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第17話
いつしか眠っていたみたいだ。昨日は煽られた分昂った欲を鎮めるため貪るようにソリテを求めてしまった。
まだ彼は寝ているのだろうと思い隣を見て啓影は目の前が暗くなる。
求めていた姿はそこにはなく触れたシーツは冷たくベッドから出たのはだいぶ前だと知る。こんなに眠り込んでしまったのはいつぶりだろうか。
いや、それよりもソリテはどこへ?
「ソリテ……!」
ここから逃げ出した? やはりこんな俺のそばにいたくないから広い外の世界へ旅立ったのだろうか。
はやる気持ちを抑えながらベッドを飛び出し廊下を駆ける。どこだ。まだ家にいてくれ。
リビングのドアを開けキッチンで作業している彼の姿が見え駆け寄る。
「ソリテ……っ」
「え、なんだよ!? ちょ、苦し……!」
キツく彼を抱き締める。よかった、いた。
いきなり抱き締められ疑問と力強い抱擁に思わず顔を顰めるものの啓影の身体が震えているのに気付いた。
「……どうしたんだよ」
怖い夢でも見たのだろうか。なだめるように頭を撫でれば肩に顔を埋め啓影は口を開いた。
「どっか、行ったんかと思った」
そんなことを言う啓影に目を瞬かせソリテは優しく笑い彼を抱き締め返し頭を撫でる手を背に下ろせば背を撫でた。
「行くわけないだろ、お前を置いて」
「……ほんま?」
「ほんと」
肩から顔を上げソリテを見つめれば安心させるように笑うソリテに泣きそうになる。
それを隠すためにもう一度ソリテの肩に顔を埋めた。
ぽんぽんと背を叩く手が優しくて心地いい。ぐりぐりと肩に額を擦り付ければ「痛いいたい」と笑いながらソリテは言った。
「キッチンでなにしとったん?」
少し気持ちが落ち着けばキッチンでなにをしていたのか気になり尋ねる。
「コーヒー。お前いつも飲んでるだろ? これなら、うまくやれると思って」
彼が指差した場所にはいつも使っているマグカップがあった。わずかに湯気が立ったものが淹れてあり今更ながらにコーヒーの香りを感じる。
無茶させた身体では起きるのもしんどいだろうに。俺のために、コーヒーを淹れてくれたんや。
嬉しいと感じれば頬が自然と緩む。
「ふふ、ありがと、ソリテ」
「ん」
「愛しとるで」
「……、そうかよ」
相変わらず愛の言葉は返されなかったものの赤らんだ頬を見れば伝わっているのは一目瞭然だ。
今はその反応だけでいい。いつか言葉もくれればそれでいい。ただ、自分の愛を受け止めてくれているならそれで十分だ。
前までは考えれなかった彼への希望 。どこで彼の心境の変化があったのかなんて考えるのだけ案外野暮なのかもしれない。
「すき」
再び彼への想いを口にすれば照れ隠しの蹴りが脛に当たり啓影は幸せそうに笑った。
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