り言やし。 ……いや、起きてる時は特に言いづらいな。どんな顔するか想像にたやすいし。 嫌そうな顔をする彼の顔がすぐに浮かび哀斗は笑みを浮かべながら小さく問い掛けてみる。 「なぁ、ソリテ。もし、俺とお前が前世でも恋人やったら、」 カーテンの隙間から差し込む陽の光にソリテは目を覚ました。 久々に十分な休息を得れたと満足するよりも昨夜の出来事を思い出し飛び起きようとするも鈍い腰の痛みに逆戻りする羽目になった。 「……き、のう」 風邪をひいたときみたいにやけにガラガラなオレの声。鈍く痛む腰があの出来事は現実だと嫌でも知らしめてきた。 途中からなにも憶えてない。いつ寝室に戻ったのかとか全部。 思い返すのは早々に諦め今度はゆっくりと身体を起こした。壁に掛けられた時計を見れば針は8時を過ぎていた。 「……会社」 遅刻だ、と思いかけたが解雇されたのを思い出す。それと同時に住処も失った。 これからどうすればいいのか。……悩んでもある意味仕方ないかもしれない。 どの道昨日の様子を見ると啓影はオレを手放す気がないみたいだし。にしても。 「……こんな取り柄のない男をどうする気なんだよ」 小さく呟いてオレは今度はゆっくりと起き上がった。考えても仕方ない。今はなるようになるしかない。 いつか啓影がオレに飽きて捨てるまでは、ここにいれれるだろうし。 リビングに入ると啓影の姿はなく代わりにメモが置いてあった。 『冷蔵庫に朝飯あるから温めて食べてて』 メモを読み終え冷蔵庫を開ければラップにかかったオムライス。……だよな? 温めてる間に水を飲み朝食をすませ皿を洗う。あいつが何時に起きてくるかは分からないがすることが特に思い付かず手持ち無沙汰になる。 休みという休みもなく思えばのんびり休んだのは高校生までだったような気がするとソリテは思いながら部屋を見渡す。 掃除を必要とするほど汚れてもいない室内。おそらく外に出ればまた昨日の二の舞になるだろうと薄々感じていた。 「……テレビでも観るか」 電波が届いているか不安になりつつもテレビをつければニュース番組が映る。適当な局のニュースを観てると勤めていた会社の不祥事を取り上げているのを知った。 労基すら誤魔化していた会社はとある株主のリークにより内情が世間に知れ渡っていた。 「……啓影、か?」 思い当たる人物は1人しかいない。でも、どうして。 「なおこの社長は現在――」 ピッと音を立てテレビは消えた。哀斗は後ろからソリテを抱き締め「おはよぉ、ソリテ」 「……啓影」 「なぁに、つまらんニュース観とるん?」 「……、別に」 「そ? ほら。おはようのキス」 ぐいっと啓影の方に顔を向けさせられキスされる。うげ、と顔を顰め拭う間もなく再度キスされたかと思えば勝手したるように口の中に舌が入ってきた。 追い返そうとすれば長くなる。今までの経験を踏まえてただ終わるのを待つしかない。 耐えるように目を瞑れば啓影が笑った気がした。 「んは。可愛いなぁ、ほんま」 男にそんなこと言われても嬉しくもなんともない。キスが終わったなら退け、と思えば首筋に柔く噛み付かれる。 「な、にをする気だ」 「なにってご飯貰うだけー。……いただきます」 がぶっと咬まれ溢れた血を啓影が吸う音が聞こえる。 こいつの正体は、吸血鬼……なのだろうか。いや、まさか。そんな御伽噺の存在なんてありえない。 「ん……ッ」 最期に舐められ離れる口に気色悪さを感じながらも安堵する。それがどうしてなのかソリテには分からない。いや、分かりたくないのかもしれない。 終わっただろ、とばかりに離れようとするも啓影の腕はソリテの身体を離しまいとキツく絡む。 そうなればソリテがどうあがいても緩むことはなく仕方なくその身を委ねるほかなかった。

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