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第9話 ☆
1階には啓影の部屋、そしていつも連れ込まれる部屋があった。
他の部屋より広いその部屋は夫婦の寝室として使われていたと話す啓影の脛をソリテは改めて蹴り上げた。
彼の自室は自分の部屋と違うのかと気にはなったが啓影自身が拒否したため入ることはしなかった。
なんか変なものでも隠しているのだろうかなんて変な想像をしながら後は知っての通りリビング兼キッチン、風呂場、トイレといった特に代わり映えのない1階の探索を終えソリテは2階に進んだ。
左へ進み大きな扉を開ければ目の前に巨大な図書館が現れた。
本棚に近付くも母国語とも日本語とも違う文字の本に不思議そうにしながら手に取った。開いてみるも知らない言語のため当然読めるわけもなかった。
「これ、何語だ?」
「ああ、それはドイツ語やね」
「お前は読めるのか?」
「ふは。じゃなきゃ置いてへんよ」
投げかけられた疑問につい吹き出すように笑いながら啓影は答える。少しでも自分の事を知ろうとしてくれる彼が愛おしいと感じる。
それはそうかと納得してソリテは何ページか捲ったあと本を戻した。
どれも多分ドイツ語であり読めそうな本はない。それでもこんなに多くの蔵書があることに心が踊った。
「ソリテは本好きなん?」
「まあ、一応」
誰よりも齧り付いて読んだという訳でもないが小学生になった頃日本語を学ぶというきっかけ作りに読み始めた。
自分の知らない世界、体験できない暮らしが本の中では繰り広げられていてそれを疑似体験できるということがすごく楽しかった。時折自分もこんな風に生きてみたらなんて空想してみたものだ。
そこから本にのめり込んだものの高校卒業してからは仕事で時間を取られ読むことすら出来なかった。
「……フランス語のはないのか?」
「ここにはないなぁ。フランス語分かるん?」
「母親がフランス人だったから」
「へぇ。……てことは、ハーフなんや」
新しいソリテの情報を脳裏に刻み込みながらちらりと啓影はソリテを見やる。確かに日本人かと問われればちょっと違うようなという顔立ち。
なるほど。ハーフやったんか。
また彼のことを知れて頬が自然と緩む。どんな本を用意しようか。ここにある本も読みたいやろうし辞書も置いておこうか。
それとも直接教えてもいいのだろうか。これから先のことを想像している啓影のことなんてつゆ知らずソリテは口を開く。
「オレさ、小学生になるまで日本語話せなかったんだよ」
「お父さんは日本人やったんやろ? なんで?」
「……母さんと父さんが離婚、してさ。そこから母さん日本語で話されると機嫌悪くなって。家ではフランス語でしか話さくなって」
話せていたものが突然話せなくなる。それは幼い子供にとっては怖かったであろう。
なんて勝手な想像を膨らませながら自分のことを初めて語るソリテの話に耳を傾けた。
「幼稚園とか行ってなかったし、母さんにずっと家にいろって言われてたから話し相手は母さんだけだったから別にフランス語でも問題なかったんだ」
母が仕事に行けば誰もいない家に1人でいるのは寂しかった。遊ぶものといえば画用紙だったりジグソーパズルだったり。
カーテンを締め切った部屋では外を見ることすら叶わなかった。
外に出たいなんて母に言えば叩かれ日本語を口にすれば暴力は酷くなった。そんな母がなんでまだ日本に居続けたのか未だに分からない。
「……母さんと離れて暮らすようになって日本語話せないと周りと会話できないのに気付いた」
そこからは必死だった。昔父とどんな会話してたのかなんてもう記憶の彼方だったし周りの言葉を聞こうにもなにも理解出来なかった。
英語もろくにできない上に周りにフランス語を話せる人間なんておらず一人で覚えるしかなかった。
「オレ、バカだからさ。覚えるのに結構かかったんだよ。中学入って人並みに読み書き出来るようになったんだ」
「でも、凄いやん。日本語とフランス語話せるんやろ? バイリンガルやん」
「別に、すごくねぇよ」
どこか照れくさそうにするソリテに啓影はもう一度すごいと言えば照れ隠しのように軽く小突かれた。
褒められ慣れてないところもまた可愛くて思わず啓影は彼に口付けていた。
「な……っ」
可愛ええなぁ。相変わらず慣れてへんその様子が。
愛おしくて愛おしくてたまらん。
鎮めた昂りが再び首をもたげ啓影はソリテを机の上に押し倒した。
「ちょ、おい……!」
「我慢できんわ」
緩く勃ち上がるソリテの逸物を啓影は口に含んだ。そのまま舌先で擽るように先端に触れちゅうっと吸い上げれば先走りが溢れる。
唇を噛み締め快楽に流されまいと耐えようとしているソリテが愛らしく声を聞きたいと思い一気に喉奥まで含み締め付けてやれば微かな甘い声が鼓膜を震わした。
竿を舐めやり時々甘噛みしてみればふるりと腰が揺れている。
イキたいんかなぁ。でも、フェラはこの辺にしとこ。
なんて焦らすだけ焦らした後彼の逸物を解放してやれば物足りなさそうな瞳が啓影を射抜いた。
「どーしたん? ソリテ」
言わな分からんよ? と緩く首を傾げ戯れるように立ち上がった乳首に指を這わす。
何度か彼が視線を彷徨わせた後「イキ、たい」なんて言う言葉を聞き逃さなかった。
でもあえて聞こえんかったフリしとこ。
意地悪なことを思いながら「聞こえんかった。なんて?」尋ね返せば羞恥に耳まで真っ赤に染めたソリテは唇を震わせながら「イキたいって、言ったんだ」と再度口にした。
可愛い。可愛ええなぁ。もっと虐めたい。でも、これ以上は拗ねそうやな。
緩む口角はそのままに意地悪もこの辺にしようと決め彼の口元に指をやる。
「舐めて」
どうせイかすなら入れてからにしたいと思い潤滑油がないので代わりに指を舐め濡らしてもらおうと決めた。
促すもソリテはその後の行為を想像しているからかどこか躊躇っている。
「ソリテ、舐めろ」
ぐっと無理矢理口内に押し込もうとしながらやや強い言葉で言えば観念したようにソリテは口を開き遠慮気味にその指に舌を這わした。
愛撫するようにその舌を指で撫でればやめろと言わんばかりに啓影を睨んでいる。
ああ、もう、ほんまこの子は男をその気にさせることしかしない。
そんな潤んだ瞳で睨んだって煽ってるとしか言えない。
ぐぷっと指を上下に律動させ咥内を胎内に見立て疑似セックスのようにすればソリテの頬がさらに赤く染まる。
いつまでも初々しいその様に理性のタガが外れそうだ。
「……もう、ええよ」
ずるりと咥内から指を引き抜き濡れそぼったそれを彼の引くつく後孔に宛がいゆっくりと指を潜らせた。
微かな声がソリテの口から零れるのを聞きながら指を奥まで入れ込ませ動かせば耐えるようにソリテは顔を腕で隠した。
「ソリテ」
「ぁ、はや、く、しろ……ッ」
「……はは。ほんまお前は……」
理性をなくさせたいのだろうか。そう思わざるを得ない。
性急に指を2本に増やし人差し指に当たる彼の前立腺を緩く突き上げる。まるで強請る様に胎内を締め付けるソリテに思わずつばを飲み込んだ。
何度身体を重ねたって飽きやしない。少しずつ自分好みの淫らな身体に変わりゆく様が嬉しかった。
性を知らなかった彼が自分によって性を知る。これ以上ないほどの優越感。
口角はもう上がったまま。
ただ指を性急に動かし早く中を解そうとしている。
「け、いえい……」
「ん、なに?」
「も、入れて、くれ」
一瞬なにを言われたのか理解できなかった。指を止めて思わず彼を凝視する。
強請るなんて初めてのことではないのだろうか。
今、と聞き返そうとした時我に返ったソリテが啓影の肩を力なく押した。
「わ、忘れてくれ……!」
今オレは、なんて言った? こいつを、求めた?
ソリテも自身が発した言葉に理解が追い付かず混乱していた。
「無理、忘れへん」
いくら大好きな彼の願い事だろうとそればかりは叶えれない。
後孔から手早く指を抜き取り雑にズボンの前を寛げた。彼の痴態に興奮しきった逸物はもういつでも彼の胎内を犯す準備は出来ていた。
啓影は自身の肩を押すソリテの手を取り指を絡め机に縫い付けながら後孔を押し当て一息に中に挿入した。
「っあ、ぁ……っ!」
「は……、やっぱちょっと、狭い、なぁ」
馴染ませるように腰を揺らせば異物を追い出そうと中が締まりそのたびに射精しそうになる。
空いた手でソリテを落ち着かせるように頬に触れ撫でれば無意識なのかその手にすり寄り心地よさそうに目を細める彼に啓影は息を止めた。
「……反則やろ、それは」
一体全体彼はどれだけ好きにさせれば気が済むのだろうか。
呟く啓影を不思議そうに見つめるソリテにもういいだろうとほんの少し我慢しようと思っていた理性のタガを外す。
一度胎内から抜けそうになるまでに腰を引かせそして打ち付ける。
そのまま激しく律動を始めればソリテは気持ちよさそうに喘ぐ。
「ひ、ぁっ!? ま、ぁ、あっ」
激しい律動に目を丸めながらも気持ちいいとばかりに顔を蕩けさせる。
先端で前立腺をえぐる様に突き上げ結腸口目掛け腰を何度も打ち付ける。
縋る様に絡まる指の力が強まる。
ぐちゅぐちゅと結合部から卑猥な水音が聞こえる。
「ソリテ、かわええ。好き、好きや」
「んぁ、あ……ッ! 啓影……っ」
名前を呼ばれるたびに背筋に快楽が走る。ただの固有名詞が彼によって意味を成す。
自分が存在しているのだと知らせてくれる。
「な、ソリテは……」
俺の事好き? 問い掛けそうになった言葉を飲み込み口付けて誤魔化す。
好きなんて言われないのは分かっていた。
咥内に舌を押し込ませ歯列をなぞり奥に縮こまっているソリテの舌に自身の舌を絡ませた。溢れる唾液は口から溢れ時々ソリテは飲み込んでいる。
無意識の行為だとしても今はそれだけで嬉しかった。彼が自分を認めていてくれるんだと思えるから。
「は、ぁ……あっ! い、きた、いっ。けいえっ」
「ん、イこな。一緒に」
舌足らずに懸命に呼んでくれるのが嬉しくて口付けの雨を顔中に降らす。愛おしい。好き。
様々な感情が胸に湧き上がる。
「い、く、い、ぁあ……っ!」
「く……っ」
ひときわ甲高く鳴いたソリテに合わせるようにキツく胎内は締め付けられ彼の腹を汚す白濁液。
数回腰を打ち付けた後、啓影も彼の中に残滓を吐き出した。
そのまま刷り込むように何度か腰を揺らしそして、そのまままた彼を求めた。
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