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第23話

「ソリテ、雑炊作ったけど食えそ?」 あれから3時間経ち夕飯にと卵雑炊を作りソリテの部屋のドアをノックした後部屋に入り尋ねた。 「腹減ったし、多分」 いつから起きてたのかスマホから視線を外し頷く彼を起こし雑炊を盛った皿を渡す。 そういえばソリテ猫舌やったよな。 なんて今更ながらに少し冷まして持ってくれば良かったなんて思う。 冷ましながら1口雑炊を食べたソリテの目が輝く。 「……うま」 小さく呟いた声を聞き逃さなかった。いつも作った料理を美味そうに食べてくれているがこんな反応は初めて見た。 よほど気に入ってくれたのだろう。嬉しい。 あっという間に雑炊を完食したソリテにお代わりいる? と尋ねればすっと皿を差し出すのが可愛くて笑ってしまう。 皿を受け取り盛り付けまた持っていけばすぐに空になった。今はもうそれ以上入らないのかご馳走様と手を合わせていた。 「1度熱測ろか」 「もう、大丈夫だと思うんだけどな……」 なんて言いながらも体温計を渡せば受け取るのを見て素直じゃないなぁなんて思う。 その間に皿を置いて来ようと部屋を出て戻れば体温計をこちらに見せていた。 「37.4……うん。薬はいらなさそうやね」 「だから、言ったろ大丈夫だって」 「油断禁物やで? ほら、今日はもう寝て」 ベッドに寝かせれば思いの外眠気が訪れていたのだろう。ソリテはすぐに舟をこぎ始めた。 優しく頭を撫でやれば甘えるように手にすり寄った後穏やかな寝息が聞こえてきた。 明日にはいつもの姿が見れるとええな……。 起こさないようにそばから離れ部屋の明かりを消し彼の部屋を後にすれば皿を洗おうと思いリビングへ向かった。 仕事明けの啓影がリビングでコーヒーを飲んでいれば一晩寝て回復したソリテが起きてきた。 時計を見やれば時間は9時を過ぎている。どうりで外が明るい気がするわけだ。 「熱下がったみたいでよかったわ」 啓影が淹れたはちみつティーを飲みながらまるで我が身のように安心している彼を横目にソリテは頷いた。 手厚い看病のおかげかそれとも思ったより酷い風邪ではないのが幸いしたのか。後者のような気はするけどあえて言わないでおこう。 「でも、まだ無茶はせんようにな?」 「……分かってる」 くぎを刺す啓影が一番無茶をさせそうな気もする。という考えに至った自分に驚く。いや、なんだ。無茶って。 前したこと、を? い、やいや。しないだろ! 「どしたん、ソリテ。また顔赤くさせて……はっ! 熱出た?!」 ばっと額に手を当て熱があるのか確認している啓影の手を振り払いソリテは勢いよく立ち上がり距離を取り叫ぶように言う。 「大丈夫だから!」 似てきたのかもしれない啓影に。こんな、こんなことを思うとか! 望んでなんかない。あんな、こと。本当に! マグカップを少し乱雑に机に置いてリビングを飛び出した。 心のどこかで期待していた自分が恥ずかしい! リビングを飛び出したソリテを唖然とした面持ちで見送った後腕を組んで首を傾げた。 左右に何度か傾げた後どうしてあんな態度だったのかを考えても分からなかった。 「……期待してた?」 一つの可能性が浮上し口にしてみる。性に淡泊なソリテがセックスを? だとしたら自分はとんでもない据え膳を逃してしまったではないか。ソリテが逃げる所なんて1つしかない。 啓影は急いでソリテのあとを追い掛け形的に彼の部屋をノックした後返事を待たずに入れば丸まったソリテがいた。 「ソリテみっけ」 「入っていいって言ってないだろ!」 布団にくるまったまま起き上がり軽く睨み付けるソリテにまあまあとなだめながら両頬を挟む。 すると視線はすぐに外れてしまった。残念。 「ソリテ。こっち見てや」 「……やだ」 じぃっと見つめながら頬をもちもちと触りもう一度見てと言うも視線がこっちを向くことはない。 「ソリテ」 名前だけ呼んで顔を近付けるとぎゅっと目を閉じる彼が可愛らしくて笑みが零れた。 もちろん期待した行動なんて取らずに頬を軽く摘むだけ。 「……なんで」 「して欲しかったん? キス」 「は!? んなわけ!」 問えば熟れた林檎よりも真っ赤になった顔で否定するソリテ。ああ、ほんまかぁいなぁ。 むにむにと頬を揉み真っ直ぐに見つめ言う。 「言ってや。キスしてほしいって」 「な……誰がそんな事……」 言うつもりなんてない。そんなの。して欲しいとか思ってない。……思ってない、のに。啓影がそんな言葉を欲しそうに見つめるから言ってやろうかなんていう気になる。 何度か口を開けては閉じてを繰り返しながら小さな声でソリテは強請る。 「キス、しろよ」 「……ふふ。ソリテの仰せの通りに」 ちゅ、と軽い口付け。ママゴトのようにただ触れさすだけの口付け。 でも、それだけじゃ足りなかった。 「……もっかい」 強請り唇を寄せるソリテに従うように啓影はもう一度口付けそれを何度か繰り返した。 ソリテの唇をなぞり次はどうしようかななんて考えようとした時ソリテの舌が伸び指に触れた。まるで(いざな)うように。 「お前……ほんま……」 「は? なに……ん、んん……!?」 乱暴に口を塞ぎ無理矢理口を割っては舌を潜り込ませ奥で縮こまるソリテの舌に絡めていく。 突然の出来事に目を白黒させながらも徐々に気持ち良さそうに目を細め始めた。 「ぷは……ぁ……っ」 「好きなヤツに煽られてそのまんまに出来る男なんておらんねん」 「ん、む……っ」 文句を言おうとしたソリテの口をまた塞いでは口内を犯す。そうしてる合間に控えめに舌に絡め返す彼の舌に気付けばこれまで煽られた分の欲が首をもたげ始めベッドにソリテを押し倒した。 「ぁ……は……、啓影、待って、」 「やだ。待たん。今日は寝かさんから」

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