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第21話
フライパンの上で悲惨な姿に変えてしまった卵をしばし見つめた後どうすっかなとこの後の事を考えながら天井を見上げた。
以前目玉焼きを作ろうとしたものはスクランブルエッグになってしまったので今度こそはアドバイス通りかき混ぜる事はしなかった。
ネットで調べた通り水を入れ蓋をしてそうしたら完成したはずなのに。
「……なんで爆発してんだよ」
油が多かったのか。いやそれ以前に水が少なかったのかはたまた火力が強かったのか。
有り得そうな可能性を考えてもどれも卵が爆発する要因となり得るものではなさそうだった。
料理の才能ねぇんだなぁ、オレ……。
啓影と出会い共に暮らすようになって分かったこと。それまでは1人だったし料理らしいものもしていなかったから知ることなんてなかった。
爆発四散した卵をかき集め皿に乗せてから使った調理器具を片す。いつも料理任せてるし少しでも負担減らしたかったんだけどな。
冷蔵庫に置いてある作り置きの料理をレンジで温め食べ始める。
今日は何時に啓影は起きてくるのだろうか。
「ん、ちょっといつもよりコーヒー苦い」
起きてきた啓影にコーヒーを淹れ渡すと1口飲んで言う彼に水の量間違えたかと今気付く。
「悪ぃ。分量間違えた」
「んーん。これはこれで美味いで」
いつもなら優しさに甘えるがちょっと今日はその優しさに甘えるのも申し訳なく感じる。
料理も出来ずコーヒーすら満足に淹れれない。出来ることといえば掃除ぐらい。
負担かけてばかりだ。たいして役に立ててない。
「つめた」
あれこれ考えてると額に啓影の手が当てられる。
なんだかいつもより冷たい啓影の体温が心地いい。
「熱あるやん、ソリテ!」
「……は?」
熱? 誰が?
目を丸めてるとあれよあれよと抱えられベッドに寝かされてはいつの間にかあった体温計で熱が計られる。
「37.8……。いつからや」
いつからだなんて問われても体調悪いという自覚はない。普段より少しだけネガティブ思考になってるかもしれないが。
熱が出る原因なんて……。
「昨日、雨の中庭の掃除をしてたからか……?」
「はぁ!? アホソリテ! 人間は脆いんやから悪化して死んでまうこともあるんやで?!」
「え、や……こんな熱で死ぬわけ、」
「ええから寝る!」
頭までずっぽりと布団を被せられるけどそこまでされると熱い。布団から顔を出せばまた額に手が触れた。
「……気持ちいい」
「後で冷えピタ貼ったるから寝てや」
「んや……これで、いい」
逃しまいと啓影の手にソリテは自身の手を重ね目を閉じた。
「な……ぁ、お前……ほんま……っ!」
無意識の行動に天井を仰ぎ相手は病人……相手は病人……と必死に自分に言い聞かせた。
そうしてる間にソリテは眠ったようで規則的な寝息が聞こえてきた。後で解熱剤とか買ってこんと。
「それにしても……鈍いんやね、ソリテ」
それともあえて体調不良に気付かないのか。無意識に我慢する癖でもついてしまっているんだろうか。
普通なら少しでもしんどかったら人間は平静を装えないであろうに。いつか自分を頼れるまでになってくれたら嬉しい。
無条件に甘えて欲しい。ソリテならいくらでも甘やかしてやりたい。
「俺とおる時は我慢なんかせんで」
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