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第19話

「ソリテー、なんかいるもんあるー?」 いつも通り書斎で本を読んでいるソリテにそう声をかければ彼はうーんと少し悩んだ後「花の種……?」疑問符を付けながら言った。 花だなんてまさか彼の口から出るとは思わずちょっとだけ驚く。 「なんで花の種なん?」 でもそれを上回る好奇心にソリテに近付いた後彼を腕の中に閉じ込めてから尋ねればすっと視線がそれた。 最近になって分かったことがある。彼がこうやって視線を逸らすのは必ず自分が関連していることだということを。 そらすのも照れ隠しゆえの行動だと分かった。 「なあ、なんでー?」 揶揄いを半分込め頬をつつきながら問えば一瞬こちらを見たソリテにニコッと笑いかけてみる。 半分ダメ押しみたいなものではある。それでも答えないならベッドに引きずり込もうかなんて思ってるとおずおずと口を開き始めた。 「庭に、植えようと思って」 そう言う彼の意図が上手く分からず首を傾げれば徐々にソリテの頬が赤く染まりだす。 愛らしいなぁ。 なんて思いながら見てると視線に気付いたソリテに見るなと肩を押される。 「……、あのままじゃ、寂しいだろ」 「そんなもん?」 「そんなもん! でも、オレそういうの詳しくないからなんか、適当に頼む」 いずれ独りで遺されるであろう啓影を守る様にとかそんな深い意味はない。……ちょっとはあるかもしれないけど。いや、そもそもこいつは血を飲むだけで死なないわけでないのかもしれないけど。 だけど、あんな殺風景な庭は寂しいと思う。だから、少しでも彩りを添えて……。 「あだ。なんで蹴るん?」 「……自分で考えろ」 あれこれ考えた末恥ずかしくなり啓影の脛を蹴りあげる。訳を話せば絶対嬉しそうにするから断固として言わないと意思を固めもう一度脛を蹴った。 数日後。花よりもこっちがいいと啓影が渡してきたのは1本の木の苗だった。 「なんの木だ?」 「カエデ」 カエデ……カエデ……? とソリテが詳しくない樹木の種類を思い出そうと首を傾げる。紅葉……? 違うか? と何度も首を傾げ最後は知恵熱出そうと感じ思い出すのをやめた。 それにしても木か。彩りは多分あるんだろうけど、育つのに結構かかるな。でも、花よりは残るしいいのか? 「大事に育ててな。俺らの子やと思っ……あだっ」 変なことを言う啓影の脛を蹴り上げソリテは庭に向かう。屋敷の外を出れば木なんてたくさん生えているけど、手に抱えている木はここにしかないものだ。 庭の土がやけに整っているような気がするのは啓影がしたからなのだろうか。 変なとこでまじめだよな、あいつ。 なんて思いながら丁寧にカエデを庭に植えていく。木にも花言葉とかあるのだろうか。 戻ったら調べてみよう。それぐらいなら頭を使わないで済むだろうし。 後はどれぐらいで育つかとか。 カエデの花言葉『大切な思い出』『調和』『美しい変化』『遠慮』『節制』

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